Sさんからのメールと筆者からの返信
sさんからのメール
こうして凶悪犯罪者を被害者の事を何も考えずに擁護するのは実に気分のいいものでしょうね。
私も学者ならこんな発言をくりかえし「人権派」の旗頭になりたいものです。
被害者は首を切断され、口を耳までえぐられたのです。
私が被害者の家族ならどんな事情があっても断じて許しません。
この世は守るべき多くの事柄とそれを破った時の罰で社会の安定を保っているのです。
これを無視して加害者の人権ばかり擁護する一派にはウンザリしています。
先生のご家族が同じ様に首を切断され口まで裂かれた時に同じ事がいえるよう祈っております。
返信
s 様
メールありがとうございます。
At 9:53 PM 97.8.23, Swrote:
> こうして凶悪犯罪者を被害者の事を何も考えずに擁護するのは実に気分のいいものでしょうね。
たしかに、自分の信じていることを発言することは、気分のいいことです。でも、その意見を公にすれば、賛成意見と同時に、反対意見もいただきます。sさんのような意見は、決して少数意見ではありません。反対意見をいただくこと自体は、関心を持っていただいたわけですから、ありがたいことです。
しかし、それに再反論したり、気持ちを整えたりしなくてはなりませんから、単純にいい気分になってはいられません。
被害者のことを何も考えていないと誤解されてしまったとしたら、私の文章やホームページの構成が悪かったのだと、反省しています。
> 私も学者ならこんな発言をくりかえし「人権派」の旗頭になりたいものです。
私は、いわゆる人権派ではないと自分のことを考えていますし、ましてや旗頭などではありません。
> 被害者は首を切断され、口を耳までえぐられたのです。
> 私が被害者の家族ならどんな事情があっても断じて許しません。
ごもっともなことです。被害者の家族が、法廷に立ち、「極刑を望みます」と発言することがありますが、これも家族にしてみれば当然のことといえるでしょう。
また、社会全体で、被害を防ぐように努力することも当然です。>
> この世は守るべき多くの事柄とそれを破った時の罰で社会の安定を保っているのです。
私たちの国家は、法治国家ですから、おっしゃるとおりです。(もっとも、店先に商品を並べておいても、あっと言うまに盗まれてなくなってしまわないのは、日本の刑罰が厳しいせいではなくて、日本の教育や道徳観のせいだとは思いますが。)
> これを無視して加害者の人権ばかり擁護する一派にはウンザリしています。
>
今回の少年も、日本の「守るべき事柄」である法律に基づいて、裁かれようとしています。法に則り、正しい裁きが行われることを望んでいます。私は「守るべき事柄」である法律を無視するどころか、遵守してほしいと思っています。
(私の所には、少年法など無視して、「こんな少年は死刑にしろ!」といったメールも届いていますが。)被害者の人権を無視して、加害者の人権だけを擁護しようとする人もいるのでしょうか。そんな人は、私もウンザリです。(いわゆる人権派や環境擁護派のなかには、尊敬できる方々もいらっしゃると同時に、いろいろな意味でウンザリする人達もいるかとは思います。)
ところで、加害者側の人権について発言すると、「被害者の人権を無視している」というご意見をちょうだいします。しかし人権とは、本来、全ての人が生まれながらに持っているものでしょう。どちらの側の人権も無視されるべきものではありません。
ただ、法を犯したときには、その法の定めによって、一時的に身柄が拘束されるなど、人権の行使の一部が制限されることになるわけです。法を犯したときには、全ての人権が剥奪されて、何をされても文句が言えなくなるわけではありません。
そして、もっと刑罰を厳しくしようとか、被害者の人権保護を明確にしようとか、現在の法律を改正しようとするならば、それを論議すればいいわけです。
> 先生のご家族が同じ様に首を切断され口まで裂かれた時に同じ事がいえるよう祈っております。
どのような主旨のご発言か分かりかねますが、私は真面目な意味で、本当にそのように祈っています。
もし私の家族が、快楽殺人の被害にあったり、無謀運転の被害にあったり、破壊的カルト集団の被害にあったりしたら、私はたぶん、激しい悲しみと怒りを感じるでしょう。法律など無視して、「この俺自身がぶち殺してやりたい」と、思うかもしれません。
しかし、そんなことをしたり、そんなことを思い続けることは、誰にとっても、幸せなこととは思えません。
私は自分自身の発言を正しいことだと思うからこそ、公にしています。もしそれが正しいことならば、どのような事情であれ、正しい行動と思いを持ち続けることができるようにと、祈っています。
* * * *
標題の「気楽な学者」に答えて
警察官や教師が、最前線で戦う兵士だとすれば、学者は、自国内の研究所でヘルメットの研究などをしている研究者のようなものです。
たしかに、最前線の兵士と比べれば、気楽かもしれません。でも、いい加減な気持ちではありません。自分の作ったヘルメットのせいで、兵士が死亡したとすれば、研究者だって平気ではいられません。
また、時には、最前線に行ってデータを集める必要もあるでしょう。前線の事情や兵士達の気持ちを忘れてはいけません。
しかし、もし研究所を最前線に作ったら、良い研究はできず、結局、良いヘルメットはできないかもしれません。
どんな分野でも、現場の人達と、研究者の両者の協力が必要なのではないでしょうか。
「私は気楽か」
私は被害者とも加害者とも、直接の関係はありません。その意味では、「気楽」かもしれません。しかし、無関係だとは思っていません。心の問題について毎年何百人もの学生に話をしなくてはなりませんし、今回の問題には、私の予想を超えて、このような形で関わってしまっています。
少年犯罪とは、ごく間接的に関わってきました。精神障害とは、もっと身近な問題として関わってきました。
友人の中にも、精神障害者がいますし、仕事上でも、プライベートでも、精神障害者やそのご家族と関わってきました。彼らのほとんどは、真面目で善良で、安全な人物です。しかし、知人の中には、精神障害者の被害を受けた人もいます。殺されたわけではありませんが、本人にとっては、大きな傷を受けた人もいます。
私にとっては、精神に障害を持つ友人も大切な友人です。
そして被害を受けた友人も大切な友人です。その人から話を聞く度に、心が痛みます。同時に、名も知らぬ加害者も、今はそんなことをしないで、無事に社会生活を送っていることを願っています。私は「人権派」ではありませんが、素朴に、みんなにとって幸せな社会になるようにと、願っています。
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