2007.9.13
(当ページは「夕刊フジ」の記者さんから受けた電話取材への回答をもとに作成されました。)
(当ページはヤフーニューストピックス「安倍晋三内閣」で関連サイトとして紹介されています。)
安倍晋三首相。昭和29年(1954年)9月21日東京生まれ。第90代内閣総理大臣。
父は安倍晋太郎(元外務大臣)。祖父は岸信介(第56・57代内閣総理大臣)、佐藤栄作(第61〜63代内閣総理大臣)は大叔父にあたる。
2007年9月12日、所信表明発表後に突然の辞意表明。翌日(今日9.13)、入院。診断名は機能性胃腸障害。強いストレスで、全身的に非常に衰弱しているという。
医師は、「首相の職務を果たすのに支障はあるか」との質問に答え、
「普通の読み書き、思考力はあるが、ずっと緊張状態を続けることは少し難しいのではないかと、今日は判断した」
と述べている。
2007年に53歳になる人々。
安倍晋三(総理大臣)
松任谷由実(歌手、ユーミン・結婚前は荒井由実)
ルー大柴(タレント・ネタ「トゥギャザーしようぜ!!」)
林真理子(直木賞作家、エッセイスト・40代で第一子出産)
秋吉久美子(女優・発言「子どもは卵で産みたい)
石田純一(俳優・発言「不倫は文化」)
片岡鶴太郎(俳優・画家・元コメディアン)
古舘伊知郎(アナウンサー・『報道ステーション』メインキャスター)
高見沢俊彦(歌手、ロックグループTHE ALFEE(ジ・アルフィー)のリーダー)
中畑清(野球評論家・元巨人軍の選手・決まりゼリフ「絶好調!」)
昭和20年太平洋戦争終結。その9年後に誕生。前年の昭和28年にテレビ放送開始。
29年生まれの子ども時代の出来事
昭和29年(1954年) 自衛隊発足。
昭和30年(1955年) 自由民主党結成(いわゆる55年体制)。
昭和31年(1956年) 経済白書「もはや戦後は終わった」・・・このとき3歳
昭和32年(1957年) 人工衛星スプートニク1号打ち上げ成功。
昭和33年(1958年) 東京タワー完成
昭和34年(1959年) 日本が国連に加盟。少年マガジン創刊・・・このとき5歳
昭和35年(1960年) 60年安保、全学連7000人が国会に突入。 国民所得倍増計画発表。
昭和37年(1962年) テレビ受信契約者1000万突破(普及率48.5%)。
昭和39年(1964年) 新幹線開通。東京オリンピック・・・このとき10歳。
昭和40年(1965年) ビートルズ他来日。
昭和44年(1969年) アポロ11号人類初の月着陸・・・このとき15歳。(このころの高校進学率70%)
昭和45年(1970年) 大阪万博。 70年安保、全国で安保反対統一行動が行われ、77万人が参加。
昭和47年(1972年) 沖縄返還。(このころの大学進学率25%)
昭和48年(1973年) 巨人V9。
昭和29年(1974年) 小野田少尉、帰国・・・このとき20歳
昭和29年生まれ。
団塊の世代の前の世代。戦争をを知らない子どもたち。
生まれる前の年にテレビ放送開始。テレビっ子第一世代。
もの心つく3歳のころには、「もはや戦後は終わった」。戦後も知らない最初の子どもたち。
ビートルズが来た時はまだ小学生。
万博の時は高校生。日本の高度成長と共に育ってきた世代。
大学へ入るころには、安保闘争も終わり。「しらけ世代」
***
その前の世代と比べると、苦労知らずの最初の世代です。
テレビとマンガで育った世代です。
長髪もジーンズも、反体制のシンボルではなく、ファッションになっていった世代です。
おしゃれで、スマート、合理的になっていった世代です。
50代になっても若さを感じさせる世代です。
50代になっても、女子高生に「かわいい」と言われる人もいます。
50代になっても、曲が売れ続けます。現代感覚を失いません。
(ちなみに当サイトのウェブマスターは昭和34年東京生まれ。記憶のある限り、家には最初からテレビも電話もありました。毎週少年マガジンを買っていました。中学校のクラスメイトは全員高校へ進学しました。)
初めての、戦後生まれの総理大臣。
奥さんがまだ若くてきれい。
奥さんと手をつないで飛行機のタラップを降りてきます。(誰も文句を言いません)
政治家なのに、おしゃれでスマート、繊細で上品。
これまでの、政治家とは雰囲気が違います。
どぶ板選挙を行い、「ガハハ」と笑い、おなかが突き出た政治家のイメージとは、まったく違います。
そこが安倍さんの魅力であり、女性に人気のある部分でした。
昔なら、そろそろ「初老」だったのに、年齢を感じさせない人々。本人も、ようやく一人前の大人になったと自覚しているのかもしれません。
松任谷由実さんは、言うまでもなく、トップを走り続けてきました。結婚生活を続け、大御所としての貫禄もありながら、今も若者の心をつかみ続けます。
ルー大柴さん。脂ぎった中年です。でも同時に、英語が得意で、まだまだ落ち着いたりしないで、中高生と一緒に元気に盛り上がれます。
活躍している昭和29年生まれは、これまでの50代とは違い、自由で、のびのびと、発言し、活動しています。古い世代と新しい世代の橋渡し役をしています。
安倍さんも、そんな活躍する29年生まれでした。小泉首相と一緒に北朝鮮に行って、拉致被害者を取り戻してきとき、新総理になった時、彼は輝いていました。
普通の世界なら、ひとつ前の団塊の世代の人々は、次々と第一線から退いていきます。その業界自体も、激しく変化してきたことでしょう。新しい時代を生きてきた昭和29年生まれが、ますます活躍できるはずです。
(年功序列の廃止とか、年金問題とかいろいろありますが、この世代は、リストラさえされなければ、何とか出世もし、退職金ももらえ、逃げ切れる世代でしょうか。)
ところが、政治の世界は違います。
今も、古い日本的な習慣が強く生きています。
50代は、ベテラン議員たちから見れば、まだまだ若い人々です。安倍総理も「経験不足」と言われます。
そんな安倍さんが、政治のトップに立った時、古い世代の壁はまだ強烈だったのでしょうか。
リーダーシップを十分に発揮できないまま、国民の支持も失っていったのでしょうか。
***
安倍総理は、「機能性胃腸障害」と診断されました。これは、強いストレスによって胃腸がスムーズに働かなくなっているということです。
これまでの政治家の「イメージ」としては、何でも良く食べ、よく飲み、お酌されれば必ず受け、宴席をはしごし、不祥事を起こしてマスコミにどんなにたたかれても、ゴキブリのようにふてぶてしく、悪いことをしても、「悪いやつほど良く眠り」「悪いやつほど良く笑う」、そんなイヤになるほど強いイメージでした。胃腸なんか人の3倍も強そうなイメージでしょう。
そんな古いイメージの政治家とは異なるところが、安倍さんの魅力でもあり、弱さだったのかもしれません。
安倍さんは、以前から精神的に追い詰められると、よく胃腸の調子をくずしていたようです。
「ひ弱なお坊ちゃま」といった評価は、以前からあったようです。
胃腸は、心の動きに敏感に反応します。いやだな、辛いなと思ったとたんに、胃の中でじわっと血がにじむことがあります。胃液が、ピュッと噴水のように出ることもあります。ストレスがたまると、胃液が上がってきて口の中がすっぱくなる人は、たくさんいるでしょう。
辛い時、悲しい時、食欲がなくなるのは、当然です。
こんな胃の状態が続けば、胃炎や胃潰瘍にもなるでしょう。
心の問題が腸に表れて、便秘や下痢をすることもあります。旅行に出ると便秘や下痢をする人は少なからずいますが、生活の変化だけではなく、緊張やストレスによる場合もあります。
ちょっとしたことですぐに下痢をしてしまう場合には、「過敏性腸症候群」の診断がでることもあります。悩んでいる人はたくさんいるでしょう。
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「機能性胃腸症候群」は、食欲不振、胃もたれ、便秘、下痢などの症状がでますが、検査をしても異常が発見されません。今までであれば、異常なし、気のせいといわれてきましたが、現在では、他の病気ではないと判断されれば「機能性胃腸障害」と診断されることがあります。
原因は、強いストレスによる胃腸の運動機能の低下です。つまり、心理的な原因で、胃腸が適切に収縮しなくなり、内容物を次の部分へ押し出すことができなくなっている状態です。様々な心理的な症状が伴うこともあります。治療は、胃腸薬も使いますが、心理療法も行われます。
今回身体的な症状としては、胃腸障害が出ていますが、精神的にもかなり疲労困憊しているようです。入院が適切だったと思います。
結果的には、たしかに「無責任」といわれても仕方のない辞任表明のタイミングになってしまいましたが、本当に心身ともに衰弱し、病気になっているのだとしたら、仕方がないのではないでしょうか。
日本の最高責任者としては、どんな心身の状態だろうとも責任を果たすべきだというのも、たしかにもっともです。けれども、もしも総理大臣が任期の途中で重い体の病気になり、入院することになれば、一体誰がどれほど責めるでしょうか。もちろん、自分の健康管理も大切ではあるでしょうが。
どんなに強い人も、;横綱だって、農水大臣だって、高貴な家のお嫁さんだって、総理大臣だって、病気になることはあるでしょう。
もちろん、病人ならすべてが許されるわけではありません。ぎりぎりまでがんばりすぎて周囲を混乱させるぐらいであれば、早めに身を引き、休息したり、治療に専念したりすることが必要でしょう。
それでも、体の病気であれば理解してくれる周囲の人々も、心身の不調、強烈なストレス状態における精神的な症状になると、なかなか理解してくれません。
ましてや、その人が社会的に高い立場にあればなおさらです。根性がない、自覚がない、弱いと責められかねません。でも、きわめて健康な人でもガンになることがあるように、どんなひとでも心の調子をくずすことはあるのです。
そんなときには、自分で冷静に判断することができなくなることがあります。そんなときこその、周囲のサポートでしょう。周囲が本人を支え、そして国民のため、会社やお客さんやファンのために、適切な行動をとることが必要ではないでしょうか。
戦後レジーム(戦後体制)が、必ずしも押し付けられたもので変えるべきものだとは思いませんけれども、戦後焼け跡の中から出来上がってきた様々な日本の姿は、もう変える時ではないでしょうか。
根性からやさしさの時代。集団から個の時代。20世紀は、科学技術が猛烈な勢いで進歩したすばらしい時代でしたが、同時に戦争と環境破壊の時代でした。
私たちは、いま新しい21世紀の世界にいます。20世紀の後半を生きてきた人が、リーダーになろうとしています。前の世代から見れば「ひ弱なお坊ちゃま」は、特別な大金持ちの政治家一家の子だけではありません。
戦後すら知らない、苦労しらずの都会育ちの日本人は、みんなそんな「ひ弱なお坊ちゃま」の部分を持っていることでしょう。
もちろん、だからみんな心身症になってもしょうがいというわけではありませんし、世界に負けてよいわけではありませんし、上を目指さなくてよいわけではありません。
大きく社会が変化しようとしている今、中高年世代が危機的状況に陥っています。この数年日本の自殺者は急増しましたが、その急増の多くの部分は中年男性です。
良い言い方をすれば、古い世代と新しい世代の長所を兼ね備えているわけですが、悪い言い方をすればどちらにもつくことができない世代です。苦しんでいる人がたくさんいます。
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私たちはいったいどんな世界を作っていこうとしてるのでしょうか。
60年前に子どもだった人々は、裸足で砂利道をあるき、学校に行けなくても文字を覚え、爆弾の中を逃げ回り、イモの葉っぱを食べ、柿泥棒をし、お腹にはギョウチュウを飼って、たくましく育ってきました。彼らが大人になった時、日本は成長の時代で、彼らは苦労はしましたけれども、夢が持てる世代でした。
さて、その次の世代。前の世代から見れば豊かですが、前の世代と比べれば鍛えられずに育ってきました。大人になった時、高度成長は終わり、熱い学生運動も終わり、しらけ、後に一瞬のバブルはあったものの、すぐに崩壊し、失われた10年(15年?)を生きてきました。もう科学技術の進歩に100パーセントの夢をいだくことはできません。少子高齢化と、莫大な借金と、深刻な環境問題が迫っています。
弱くなってしまった現代人。それでも、前の世代とは異なる新しい感覚をもてるはずです。新しい道具を使いこなすこともできるはずです。「愛」の大切さを、「命」の大切さを、語ることができるはずです。そうして、新しい夢を作れるはずです。
病んでいる人は多くいます。医学が進歩し、良い薬ができました。でも、薬は特定の症状に効くだけです。人が健康に、幸せに生きていくためには、愛に包まれ、夢を持ち、チャレンジしていくことが必要です。
競争やライバルは必要です。政治家や役人を国民が監視し、批判することも大いに必要です。しかし、互いに非難するだけでは、新しいものは生まれないのではないでしょうか。健全な批判精神。そして、愛と尊敬による相互支援。互いの違いを認めつつ、ぶつかり合いながらも、共に上を目指す(より良い生き方を目指していく)ことが、結果的に人々の心身の健康を守り、多様な人々が幸福に生きていける社会作りにつながっていくのではないでしょうか。
***
個人的には、安倍総理の政策に反対の部分はありますけれども、初めての戦後生まれの総理としてのこの1年間の働きに、敬意を表したいと思います。ご健康を回復されますことを祈っています。
そして、次に戦後生まれの総理が誕生する時には、私たちが温かい心と、鋭い目をもって、見張り、見守っていくことができますように。良いリーダーシップを発揮し、私たちの国日本を、さらに健康で良い国にしていくことができますように。祈っています。
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