いじめられている君のために。いじめ自殺を防ぎたいあなたのために。
こころの散歩道 /自殺の心理/いじめ自殺予防(新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科・ 碓井真史)
ウェブマスターによる新刊(2010年5月27日発行)
『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』
自殺といのちについて考える全てのひとのために
「いじめ」を原因とした子どもの自殺報道が続いています。大きな自殺報道は次の自殺を生み、さらに報道が大きく長く続き、自殺の連鎖が生まれる。これは多くの自殺予防の専門化が語るところです。
(さらにこの時期には事故死も増えるといわれています。)
ちょうど伝染病が流行っているようなものです。しかし、この伝染のような連鎖は止められます。
自殺は、冷静に自己決定した結果の行為ではありません。精神的に追い詰められ、自殺するしかないと思い込んだ結果の行為です。ですから、自殺は防ぐことができるし、防ぐべき死です。自殺を考えている人々を援助し、その人が本来持っているはずの生きる意欲と勇気を取り戻す方法をご一緒に考えましょう。
2006.11.16(12.19補足)
***
大きな自殺報道は、次の自殺を誘発します。
危険性が高いのは、同じような地域、性別、年齢、事情(悩み)の人たちです。
自分達の地域で発生したときにはさらに注意が必要です。子どもの自殺の特長は、衝動性、確実な手段、小さな動機、影響の受けやすさ、未熟な死生観があります。子どもの自殺は統計上は多くはありませんが(自殺者3万人の中で小中学生の自殺は80人ほど)、小さな子どもが自ら命を絶つほど悲しいことはないでしょう。
マスコミ報道が自殺の連鎖を生んでいることは確かでしょう。しかし、だからといって報道しない方が良いのかといえば、もちろん違います。問題は、どのように報道するかです。
まず、メディア側も、読者、視聴者の側も、大きな自殺報道は自殺連鎖を生む危険性が大きいことを自覚しなくてはなりません。
自殺現場の映像を繰り返し放送する。自殺方法を詳しく報道する。遺書の内容も詳しく知らせる。これらは、自殺連鎖の危険性を増加させます。
もっとも危険なのは、自殺を美化すること、あるいは自殺が「成功」したというような報道です。たとえば、自殺したことで、亡くなった子はみんなから同情され、いじめっ子は懲らしめられ、大人たちは深く反省したといったふうに、まるで自殺してよかったと言っているかのような報道は、とても危険です。
諸外国では、自殺報道の内容に注意を払い、さらに大きな自殺報道をする場合には、必ず自殺予防の情報を付け加えることになっています。
大きな自殺報道が続いている今、同じような子ども達の上に自殺の危険性がいつもになく高まっていることを認識しましょう。
校長先生が全校集会で命の大切さを語ることも良いですが、それよりもむしろ、生徒一人一人の顔が見える教室で、生徒一人一人の状態を理解している担任教師が、子ども達のフォローをしましょう。
普段からいじめ、嫌がらせで悩んでいる子は要注意です。言葉をかけましょう。様子を注意して見ましょう。
教師が事情をつかんでいなくても、元気がない、ふさぎこんでいる子がいれば、言葉をかけましょう。様子を注意してみましょう。
以前自殺未遂をした経験のある子がいれば、特に要注意です。しっかり、フォローしましょう。
いじめの問題や悩みが明るみに出て、いつもなら来週時間をかけて扱おうと思うときも、今はできるだけすぐに対応しましょう。自殺の危険性があるのだと考えましょう。
伝染病が流行っているときには、いつも以上に衛生に気をつけるのと同じです。
教師だけではなく、もちろん両親、祖父母など、身近な人によるアプローチが大切です。友達の助けもとても重要です。いじめられている子、悩んでいる子で、親にも先生にもいえないけれども、友達なら言えるという子がたくさんいます。
専門家の活動も大切ですけれども、まず身近な人々、あなたのひとことが、子どもを救うことになるかもしれません。
いのちを大切にしようという感動的なお話は、それはそれで意味があります。けれども、自殺の危険性が高まっているときにまず必要なことは、声をかける、気持ちに寄り添うということです。
死者に鞭打つことはできませんが、自殺を美化することもできません。かといって、亡くなった方や自殺未遂をした人を「いのちを粗末にする」などと非難してはいけません。それはかえって、いま死を考えている人の心を追い詰めます。
彼らは命を粗末にしてはいません。大事だからこそ、激しく傷つき、死ぬしかないと思い込みます。
また、とおりいっぺんのお説教も意味がありません。声をかけ、悲しみや辛さに共感しましょう。
青年の自殺に比べると、子どもの自殺はサインがでません。でも、元気がなさそうだと思ったときに、声をかけるのは、何であれ良いことでしょう。
一番はっきりとしたサインは、死について語ることです。
「死にたい」「消えたい」といったことを語ったときには、親も教師も友達も、真剣に聞いてあげましょう。そのことを話題としておしゃべりをしましょう。
「死にたいという人に限って死んだためしはない」などという言葉がありますが、自殺予防の観点からすれば、死にたいといっている人は実際に死ぬかもしれないと考えることが大切です。
クラスでいじめを受けている子どもは、世界中からいじめを受けているような感覚を持ちます。自分がいらない存在のような気がしてきます。
ですから、君も一人ではない、私は君のことを心配していると伝えましょう。大切に思っているのですから、真剣にその子の話を聞きましょう。相手が自殺に関して口に出せば、こちらもしっかりとその言葉を受け止め、自殺を考えているのかどうかききましょう。
他の人の力もかりて、君の一人ではないというメッセージをその子に伝えましょう。他の身近な人、そして専門家。みんなの力で、彼を心理的にも物理的にも孤独にせずに、支えていきましょう。
先日福岡で自殺した少年が語っていたそうです。
「親に心配かけられん」
同じような言葉を、私もあちこちの子どもから聞きます。
でも、親には心配かけてもいいんです。親に心配かけるなというのは、心配かけるような悪いことをするなという意味であって、苦しいいとき悩んでいるときに親に話すなという意味ではありません。
親も、先生も、
大人は子どものことを心配するのが仕事です。
心配かけていいよ。迷惑かけていいよ。話していいよ。
聞いてくれる人がきっといるはずです。
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いじめられてもがんばっている君へ。君は何とえらいのでしょう。
君はいじめられている弱いだめな子ではありません。
いじめと戦っている勇者です。
いじめられても、生き抜いているサバイバーです。
いじめられていることを大人に話すのは、チクリでもないし、弱さの表れでもありません。そうではなくて、君の勇気のあらわれです。
誰かがいじめられていることを、大人に話してくれるのも同じです。
誰かに話すことで、相談することで、君の勇気を示してください。
君はかけがえのない、すばらしい子どもなのだから。
***
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リンク
NPO法人いじめ対策プロジェクト-RBC RescueBuilliedChildren
いじめ防止ネットワーク:いじめSOSメール
BOOKS
ウェブマスターによる新刊(2010年5月27日発行)
『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』
自殺といのちについて考える全てのひとのために
高橋祥友著 『群発自殺―流行を防ぎ、模倣を止める 』 中公新書
高橋祥友編 『青少年のための自殺予防マニュアル 』 金剛出版
『いじめ撃退マニュアル―だれも書かなかった「学校交渉法」』 学校を味方につけよう!
『いじめ―教室の病い 』 いじめを理解するための基本書
『西の魔女が死んだ (新潮文庫)』 いじめ、不登校を考える人にとっての必読書。映画にもなった、中学生でも読める小説。
マックス・ルケード著 『たいせつなきみ 』(絵本) いのちのことば社
:君も愛されている。人の悪口なんかに負けない方法。私はあちこちの講演会で朗読しています。
『いじめ自殺子どもたちの叫び』
『啓祐、君を忘れない―いじめ自殺の根絶を求めて』
『せめてあのとき一言でも―いじめ自殺した子どもの親は訴える』
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『 いじめ・自殺・遺書―ぼくたちは、生きたかった!』
『いじめ自殺―12人の親の証言 (岩波現代文庫 社会 147)』
『いじめ自殺―6つの事件と子ども・学校のいま (「教育」別冊 (10)) 』