やる気を高めるほめ方、報酬の与え方、ほめ方の心理学。
心理学総合案内「こころの散歩道」/やる気研究所/1報酬の効果
やる気を支える報酬の効果
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人間に何かをやらせたいと思うとき、まず思いつくのが、報酬と罰、つまり「アメとムチ」を使うことです。実は私の研究テーマは、報酬と罰によらない動機づけである「内発的動機づけ」についてなのですが、しばらくの間は、報酬と罰の効果について考えていくことにしましょう。
誰だって、何かして、その結果良いことがあれば、またしてみようと思います。
ある行動をとって、何か報酬が得られれば、その行動をとることが多くなるわけです。心理学的に言うと、報酬によって行動が「強化」されたと言います。心理学の理論や法則は、あやふやなものが多いのですが、これはかなりたしかなことですです。
そんなこと、心理学者に言われなくてもわかっているとおっしゃる方もいるでしょう。でも、みんなが報酬の効果を知って活用しているなら、私たちはみんなが善良でやる気いっぱいの人になるはずなのに、そうはなっていないのはなぜでしょう。
一生懸命何かに熱中したり、勉強したり、仕事をするのは、良いことです。でも、そうすればいつも報酬があるでしょうか。子どもが一生懸命ドロ遊びをしている、でも服を汚したらたいていは叱られます。一生懸命お手伝いをしてお皿を運んでいる。でもまだ上手にできなくて、こぼしてしまえば、叱られます。
一生懸命、勉強をする。それで成績が上がればよいのですが、それでも成績が少しも変わらなければ、たいていは何の報酬も与えられません。一生懸命仕事をすれば必ず報われる、とは限らないでしょう。
学校で、いつも30点、40点、の点数しかとれない子どもが、それでも勉強へのやる気を失わないでいることは、とても難しいでしょう。本当は、その子が勉強し続けられるような報酬があればよいのですが。
今まで全然勉強をしなかった子が、少しだけ勉強をしたら、本当はそれを認めてあげることが必要です。ところが、10分しか勉強しなかったと叱られたり、姿勢が悪いとか、鉛筆が丸まっているとか、文句を言われていまいます。ここれでは、誰だって、やる気がなくなるでしょう。
良い行動をとれば報酬を与えればよい、そうすればもっとその行動は増えるし、やる気も出ると、私たち知ってるはずです。。しかし残念ながら私たちの社会は、結果が出ない限りは、そういう仕組みにはなっていないようです。
何が報酬になるかは、その報酬を受け取る人によって、違います。
動物なら餌が報酬になるでしょう。人間も、食べ物やお金などの物が報酬になることもありますし、言葉でほめられたり、ほほえみかけられるのも報酬になるでしょう。
ある人にとっては、「1万円」は、大きな報酬でしょうが、ある人にとっては大した報酬ではありません。テストの度に良い点をとったら、おもちゃを買って上げるとしましょう。最初は、大きな報酬になるでしょうが、いつもおもちゃを買ってばかりいたら、そのうち買う物がなくなってしまうでしょう。ほしい物がなくなってしまい、もうおもちゃをもらっても、大してうれしくなくなってしまうのです。
それでも、おもちゃを魅力的な報酬にしようと思ったら、どんどんエスカレートして高価な珍しい物を買わなくてはならないでしょう。それでは、キリがありません。最初は魅力的だった報酬もだんだん魅力がなくなるという問題があります。
それに対して、活動自体の中に報酬があれば、このような問題はおこりません。勉強して新しいことがわかること自体が楽しい、ピアノを弾くこと自体が楽しい、これなら、外から報酬が与えられなくても、活動できるできるでしょう。
時には、叱られることさえ、報酬になります。普通に学校にきていれば、誰にも相手にされない、何の報酬も与えられない、そんな子でも、何か悪いことをすれば、周り中が騒いで、かまってくれます。人は、無視されるよりは、叱られてでもいいから、誰かに関心を持ってもらいたいと思うことがあるのです。非行も、暴力も、その子にとって、何かの報酬が得られる行動なのでしょう。
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