こころの散歩道(心理学総合案内)/心のニュースセンター/オリンピック/開会式
「炎と感動の開会式」
「君は選ばれて障害者になった」「つまずきながらも段差を越えて」
炎は平等の象徴、エネルギーの象徴、希望の種子。
開会式をテレビで見ました。オリンピックの派手な開会式を見た後では、少し地味にも感じましたが、聖火の点灯などは、長野オリンピックの開会式よりもおしゃれな演出で、そして感動的でした。
総合プロデューサーの久石譲氏によると、開会式を炎の祭典として演出したそうです。
出演者や観客の気持ちが伝わってくるようなすてきな開会式でした。選手宣誓をした選手も、とても感動していました。テレビのアナウンサーやゲストのアグネス・チャンも、みんな感動して、しばらく声が出せなかったそうです。
アグネスチャンは、アイドル歌手として活動しているときから、チャリティー活動などを積極的に行ってきました。
開会式にも登場したある少年の話です。小学生のころ、家族で車に乗っていて事故にあいました。他の家族は大したことはなかったのですが、助手席に乗っていたこの少年だけが、片足切断の大ケガをしました。
まだ、小さな子供だった彼は、気持ちが荒れて、病院で泣いたり怒ったりしていました。さて、少年と同じ病室に、いかにもヤクザ風のおじさんが入院していました。お見舞いに来る人達も、同じような風貌の人達で、他の入院患者は恐がって近寄らないようにしていました。
でも、その少年は、ヤクザ風のおじさんと仲良しになりました。ある日、おじさんは言いました。
「いいか、ぼうず。もし、お前のお父さんが同じようなケガをしていたら、お前の家は大変なことになっていただろう。お母さんがケガをしていても、同じだ。お前のお兄さんは、とても優しい子だが、どれほどがんばれたかは分からない。お前は、家族の中から選ばれて、ケガをしたんだ。選ばれて、障害を与えられたんだ。」
少年は、目が開かれるような思いがしました。「そうだ、がんばろう!」その日から、泣いたり、文句を言う生活ではなく、彼の人生への挑戦が始まりました。
当時、少年は言っていました。
「ぼくも、がんばって、りっぱなヤクザになるんだ!」(笑い)それは、ともかく。彼はふだんの生活も、スポーツも、精一杯がんばりました。激しい練習で、義足をつけている足から血が出ます。周りの人は、もう止めた方がいいとすすめます。けれども、彼はがんばりました。そして、今回、長野パラリンピックに参加します。
(本当は実名をあげて、みんなで応援したいところですが、この話は、インターネットで流すことを前提にしてお聞きした話ではありません。そのため、少年の名前は伏せました。ただ、この少年のことは、長野パラリンピックの前にも、マスコミで紹介されたことがあるそうで、この話も、もしかしたら、どこかで出ているかもしれません。)
私が研究テーマにしている「内発的動機づけ」の分野では、「自己決定」をとても重視します。 人に操られるのではなく、自分のことは自分で決めることによって、やりがいや生きがいができるという考えです。
自分で選択できることは、それでよいのですが、選択できないことはどうでしょうか。男、女として生まれた。日本人として、アメリカ人として生まれた。障害がある。
このような自分で選択できない、普通の意味で言えば自己決定できないことに対して、否定的な気持ちを持ってしまうことがあります。しかし、それでは幸せな人生は歩めません。
真の自己決定とは、選択できることは選択し、一方、選択できないことは肯定的に「受け入れる」必要があります。
自分の運命とも言えるものを、いやがるのではなく、それを受け入れる気持ちを持ったとき、積極的な生き方ができるのです。
それは、「選ばれた」と言う感覚や「神の計画」という信仰かもしれません。客観的な事実は変わらなくても、いやいやながらそうなってしまったと感じるのではなく、、神や仏や宇宙の摂理によってそうなったと感じ、自分から進んで、まさに自己決定的に受け入れるのです。
先天的な障害を持った子供が生まれると、ある家庭は、いがみ合い、崩壊していきます。しかし、その危機を乗り越えることができると、多くのご家族が、異口同音に「この子は私の宝だ」「この子が私の生きがいだ」「わが家が選ばれて、この子が生まれてきた」「この子のおかげで人生や人間の真理を学んだ」と語ります。日本のご家庭でも、欧米のご家庭でも同様です。
「神よ、変えられるものを変える勇気と、変えられないものを受け入れる信仰を、私に下さい。」
(これは誰の言葉か忘れました。ご存じの方がいらっしゃたら、教えて下さい。usui@n-seiryo.ac.jp)
3.9に上記のお願いをしましたところ、3.10と3.11に早速メールをいただきました。T.Y.さん、N.Sさん、どうもありがとうございました。お二人からの情報を合わせますと、次のようになります。
ニューヨークのユニオン神学大学の教授ラインホールド・ニーバー(Reinhold Niebuhr 1892-1971)の祈りの言葉(詩「変革の祈り」)で、アメリカではとても有名だそうです。正確には下記の通りだということです。
(serenity のかっこいい訳語がちょっと難しいかな。平安? 私は英語が苦手です。)* * * * *
"God grant me the serenity to accept the things I cannot change,
courage to change the things I can,
and wisdom always to tell the difference."
「神よ、願わくば私に、
変えることの出来ないことを受け入れる落ち着き と
変えることのできることを変える勇気と
その違いを常に見分ける知恵とを、授けたまえ」
新聞報道によると、開会式に登場した女の子(8才)の車いすが、高さ5センチの配線コードの段差を乗り越えるのに、ずいぶん苦労したそうです(テレビを見ているときは、気がつきませんでした)。
これは事前に分かっていたことなので、補助スタッフを付けることも考えられたそうですが、「助けはいらない」と本人が断ったため、女の子自身の力に任せたそうです。
「バリアフリー」は、とても大切なことです。いろいろな場所で、段差をなくしたり、スロープをつけたりすることは、必要なことです。
歩いていると全く気にならないようなほんの小さな段差が、車いすにとっては、大きな壁になることがあります。もし、車いすを押している人が気がつかないまま段差に当たってしまうと、乗っている人は、衝撃のために前に飛び出してしまう危険性さえあります(一度体験してみるとよくわかります)。
今回のことも、普通に考えれば、段差をなくすべきだったと思います。でも、彼女は、自力で段差を乗り越えることを選びました。
つまずきながらも段差を越えた時、見守っていた総合プロデューサーの久石譲さんらは、舞台裏で歓声を上げたそうです。久石さんは「垣根を取りたいと取り組んできた。それをまた、改めて考えさせられた」と語っています。
* * * * *
彼女の勇気に拍手を送りたいと思います。
スムーズな式の進行が妨げられたかもしれないのに、彼女のの力に任せた スタッフのみなさんに、拍手を送りたいと思います。
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