こころの散歩道/犯罪心理学/小学校乱入/0630


包丁男小学校乱入殺傷事件
(大阪小学児童殺傷事件)の犯罪心理

最近の報道から

せめて状況を・救急隊も心の傷・課外活動・法改正


2001.6.29

せめて状況を

 6.8事件発生から3週間。事件直後は興奮状態だった世間の人々も、しだいに落ち着いてきました。しかし、犯罪被害者のご遺族にとっては、数週間の時間など、何の意味もないでしょう。
 事件のことが頭から離れず、事件の日の情景がまざまざと目も前によみがえり、事件の夢を見つづけているかもしれません。客観的には親の責任など何もないのに、それでも自分を責めているかたもいらっしゃるかもしれません。事件の記憶に関すること以外でも、生活全般に感情的になったり、仕事がうまくいかないこともあるかもしれません。

 これだけの大事件です。様々な影響が出てしまうのは当然です。ご遺族の中には、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状のある方もいらっしゃることでしょう。

 「こころのケアが大切です。」などと軽々しくいえないほどです。8人のお子さんが犠牲になりまりましたが、「8人の」などと一まとめに表現することすら痛みを感じる方もいらっしゃるかもしれません。一人一人が、かけがえのない大切な命でした。一つ一つの家族が、それぞれの悲しみを背負っています。

 とおりいっぺんの慰めや励ましの言葉など、意味はありません。時には、心の傷を深めます。悲しみをいやすためには、しっかりと悲しむ「喪の時間」も必要です。

 では、周囲の人間としては、どのようにしたら良いのか。そんなものに簡単な答えなどありません。心をいやす魔法の言葉などありません。ただ、ただ、ご遺族の言葉と感情をそのままに受け止めるだけです。

 さて、大変悲惨な事件です。このような事件、事故が起こると、よく周囲は遺族に事実を隠します。ご遺族のことを思っての善意からなのですが、時には逆効果です。ご遺族は、たとえ辛くても真実を知りたいのです。知りたいと思う方には、知らせたほうが良いのです。理不尽に犠牲になってしまった我が子。だからこそ、せめてなくなったときの状況だけでもと思うのです。

 家族を戦争で亡くし、遺骨すらなかったようなご家族は、せめて最後の状況だけでも知りたいと思い、同じ部隊の人から話を聞きたがったと言います。交通事故で家族を亡くされたような場合も、責任とか補償とかいった問題のためだけでなく、やはり真実を知りたいと感じられるようです。

 今回、早い段階で、ご遺族に捜査の状況をお知らせしたのは、ご家族にとっては望ましい配慮だった思います。

救急隊も心の傷

 報道によれば、消防署の救急隊のみなさんの中にも、深い心の傷を負い、動揺されている方もいらっしゃるようです。直接の被害者や家族だけではなく、事件直後に到着した救急隊や警察の方の中にも、PTSDの症状が出る人はいます。

 いくら仕事で慣れているとはいえ、普通は、これほどの惨状に直面することはありません。どんな職業の人でも、心は傷つきます。ケアが必要なことは言うまでもありません。ときには、マスコミ関係者の中にも、ショックを受けてしまう人もいます。だれもが、傷つくのです。

課外活動

 事件の舞台となった小学校に、ひさしぶりに子供達の元気な声が戻ってきました。授業再開はまだですが、ボランティアの人たちと楽しく遊んだようです。遠足も計画されています。

 多くの友達が犠牲になった悲しい出来事です。厳粛に受け止めなくてはなりません。けれども、学校はやっぱり楽しいところのはずです。こんな悲しい事件が起こってしまったからこそ、みんなで力を合わせ、もとの楽しい学校を取り戻しましょう。

 日本では、大きな事件事故があると、楽しいイベントなどがよく自粛されます。ところが諸外国では、むしろそういうときこそ、楽しいイベントを企画します。悲しい出来事はあったけど、みんなでもう一度元気を取り戻そうというのでしょう。災害の後などは、大きなイベントで募金をつのり、復興に役立てることもよくあるようです。なるほど、そういう考えもありますよね。

診断名

 容疑者の男性は、無罪になるために精神障害者を装おうとしたと供述しています。通院中だった病院の最新の診断は「妄想性人格障害」でした。これ以外にも、精神分裂病をはじめ、いくつかの診断名がでているようです。詳しいことはまだわかりません。

法改正、システムの改正

 今回の事件は、精神障害によって訳のわからなくなった状態である「心神喪失」による犯罪ではなかったようです(心神耗弱の可能性はあるでしょうが)。

 しかし、世間では、精神障害者による犯罪をどう防ぐかが論議されています。早急な法改正やシステムの改正を求める声もでています。わたしも、こんな悠長な発言をしている場合でないかもしれません。
 必要な改善点はあるでしょう。すぐにすべきこともあるでしょう。しかし、大事件後の興奮状態の中で、どれほど冷静な議論ができるのか、心配な面があります。

 ハンセン病患者のように、精神の病気を持つ人も、長い間人々からの偏見と差別に苦しんできました。精神障害に関する誤解もまだまだ多いように思えます。

 このような状況で、大きな法改正を論議するのは、正直に言って不安です。

 もちろん、新たな犠牲者の出現は防がなくてはなりません。しかし、尊い犠牲を無駄にしないためにも、落ちつた良い議論をしてゆきたいと思うのです。一人一人の幸せを守るためにも。子供達の未来のためにも。(掲示板や読者の広場もよろしければごらん下さい。)

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