心理学総合案内「こころの散歩道」

98.7.8 大学連携講座「心理学と現代社会」こころ学のススメ            見附市中央公民館

やる気の心理学

ガリ勉や働きバチではない本当のやる気を探そう

新潟青陵女子短期大学 福祉心理学科 碓井真史
心理学総合案内「こころの散歩道」
http://www2.n-seiryo.ac.jp/TEACHER/usui/index.html


賞罰のはたらき(強化理論)

・人間は、報酬(ごほうび、賞賛、微笑みなど)と罰によって動かされる。
良いことをすれば、報酬を与える。これが基本。

・全然勉強しない子どもが、10分間勉強した。その時には、10分しか勉強しないからといって罰を与えるのではなく、勉強を10分したことに報酬を与えることが必要。いつも夜中に帰宅する夫が30分だけ早く帰宅したら、それに報酬を与える。

・だれだって、すぐに全部うまくできるようにはならない。報酬を与える側は、今はできなくても、いつかはきっとできるはずだという信念が必要。

成功を求める気持ちと失敗を避けたい気持ち(達成動機)

・何かをやろうとするやる気があっても、失敗を恐れる気持ちが強いと行動できない。失敗しても怪我をしない、バカにされない、大丈夫だという環境が必要。

・健康的で高い達成動機がある時には、人は自分にちょうど良い目標を選ぶことができる。達成動機が低いときには、失敗を恐れて簡単すぎる目標を選んだり、失敗してもプライドが傷つかないような難しすぎる目標を選んでしまう。

・親の達成動機が高ければ、子どもの達成動機も高くなる。親の達成動機が低ければ、子どもの達成動機も低くなる。ただし、親の達成動機が歪んだ形で高すぎる場合には、子どもの達成動機は、かえってとても低くなってしまう。

・失敗の原因を能力不足だと考えたり、成功を偶然だと考えてしまうと、やる気が下がる。失敗は努力不足、成功は自分本来の能力のせいだと考えられることが大切。

・ただし、失敗の原因を努力不足だと口では言いながら、実際には努力をしない人もいる。心の底で、自分の能力への不安があるので、あえて努力を避けている。

やる気とやれる気(自己効力感)

・たとえば、受験勉強へのやる気を出すためには、「毎日2時間勉強すれば、きっと入学試験に合格できるだろう」と、信じることが必要。でも、この私が毎日2時間も勉強なんかできるわけがないと思えば、やる気は出ない。

・やればできる(行動すれば結果が得られる)という信念に加えて、自分はその行動をやれるという信念(自己効力感)が必要である。人は「私にもやれる」と信じれば、実際にやれるようになる。

やる気の階段、(マズローの欲求段階説)

1. 飲みたい、食べたい(生理的欲求)
2. 死んだり、ケガをしたくない(安全欲求)
3. 仲間がほしい、愛されたい(愛情・所属欲求)
4. ほめられたい(承認欲求)
5. 自分らしく生きたい、真善美を求める、人を助ける(自己実現欲求)

 同じように仕事や勉強をするにしても、そうしないと食べていけない、怒られる、愛されないと思って活動するのは苦しい。ボランティア活動や芸術活動も同じ。そうしないと、親にかわいがられない、友達ができない、自分が認められないと思っていれば、苦しい。
 自分がこの活動をしてもしなくても、家族や友人は自分のことを認めて愛してくれていると確信できているとき、自己実現を目指したすばらしい活動をすることができる。

本当のやる気:賞罰をこえて(内発的動機づけと外発的動機づけ)

・賞罰はたしかに人のやる気を左右する。しかし、賞罰が無くなれば、やる気も消える。また、賞罰のための活動は、賞罰によらない自発的行動よりも質が低い。

本当のやる気(内発的動機づけ)のもと。
・自分にもできる(自己有能感、コンピテンス:がんばれば環境が変わる)
・自分でやる(自己決定感:人にやらされるのではなく、自発的にやりたい)
・愛されている(他者との交流、他者からの受容感:受け入れられている)

報酬が自己有能感を高めるときには、内発的動機づけは上がる。しかし報酬によって操られ、自己決定感が下がると、報酬によってかえって内発的動機づけが下がることもある。

・親や先生や上司に受け入れられている、賞罰や強制でしばられていない、そして努力は報われる、そんな環境のなかで、本当のやる気は育つ。何事にも、自己決定できる自律的な人間が育つ。そして、自律的な人間は、他者(子どもや生徒や部下)の自立性を支援し、自律的な人間を育てることができる。

・お金のために働いたり、試験のために勉強したりすることは、外発滴動機づけだが、それ自体が悪いわけではない。人や物に操られるのではなく、自己決定しているならば、外発的動機づけから内発的動機づけへいつでも戻ることができる。

*人はみな本当のやる気を持ちたいと願っているけれど、どこかでつまずいてしまって、無気力になったり、ゆがんだやる気を持ってしまう。本来、やる気の無い人間はいない。


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