心理学総合案内・こころの散歩道/読者の広場

Sさんへの返信

 

To: s<s@ne.jp>

From: "うすい まふみ" <usui@n-seiryo.ac.jp> Subject: Re: 刺激的市民より

 

s様

 

メールありがとうございます。
お元気そうで何よりです。
返信が大変遅くなりまして、失礼いたしました。

 

At 7:05 PM -0800 98.2.8, swrote:

>うすい様

 

>多忙にかまけ返事が大変遅くなりました。さて何回かご意見をやりとりさせていただきましたがあなたとわたしの違いを総括すると・・・・

 

■この猟奇殺人男の社会復帰の必要性を

>あなたは「強く強く願い」
>わたしは「サラサラ感じず」

 

・全く個人的な意見としては、
どんな人にも、その人の幸福のために、
社会復帰してほしいと思います。

 

・犯罪防止の問題として考えれば、

日本の現状は、殺人者も含めて多くの犯罪者は、死刑にも終身刑にもならず、社会に戻ってきます。社会に出てきても、きちんと社会に適応できないときには、様々なトラブルを巻き起こす人となってしまうでしょう。私たちの生活の安全、社会秩序維持ののためにも、きちんと「社会復帰」してほしいと思います。

 

・心の病として考えれば、

どんな病であれ、必要なのは、治療と援助です。それは、その当人のためでもあり
社会のためでもあると思います。
ただし、「自傷他害」の恐れがある場合には、法に基づき、
身柄の拘束も含めて、適切な処遇が必要でしょう。

  

>■この猟奇殺人男へ相応の刑罰を与える必要を
>あなたは「サラサラ感じず」
>わたしは「強く強く願い」

  

これは違います。

法に基づき、「相応な処遇」がなされることを強く望んでいます。(少年法では、「刑罰」とは言わないようですが、少年院などに入るのは、日常的な言葉で言えば、「罰」ですよね。)

 

>■たとえば、この猟奇殺人男が近所に住んだら

>あなたは「積極的に家族ぐるみでお付き合いを望み」 わたしは「このうえない恐怖と嫌悪を感じ」

 

これも違います。

もし「猟奇殺人男」が近所にいたら、恐怖や怒りを感じて、逃げるか、やっつけます。猟奇殺人男でなくても、レイプ魔だって、強盗殺人男だって、いやです。

でも、私の近所に、元・猟奇殺人男で、
今は危険のない男がやってきたら、

その人自身のためにも、地域社会の安全のためにも、できれば、普通にお付き合いしたいと願っています。たぶん私も、自分の心の中の恐怖や嫌悪と戦いながらになるでしょうが。

 

>■たとえばこのような未成年猟奇殺人男に家族が惨殺されたら

>あなたは「なにより加害者の無罰と早期社会復帰を願い」 わたしは「加害者を極刑に処する事を願い」

 

もし、そうなったら、私はとても苦しむでしょう。加害者の極刑を望むかもしれません。少なくとも、正しい法の裁きは望みます。

罪を犯しているのに、ごまかして無罪になることなどは、それはどんな場合であれ、望んでいません。

 

神戸の少年の場合も、現行法に基づき、正しい裁きが行われたのは、本人のためにも、社会のためにも、とてもよかったと思います。

そして、少年院等からの退院後は、本人のためにも、社会のためにも、早く社会復帰してほしいと思うことができればいいと考えています。私が怒りに我を忘れ、

「あんな奴は自殺でもしろ!」

「成人後にまた罪を犯して死刑になってしまえ!」

などと思うことがないようにと、願っています。

 

>わたしの意見はあなたにとってエラク「刺激的」のようですが、あなたの主張は「刺激的」をはるかに超越していて、わたしの乏しい頭脳では一片も理解できません。

 

下に、少し紹介しましたが、

私の意見は、日本の法律である少年法や児童福祉法や精神保健福祉法の精神と基本的な違いはないつもりです。

 

少年院を出てきた者の更生に協力するのは、国の機関である法務省がHPで国民に呼びかけているとおりです。(少年院のページ

 

 「少年たちは,少年院での教育を通して,自らの問題を見つめ,改善して社会に戻っていきます。二度と犯罪・非行を犯さないという決意を 実現するためには,本人の努力のほかに,社会の人々の温かい心と援助が不可欠です。立ち直りつつある少年たちへの御理解と御支援をお願いします。 」

 

>ただ「この少年の更正が社会の責任・・」はいただけませんな。無罰で2−3年で堂々と社会復帰できる現行法があるからといって「社会の責任」はチョット無理矢理な主張ですね。こういう思考はあなたなんか一番嫌うものだと思ってました。

 

このご発言は、よく理解できません。

もちろん、親は子の扶養義務がありますし、私自身も含めて、一人一人が自分のなすべきことを考えなくてはならないと思います。

それと同時に、少年の更生や教育や治療は
社会の責任とも言えると思います。

 

法律の類は、よく分からないのですが、
ぱらぱらとめくってみますと、

 

児童憲章

われらは〜この憲章を定める。

あやまちを犯した児童は適切に保護指導される。精神の機能が不十分な場合に、適切な治療と教育と保護が与えられる。

 

児童福祉法

すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、かつ、育成させるように努めなければならない。

国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。

 

更生保護事業法

国は、〜更生保護事業の適正な運営を確保し〜国及び地方公共団体以外の者で、更生保護事業を営もうとする者は、法務大臣の認可を得なければならない。

 

精神障害者保健福祉法

国及び地方公共団体は、〜精神障害者等が社会復帰をし〜努力し、〜施策を講じなければならない。

国民は、〜精神障害者等が〜社会復帰をし

〜協力するように務めなければならない。

 

*親と国と地方公共団体と国民のすべてが、協力し、努力しなくてはならないのだと思います。

 

>「14才ではどこの国でも死刑や無期は出にくい」との事ですが、英国で数年前に14才より年少の男二人が幼女を買い物先のス−パーから連れ出し暴行したうえ列車で轢死させた事件がありました。彼らには「無期」の判決が下されました。

 

バルガー事件というやつですね。

(私は事件の経緯をあまりよく理解していませんが、) http://www.web-sanin.co.jp/gov/police/ikai/bulger/index.htmに解説があります。

 

バルガー殺人事件の最終審判における判事の供述

 

「私は君たち2人に対して不定期刑を宣告します。君たちは 国務大臣の決定する場所と状況下で監禁されることになります。君たちが成長し完全に社会復帰が可能になり、また君たちがもう危険人物ではないとの判断を国務大臣が下すまで、非常に長い期間、厳重に監禁されることになります。」

 

>年少でも極悪凶悪犯罪にはそれに応じた刑罰をキチンと課している国もあるのです。

>(アメリカやイギリスが例外なのかな?)

 

http://www.web-sanin.co.jp/gov/police/ikai/syounen/index.htmに解説があります。

 

日本も、アメリカやイギリスのようにすべきだと言う意見もあります。いや、英米のケースは、決して成功事例ではないと言う意見もあります。

 

>おそらくご覧になられたと思いますが、猟奇殺人男への処分が決定した時の被害者の父親の憤りのメッセージを紹介します。

 

>この言葉のもつ重みを猟奇殺人男への愛情の百億分の一で結構ですから、遺族の心情として察してあげてください。

 

本当に辛い、いやしきれないお気持ちだと思います。

 

私にも愛する子供たちがいます。
もし、子供が殺されたりしたら、私も家内も心から悲しむでしょう。

 

私の身近な人で、精神障害者による被害にあった人もいます。加害者は、逮捕もされませんでした。

被害にあった方と、この話題になるたびに、心が痛みます。

 

ところで、事件の被害者山下彩花ちゃんのお母さんが書いた手記「彩花へ:生きる力をありがとう」が出版されましたね。

 

「最後にA君へ 今、あなたに会いたいような、絶対に顔も見たくないような複雑な 思いでいます。私たちの宝物だった、たった一人の愛娘を、あんなか たちで奪い取ったあなたの行為を、決して許すことはできません。」

「その一方で、これもまた母であるがゆえに、どんなに時間がかかっ てもあなたを更正させてやりたいと願う気持ちがあることも嘘ではあ りません。」

「罪を罪と自覚し、心の底からわき出る悔恨と謝罪の思いがいっぱいにつまった、微塵のよどみもない澄みきった涙を、亡くなった二人の 霊前で、苦しんだ被害者の方々の前で流すことこそ、本当の更正と信 じます。」

「それまで、共に苦しみ、共に闘おう。あなたは私の大切な息子なの だから。」

 

>刑罰は「矯正、犯罪抑止」だけでなく「an eye for an eye」の側面もある事をお忘れなく。

 

おっしゃとおり、その二面性がありますよね。そして、ハムラビ法典や旧約聖書の「目には目を」と言った規定は、単なる残酷な復讐という面だけではないようです。

 

人は、一発殴られたら、腹が立って、何発も殴り返したくなる。もっとひどい目にあえば、殺しても飽きたらない奴だと思ってしまう。でも、それでは社会の秩序は保てないので、目をつぶされたときには、刑罰として相手の目をつぶすだけで止めさせようとしたようです。

 

日本の仇討ちも、集団仇討ちは禁止ですし、仇討ちされた者の家族が、さらにその相手に仇討ちし返すことは、禁止だったそうです。

 

ところで、最近また少年達の犯罪が目立ちます。不幸な事件が少しでも減ることを、心から願っています。


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