心理学総合案内こころの散歩道/犯罪心理学/防犯スプレー犯罪、護身用スプレー犯罪


防犯スプレー(護身用スプレー)を
電車内でまく


2002.5.10

 2002.5.9、東京都で、電車内で別の男性と争いになった男子学生(22歳)が、防犯スプレー(護身用スプレー)を車内でまき、乗客26人が目の痛みなどを訴える被害が出た。この学生は乗客らに取り押さえられ、傷害容疑で現行犯逮捕された。

 被害はいずれも軽症。しかし、この事件は全国版の新聞、テレビニュースなどで実名報道された。使用されたスプレーは、マスタードガス系のものと思われる。

 最近、このような護身用防犯スプレーは、流行しており、インターネット上でも2000円ぐらいから購入できる。法的な規制はない。ただし、業界内の自主規制により、18歳未満には販売しないことになっている。

護身用? 不安? 中学生とナイフ

 容疑者の男性は、護身用としてスプレーをもっていたようです。しかし、普通に街中で暮らす男性に、このような護身用のグッズが必要でしょうか。たいていの人はそんなものは持っていないでしょう。しかし、流行っているのも事実です。

 かつて、中学生ナイフ事件が大きく報道されたとき、中学生達はみな護身用に持っていると話していました。

 周囲に乱暴な人間がいる場合などは理解できますが、そうでない場合も、「護身用」といいます。今回の学生もそうです。

 おそらく、「不安」があるのでしょう。現代人、特に、若い世代はコミュニケーションが苦手になっています。ささいなことで、トラブルに巻き込まれたりします。

 また、誰がいじめの対象になるかわからないといった人間関係を幼いころから経験しています。

 彼らは、人間関係にいつも不安を感じ、「護身」を考えているのかもしれません。

ナイフとスプレー

 護身を考えるとはいえ、やはり刃物を持ち歩くことは特別なことでしょう。不良でもなく、中学生でもない大人が、刃物を持ち歩くことは怖いし、抵抗もあるでしょう。

 それに比べて、スプレーは、ずっと安全なもののように思えます。護身用として持つのに、敷居が低いものでしょう。


余裕

 心に余裕がある場合、自分を守る、防衛するときも、適切な行動が取れるでしょう。でも、それはなかなかむずかしいものです。ナイフで自分を守ろうとしても、怖くて手に力が入らなかったり、あるいは、恐怖のあまり、ナイフを必要以上に振り回してしまうでしょう。

 教師をナイフで殺してしまった中学生も、殺意があった訳ではないようです。

 今回の学生も、もしももっとケンカになれているような人間であったなら、もっと上手に相手だけを負かすようにしたでしょう。

道具、武器

 アメリカの多くの家庭には、護身用の銃があります。ところが、家族が強盗の銃によって傷つくよりも、家庭以内の銃の事故によって傷つくことが多いそうです。

 銃の扱いになれている警察官やギャングならそんなことはないのでしょうが、不慣れな人が銃の整備中に暴発させてしまったり、その家の子どもが銃で遊んでいるうちに誤って撃ってしまうことがあります。

 今回の事件でも、多分加害者の男性は、電車のような密室でこんなスプレーを使えばどうなるかを知らなかったのでしょう。こんな大騒ぎになり、自分が逮捕されるの、想像もしなかったことでしょう。

(これは、業者側の説明不足による責任もあるのではないでしょうか)

共通点

 中学生のナイフ事件、アメリカの家庭内の銃の事故、そして今回のご信用スプレー事件。こう考えてみると、共通点があるように思えます。

 いずれも、自分が被害にあう不安を持っている。自分を守ろうと必死になり、不慣れな道具を使ったり、やみくもに道具を使おうとする。その結果、過剰防衛になったり、自分が加害者になってしまう。

 真に自分と自分の家族を守るためにはどうしたらよいのでしょうか。

☆ウェブマスター碓井真史の本☆

『誰でもいいから殺したかった :追い詰められた青少年の心理』 2008
愛される親になるための処方箋。自分を探し続ける青年たち

『人間関係がうまくいく 図解 嘘の正しい使い方 :ホンネとタテマエを自在に操る心理法則』 2008
上手な愛の伝え方、追い詰めない叱り方。 人間関係の心理

ふつうの 家庭から生まれる 犯罪者
あなたは子どもを体当たりで愛していますか。家族の心理
なぜ「少年」は犯罪に走ったのか
17歳の犯罪者たち 犯罪と非行の心理

犯罪心理学:心の闇と光へ戻る
一般的な犯罪の心理、殺人の心理などはこちら。



「こころの散歩道(心理学総合案内)」
トップページへ戻る
アクセス数3000万の心理学定番サイト

心理学入門社会心理学(対人心理学)心の癒し(いやし)・臨床心理学やる気の心理学マインドコントロール| ニュースの心理学的解説自殺と自殺予防の心理学犯罪心理学少年犯罪の心理学(非行の心理)宗教と科学(心理学) プロフィール講演心療内科リンク今日の心理学(エッセイ) | 掲示板||ホーム

碓井真史著『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』  碓井真史著『嘘の正しい使い方:ホンネとタテマエを自在に操る心理法則』    「ふつうの家庭から生まれる犯罪者」  

心理学総合案内こころの散歩道カウンター