「ありがとう」のメール
異常な犯罪が起きる。注目される。興味津々。大きく報道される。そして被害者は、さらに傷つく。
犯罪について書くことが、いつもそんな結果しか生まないのなら、私が今こうして書いているのも、もしかしたら罪を犯していることになるかもしれないと、実は少しおびえていました。
そこへ、一通の「ありがとう」のメールがきました。私のホームページで、今回の新潟女性監禁事件のことを読んだ女性からです。この方自身、犯罪被害者でした。
世間の人が、解放された女性に対して「なぜ逃げなかったんだ」と責めるようにいっているのを聞いて、「ああ、またか」と悲しく思っていたそうです。事情は各々違うものの、犯罪被害を受けた女性はしばしば責められます。
この本にも、ホームページにも書いたのですが、「なぜ逃げなかった」と女性を責めるようにいうことはまちがっています。被害者は保護されるべきで、責めなければならないのは犯人の方です。
当たり前のことのようですが、メールには、「そういってもらえると救われる思いがする」とありました。
ああ、そうか! この瞬間に実感しました。注目を集めてしまった事件は、もう当事者だけのものではない、もちろん直接の犯罪被害者の保護が第一ですが、多くの人々が報道を通して傷つくこともあれば、励まされることもあるんですね。
だとしたら、私にも書く意味があるでしょう。
事件の謎・犯罪は面白い?
それでもやっぱり、「なぜ逃げなかったのだろう?」と疑問には思いますよね。それだけではなくて、ニュースを聞いて不思議に思うことはたくさんあります。
恐ろしい犯罪について、わからないことが多いと不安になるので、説明がほしいと人間は感じます。説明してもらえると、安心するのです。
そして不謹慎な表現ですが、犯罪は私たちの興味をひきます。人は被害者に深く同情するのと同時に、犯罪を面白がってしまいます。
事件の当事者にとってはたまったものではありませんが、大きな事件事故があればたくさんのやじ馬が集まります。一部のマスコミは、さらに騒ぎを大きくするように事件をセンセーショナルに扱います。
残念ながらそれが人間です。中には、被害者をさらにわざと傷つけるひどいやじ馬もいるでしょう。それでも、そういう悪意のある人は少数派だと思います。私はもう少し人間を信じています。
たしかに、うっかりすると被害者のことを忘れ、事件のなぞ解きに熱中してしまうことはあるかもしれませんが、けれども大多数の人は、被害者に同情的ですし、犯罪が減ることを願っているでしょう。
事件を通して
事件は起きてしまいました。たくさんの報道もされてしまいました。それはもう変えることはできません。今私たちにできることは、事件を通して何かを学ぶことです。
事件を通して、もう一度自分自身や自分の家族のことをふり返ることができるかもしれません。事件を通して、社会のあり方を考えることができるかもしれません。
この本では、新潟女性監禁事件を中心に、京都小学生殺人事件、和歌山・新潟の毒物事件などを通して、人の心の闇と光について考えていきます。では、ご一緒に、こころの扉を開いて......。
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