心理学 総合案内 こころの散歩道 (心理学講座)/心理学入門/人助け援助行動・伊達直人の送り物の心理(新潟青陵大学碓井真史)
「伊達直人の贈り物」:人助けの社会心理学 1
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なぜ、人は人を助けたり、助けなかったりするのか。「伊達直人行動(匿名で養護施設などに寄付をする)」がこんなに広がった理由は何か!(2011.1.12現在300件) 人間の心と行動の不思議を社会心理学的に考えます。Tweet
人間のように、社会を作り集団で生きる動物は、仲間を助けるようにできています。心理学の実験によれば、チンパンジーも、空腹の空腹のチンパンジーに自分のバナナを分け与えるといった行動をとることが分かっています。
私たちは、教育、道徳、宗教心などによって人助けをしますが、それ以前に本能的にも人助けをするものだと言えるでしょう。
脳研究によっても、ヒトやサルなどの霊長類の脳には、「ミラーニューロン」があり、他者の行動をまるで自分の行動のように感じる共感能力を司っていることが分かっています。普通の言葉でいえば、思いやりや愛ですね。
人は人助けをするはずなのに、実際には人助けが見られないことも多いのはなぜでしょうか。
多くの人は、良い行動(社会心理学的にいえば向社会的行動)や人助け(援助行動)をしたいと思っています。
でも、たとえば障害を持った人を見ても、簡単には手助けができません。募金活動を見て、実は募金してもよいと思っているときでも、通り過ぎることもあるでしょう。電車の中でも、気持ちはあるのに、なかなか席が譲れません。
それは、あなたの周囲に「人助け行動をしていない大勢の人」がいるからです。
大勢の人がいるとき、個人の責任感が小さくなります(責任の分散)。また、人は大勢の人と同じことをしようとします(同調行動)。大勢の人とは違う行動を取ろうとすると、心理的プレッシャーを感じます。みんなが人助けをしていない時、一人だけ人助けをするのは、勇気がいるでしょう。
そのような中で、私たちはしばしば、ただ見ているだけの「冷淡な傍観者 」になってしまいます。
それに、相手が本当に助けを必要としているのかが分かりませんし、どうすれば助けになるのかもわかりません。
人助け行動を実行するためには、いくつかのハードルを越えなくてはなりません。
- 1気づく
- 何かが起きていることに気がつかなくてはなりません。(たとえば都会では気づきにくことがあります)
- 2援助が必要だと判断する
- 誰かの助けを必要とする状況だと解釈する必要があります。
- 3自分が助けるべきだと考える
- 誰かほかの人ではなく、私自身に助ける責任があると考えないといけません。(人が多いの責任が分散されます)
- 4助ける方法を考えつく
- どのように助けるのか、具体的な方法を考え出さなくてはなりません。
- 5コストを計算する
- 手間、時間、お金、危険性、恥ずかしさなどが、大きすぎると考えると、行動できません。
- 6人助け行動の実行
- 1〜5までのハードルをクリアできて、初めて人助け行動が実行できます。
伊達直人行動(タイガーマスク運動)は、なぜこんなに広がったのでしょうか。
- プレゼントを喜んでいる様子が報道されたことで、援助が必要とされていると考えることができた。
- 地元の養護施設の子どもたちのことが気になっていた人たちに、援助できる方法を教える結果になった。
- 面倒がない。人助け行動の「コスト」は、お金だけではなく、手間、面倒さもある。今回の方法は、誰かに会う必要も、書類を書く必要もなかった。
- タイガーマスク伊達直人という、良い意味での「遊び」の感覚があった。
- 良いことをしている実感を感じることができた。「新入生へのランドセル」という選択は、絶妙。
- 報道。心温まる良い話として報道された。次々と報道されていく中で、いくつもの都道府県で行われている、みんなが次々と伊達直人になっている、今度は私の地元で、私が伊達直人になろうと思えた。
- 良い気分。社会心理学の研究によれば、人はストレスがたまった悪い気分のときには人助け行動を起こしにくく、良い気分の時には人助け行動をおこしやすいとわかっている。今回の報道は、人の心を温かくし、良い気分にさせてくれた。
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人を助けたい気持ちを、すなおに行動にあらわせると良いですね。
社会の中で人助けが起こりにくいのは、人の心が冷たくなったのではなく、人助け行動が起こりにくい状況が作り出されているからです。
今回のことは、人助け行動を起こすための良いヒントをくれたことでしょう。
これが、一時のブームに終わることなく、続くことができるようにと多くの人が言っていますが、そうすると、組織化とかシステムといったはなしになっていきます。大切なのは、伊達直人運動が持っている良い面を失わないで、どう継続性を保つかでしょう。
タイガーマスク(伊達直人)を、この運動の象徴、キャラクターにするのも、一つのアイデアかもしれません。
「あしながおじさん 」が、あしなが育英会のシンボルキャラクターになったように。
(漫画「タイガーマスク」も注文殺到だそうですから)
そしてさらに、本当は伊達直人と匿名で名のらなくても、みんながもっと普通にもっと自然に人助け行動がとれる社会になれればと思います。今でも、派手に報道されなくても、地道に人助けを続けている多くの人々がいるのです。
(物でも現金でも寄付するときには、しっかりと、○○施設への寄付、プレゼントだとメッセージを添えましょう。そうでないと、場合によっては遺失物扱いになってしまい、相手側に手間をかけることになってしまいますよ。)
困っているのに、だれも助けてくれないと嘆いているるひとがいます。でも、見ンがが冷たいと怒ったり泣いたりしているだけでは、問題は改善されません。このように伝えましょう。。
今、私は助けを必要としています。あなたの助けが必要です。このように助けてください(相手の負担になりすぎない具体的方法の提案)。
人間は、意外とあたたかいものです。
フロイトは、健康な人とは「愛することと働くことができる人」だと言っています。誰かを愛し、心配し、その人を助けるために何かをしようとしている人こそ、健やかな心をもった幸福なな人なのでしょう。私たちも、こんな健康で幸福な人になりたいものです。
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⇒「伊達直人の贈り物」2:現代社会とタイガーマスク:この運動を続けるために
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