心理学総合案内・こころの散歩道/犯罪心理学/少年犯罪/17歳 新宿ビデオ店爆破事件
2000.12.18
2000.12.16.渋谷駅前で高校の2年生(17)の少年が、通行人に対して金属バットで無差別に襲いかかり8名に重軽傷を負わせた。少年は通行人の男性に取り押さえられ、逮捕された。
調べによると、事件直前、少年は父親に叱られて殴られ、「父に恥をかかせてやろう」と思い犯行を思い立ったという。高校の成績は上位の方だった。
少年は小学4年生ごろから家庭内暴力を犯し、精神科での入院歴がある。診断名は「非定型精神病」。
少年の父親は、テレビのインタビューの答えて子どもに暴力はいけないことだと教えるために体罰を加えたと言っている。
心の病にも様々なものがあります。「神経症(ノイローゼ)」は、「心」の病であり、たとえてみれば、しばらくパソコンを使っているうちにしだいにシステムソフトが不安定になっている状態といえます。
「人格障害」は、人格(性格)の病的なほどの歪みであり、パソコンソフトのバグのためにうまくパソコンが動かないようなものです。
これに対して、精神病」は、心に症状が現れますが脳の病気と考えられます。パソコンのハードがどこか壊れているために上手く動かない状態です。(精神病は決して不治の病でも遺伝病でもありません。良く効く薬もあります。)
精神病には、精神分裂病(統合失調症)やそううつ病があります。「非定形精神病」は、どれにも当てはまらない、どちらの特長も部分的にある精神病です。
非定形精神病は、気分が高まったり落ち込んだりするそううつ病的な症状を持ちながら、幻覚、妄想など精神分裂病的な症状も現れる病気です。時には興奮して錯乱状態になることもあります。青年期はまだ脳が未成熟であることもあって、うつ病に非定形精神病的な症状が伴うことも珍しくありません。一般に予後(病気の治り)は良いとされています。
この病気にかかる人の多くは、もともと適応性が良く、コミュニケーション能力も高く、エネルギッシュながんばり屋です。そのような人が何かの心身の疲れなどがきっかけとなって、発病します。
( 一般的に犯罪報道に精神科的な病気の名前が出てくると、病気と犯罪を安易に結びつける人がいますが、これは明らかに間違いです。今回の事件でも、病気は、事件に関して無数にある諸要因の一つにすぎません。その病気だからバットを振り回したのではありません。
また諸研究によれば、精神的な病の人が犯罪を犯すよりも、酔っ払いが犯罪を犯すほうがずっと多いのです。そしてたとえば家族に保険金をかけて殺すといった本当に恐ろしい犯罪を犯すのは、病気の人でもなく、酔った人でもなく、「普通の人々」なのだと思います。)
親は良かれと思って体罰を使うのですが、場合によっては、子は「必要があれば暴力を使っても良い」ということを学んでしまいます。
家庭内暴力を起こす子の多くが、小さいときに体罰を受けています。また親から体罰という暴力を受けて育った人が、しつけとは暴力を使って行なうのだと考え、自分の子どもに身体的虐待を加えることもあります。
家庭内暴力に対して、暴力で立ち向かうのはよいことではありません。問題は解決しません。暴力を使わずに、暴力から逃れる方法、暴力を抑える方法を考えなくてはなりません。
体罰の心理学:限界と副作用(危険性):心理学総合案内こころの散歩道
恥をかかせてやる
少年の供述によれば、父親に恥をかかせるために犯行に及んだといっています。(これを文字通りに受け止めて、それだけが犯行動機と考えるわけにはいかないでしょうが)
非行少年達に良くあるパターンです。親子関係の中に縛られて自由になれず、親に振り向いてもらいたいとか、親に復讐したい思いで犯罪に走ります。
多くの少年犯罪は、自分の利益のために行なう大人の犯罪とは違う種類の犯罪なのです。
少年は、無差別に複数の人を襲いました。もし、日本にもアメリカのように多くの銃があれば、少年は銃を使った大量殺人者になっていたかもしれません。
大量殺人を狙う通り魔の心理は、激しく傷つき、自分もこの世界も終わりにしたいと思う心理です。営利目的でも、個人的恨みでもなく、無差別に多くの人に襲いかかります。逃亡する気もほとんどなく、たいていはその場で捕まってしまいます。
(その人自身にも、この世界にも、まだまだ素晴らしいことがきっと起るはずなのに)
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