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なぜ「少年」は犯罪に走ったのか
まえがき

 2000年のゴールデンウイークと夏休み。いつもの年なら、子どもと家族の明るい話題がニュースに流れたことでしょう。しかし、この年マスコミをにぎわしたのは、連続した少年犯罪でした。

 「人を殺す体験がしたかった」と主婦を殺した17歳。「目立ちたかった」とバスを乗っ取った17歳。後輩を殴り、「母さんに迷惑をかけたくない」と母をバットで撲殺した17歳。そして、隣家6人皆殺しを図った15歳の少年。彼らはみな、非行歴のないフツーの子、良い子たちでした。

 犯罪は面白いものです。ドラマや小説で、私たちは犯罪を楽しみます。週刊誌やワイドショーでは、現実の凶悪犯罪が格好のネタになります。私たちが、それを喜んで見るからです。人間のそんな心を私は否定しません。

 でも、犯罪を興味本位でのぞき見たくなるのと同時に、被害者を思いやる心も、私たちは持っています。犯罪を憎む心も持っています。犯罪者への怒りと同時に、犯罪者の不幸な境遇を知るとき、犯罪者への哀れみの心も出てくるかもしれません。

 犯罪者が少年であれば、なおさらでしょう。同じ犯罪でも、犯人が少年であれば、とてもセンセーショナルに報道されます。犯罪への関心も、被害者やご遺族への思いも、加害者への感情も、増幅されていきます。そして、なぜ少年がこんな犯罪を犯したのか、疑問は大きくなるばかりです。

 「うちの子にかぎって」と考えていた親も、「うちの子ももしかしたら」と不安を高めています。厳しすぎたしつけが犯罪を招いたと言われることもあり、溺愛の末の犯罪と報道されることもあり、「良い子が危ない」と言われ、「優等生」の凶悪犯罪が大きく報道されます。悪い子にしないようにと一生懸命育ててきたのに、良い子も危ないと言われてしまったら、いったいどうしたら良いのでしょうか。

 今、国会では少年法改正へ向けた話題が出ています。戦後、もう何度目になるでしょうか。今回は実現するかもしれません。いずれは実現するのでしょうか。少年法厳罰化は、子どもたちと私たちを幸せにするのでしょうか。

 不幸な犯罪は起きてしまいました。少年は殺人者となり、被害者は無念の死を迎えました。ご遺族の心は簡単にいやされるはずもありません。事件は起こり、膨大な報道がなされました。

 今、私たちにできることは、犯罪を通して学ぶことだと思います。何が恐ろしい犯罪を引き起こしたのか、彼の心の闇なのか、歪んだ社会の病理なのか。ただ事件を話題にし、事件を消費していくのではなく、事件から学び取らなければなりません。犯罪防止のためにも。被害者の尊い犠牲を無駄にしないためにも。そして、子どもたちのために。私たちの未来のために。

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