心理学総合案内「こころの散歩道」/社会心理学入門・出会いの道/1 (碓井真史)
1 世の中を見る目、人を見る目社会的認知(1)バランス理論 |
目で見たり耳で聞いたりして、感じ取ることを心理学では「認知」と言っています。「認知」は、感じたり、考えたりすることなど幅広い意味で使います。
私たちは、世の中の無数のことについて考えます。頭の中には、様々な思いが入り乱れています。でも、そのいろいろな思い、認知が、「できるだけバランスがとれた状態にしたい」と人は考えるようです。
私と、相手と、モノについて考えましょう。
たとえば、私がいて、交際相手がいて、交際相手の趣味がある。
私はその人が好き、その人は自分の趣味が好き、私もその趣味が好き。
この場合は、バランスがとれています。私と相手と、その趣味の話をしても、話はスムーズです。
ところが、
私は、その人が好き、その人はその趣味が好き、でも私はその趣味が嫌い、
この場合は、バランスがとれていません。
バランスがとれていないと、気持ちが悪いので、「変えやすいもの」をかえます。たいていは、相手の趣味を理解しようとするでしょう。
どうしても、それができない時には、交際相手を変えるか、それとも、その趣味の問題は、「とても小さいことだ」と考えます。
坊主憎けりゃ袈裟(けさ)まで憎い
そのお坊さんが憎いと、そのお坊さんが着ている服まで憎くなるということわざです。憎い相手が好きなものにたいしては、憎んだほうが心のバランスがとれるからです。
嫌いな人が提案する意見は、意見の内容に関わらず反対したくなります。
友達の友達は友達
仲良しの友達が仲良くしている相手にたいしては、自分も好意を持ちます。その方が、バランスが良いからです。
好きなタレントがコマーシャルしている商品に好感を持つもの同じです。
敵の敵は味方
憎い敵が憎んでいる敵は、自分の味方にしようとします。その人と一緒に相手を攻撃できるわけです。
私はお父さんが好き、私はお母さんも好き、そしてお父さんとお母さんはとても仲良し。それならばバランスがとれています。
ところが、
私はお父さんが好き、私はお母さんも好き、でも、お父さんとお母さんはとても仲が悪い。これでは、心のバランスがとれません。子供は、どちらの味方にもなれず、大好きな両親のけんかを心を痛めながら見るわけです。
どちらか一方の味方になってしまえば、一応、心のバランスはとれます。たとえば、お母さんと2人でお父さんの悪口を言えばよいわけです。
(社会心理学的なバランスはとれていますが、このような状態が長く続けば、また別の問題は出てくるでしょうが。)