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形骸を断ずる

文芸評論家の江藤淳さんの自殺から考える

(このページには加筆修正版があります。こちら:江藤淳さん自殺:形骸を断ずるこちら)

99.7.21、文芸評論家の江藤淳さんが、妻の死や病気を苦にして自殺しました。自宅に遺書を残していました。

「脳梗塞の発作に遭いし以来の江藤淳は、形骸に過ぎず、自ら処決して形骸を断ずる所以 なり」

 ああ、なんてカッコイイ遺書なんでしょ。「形骸を断ずる」なんて、名ゼリフですねえ。

 この言葉を見出しに使った新聞もありましたし、多くのマスコミが遺書の全文を紹介していました。

 でも、自殺には、名ゼリフも名所もいりません。そんなものを作ってはいけません。

 むかし、むかし、「人生は不可解なり」と言って華厳の滝から飛び降りた人がいまして、まねをする人が何人も出たそうです。

 以前、ある大きな団地で飛び降り自殺が相次ぎ、困ったことがありました。

 有名人の自殺や派手な自殺報道があると、連鎖自殺が増えてしまいます。ましてや、自殺の「名所」や「名ゼリフ」などができてしまうと、まねをする人が出ます。

 たしかに、死者にむち打つようなことはできませんし、報道する側としては、名ゼリフを見出しなどに使いたいと感じるのも無理の無いことです。(このページも結局そうしてますものね。)

 しかし、それがどんな危険性を持つ可能性があるのかは、忘れてはいけません。彼が、生前どんなに立派な人であっても、自殺を美化しかねない報道は、十分に気をつけなくてはならないでしょう。

 映画監督の伊丹十三さんが自殺したとき、キンゾーさんがインタビューに答えて、泣きながら次のように言っていました。

「監督には、本当にお世話になった。素晴らしい人だった。けれども、自殺という死に方は、カッコ悪いですよ。」

とても見識のある言葉だと思います。

 一見、美しく、潔く、カッコイイ自殺だって、自殺は自殺です。カッコ悪いです。一見、惨めで、未練たらしくて、カッコ悪く見えたとしても、最後までい生き抜くほうが、もちろんずっと素晴らしい人生だと思うのです。

(細かい話をすれば、尊厳死の問題など、複雑な問題はあるでしょう。でも、もともと自殺を美化しやすい日本の文化の中で、そしていま年間三万人もの人が自殺している現状で、やはり私は、自殺はカッコ悪いよと言いたいのです。)

ね、最期の最期まで生きようよ。

最後までじたばたしようよ。

(このページには加筆修正版があります。
こちら:江藤淳さん自殺:形骸を断ずるこちら)


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