心理学総合案内・こころの散歩道/エマオの道:キリスト教と心理学/科学と宗教
人間について考えるとき、一つの方法として、医学や心理学などの自然科学を使う方法があります。心について考えるときには、とくに心理学や精神医学が役立つでしょう。しかし、本来的には自然科学は物事のメカニズムの解明はしますが、物事の意味や価値については扱いません。
それなのに、ときどき言い過ぎる科学者もいます。たとえば、「人間の体は細胞でできている」これは科学的な事実です。科学者も思想家も宗教家も認めます。
ところが「人間の体は細胞でできているにすぎない」と言ったらどうでしょう。これには反対する人たちもいるでしょう。こんなことを言う科学者は、自分が科学理論を飛び越えて、「思想」を語っているのに気がついていません。しかも、その思想を科学的な事実だと思いこんでいるのです。
自然科学的な説明だけが正しく、他の科学的ではない説明は正しくないというのは、誤りです。非科学的な説明が正しくないとされるのは、科学の世界の中の話です。
あなたが大事にしているおとうさんの形見の万年筆について、科学者がどんなに他の万年筆と同じだと説明しても、それが科学的に正しいとしても、それでもあなたにとっては、他の万年筆とは違うかけがえのない大切な思い出の品だという事実は変わりません。
物事に対して、ある一つの説明ができると、他の説明はできなくなると考えてしまうのは間違いなのです。ですから、ただしい科学者と正しい宗教家は、対立することはありません。
科学者が太陽を巨大な水素ガスの固まりだと説明し、一方、人々が太陽にとても感動的なものを感じたり、神の恵みと考えても、両者に矛盾はないのです。科学者が「ガスの固まりにすぎないのだから他の解釈はダメだ」といったり、宗教家が「太陽は神の恵みだからガスの固まりなのではない」と言ったりしなければ。
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事実、ケプラーは、自分の恩師が残した膨大な天体観測のデーターを前にして、このデータは一見無秩序だが、神の作った宇宙には美しい調和があるに違いないと信じて、データの整理を行いました。
その結果、シンプルで美しい太陽系の姿が見えてきたのです。ニュートンは、リンゴか落ちたり、惑星が動いたりする力のメカニズムを解明しましたが、宇宙をそのように作ったのは神だと考えていました。
このような説明を聞いて、物理学関係のことは納得できても、人間のことに関しては納得できないと感じる方もいらっしゃるでしょう。もちろん、人間と物は、違いますが、科学的な説明と哲学や宗教的な説明や感覚的な説明とが、互いに矛盾するものではないことは、同じなのです。
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『科学者は神を信じられるか―クォーク、カオスとキリスト教のはざまで (ブルーバックス)』
『科学者とキリスト教―ガリレイから現代まで (ブルーバックス)』
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