心理学総案内・こころの散歩道/犯罪心理学/少年犯罪/少年法改正
2000.11.28
「刑事罰対象年齢引き下げなどの少年法改正案は
11.28衆院本会議で可決、成立した。」
研究者や現場の人間の多くは、厳罰化方向での少年法改正には、反対していました。しかし、国民の多くが賛成する中、改正案は可決、成立しました。
先日、新潟県弁護士会主宰の会で講演を行ないました。その席で、弁護士会の人が、もっときちんと伝えるべきことを伝えなくてはいけなかったと語っていました。私も、教育、研究に関わるものとして、同じ思いです。
改正案に賛成とお考えの方々の多くは、少年犯罪が急増、凶悪化していると、思っていらしたようです。事実は違います。殺人も、強盗も、レイプも、ピーク時の昭和30〜40年代に比べると、激減しています。
日本は、諸外国と比べても、少年犯罪が飛び抜けて少ない国です。外国の研究者らが、成功例として日本の制度を研究対象にしているほどです。
このような基礎的な事実が、どれほど正確に伝わっていたでしょうか。もちろん、少年だからといって悪いことをしても良いわけではありません。被害者の方は、大変お気の毒なことだと存じます。犯罪少年は、その犯罪と年齢に応じて、責任をとてもらわなければなりません。
現在の少年法も、もとろんそのような「制裁」の側面も持っていたのですが。少年法は少年を甘やかしているといった誤解が広まってしまったように思います。
ほ乳類は、子供を子供扱いします。みんなで、守り育みます。もちろん、子供だからといって甘やかしたりはしません。悪いことをすれば叱ります。子供を訓練し、きたえます。
しかし、大人と同じ扱いはしません。大人なら群れから追い出されるようなルール違反でも、子供ならその場で叱られて終わりです。ほ乳類は、子供を大人と同じ扱いはせず、特別扱いをするのです。
人間の子が犯罪を犯すのは、もちろん問題行動です。しかし、だからといって追い出そうとする大人の行動もまた問題行動ではないでしょうか。
どんな法律でも、不十分な部分があれば改正は必要です。何歳から刑事罰を与えるのが妥当か、何歳からが大人なのかは、議論が必要でしょう。しかし、少年犯罪統計や、少年法の誤解に基づき、子供を甘やかすなといった大声の中で、改正が進められてしまったとしたら、大変残念です。
私自身、少年犯罪や少年法について特別学んできたわけではありません。この数年の間に、いろいろなことを考え、学んできました。今にして思えば、みなさんと一緒に考えてこられればよかったと思います。
目立つ少年犯罪が起こり、日本中で犯人当てゲームをし、難しい専門用語を専門家に解説させる暇があるのなら、もっと根本的なことをみなさんと一緒に考えたかったと思います。
わたしが学んだように、みんなで、「少年凶悪犯罪は減っているんだ」「少年法はただ少年を甘やかしているんじゃないんだ」「少年犯罪の発生率も、再犯率も、諸外国と比べてずっと低いんだ」と、学べればよかったのですが。
そのうえで、どんな少年法が必要なのか、少年犯罪を減少させ、被害者を救済するために何が必要なのか、一緒に考えたかったと思います。
少年法への関心は、今までになく高まりました。改正に賛成の方も反対の方も、犯罪防止、被害者救済という点では一致できることでしょう。本気でそう考えるならば、こらからでもみんなで一緒に考えていきたいと思います。
子どもたちのために。私たちの未来のために。