心理学総合案内「こころの散歩道」/マインドコントロール研究所/北朝鮮拉致事件と洗脳(うすいまふみ)

北朝鮮日本人拉致事件の
洗脳とマインドコントロール



2002.10.7

コメントが毎日新聞に掲載されました。(毎日新聞021006

その2 笑顔と涙の向こうの洗脳2002.10.18

 北朝鮮に拉致されていた人の中には、母国に言っても、北朝鮮を賛美し、「将軍様」への感謝の言葉を述べる人々もいます。これは、北朝鮮において、洗脳、マインドコントロールが行われたせいではないかと考えられます。

 いきなり袋づめにされなど乱暴な方法で拉致された後は、北朝鮮内では、一転して歓待されたケースが多いようです。しかし、このような手法は、被害者への人権的配慮というよりは、彼らの心をを操作するために行われたと思われます。

 公安当局によれば、「拉致した人々を、一定期間、密閉された環境下で洗脳するのは北朝鮮工作機関の典型的手口。日本人被害者も特定の施設や地域に集団で閉じ込め、脱出できないようにしておいて工作員の教育などに協力させられているのではないか」と指摘されています。

洗脳

 共産軍に捕虜にされたアメリカ軍人たちが、手紙の中や、テレビカメラの前で、アメリカを非難し、共産軍側を賞賛する。このような、アメリカ人たちにとっては理解できない現実を前にしたとき、これは「洗脳」されたのだと、考えられました。


洗脳の手法

 かつては、外傷が残るような拷問などのひどく乱暴な方法が使われたこともありました。しかし、洗脳はしだいにもっと洗練され、もっと効果的な方法を使うようになりました。

・混乱、緊張、興奮状態に置く

 殴る、蹴るという方法を使わなくても、長期の監禁や、十分な食べ物を与えないこと、極端な疲労、不眠などです。簡単に言えば、頭がボーとした状態に置き、思想を改造しようというわけです。

・善玉、悪玉

 怖くて乱暴な人が恐怖と不安を与えた後で、やさしい人が現れて、親切にします。はじめの恐ろしい感情が強ければ強いほど、次の善玉役の人を信頼し、言うことを聞いてしまいます。

・情報を与えない

 たとえば、いきなり逮捕し、罪状もつけず、釈放の条件も告げず、何の情報も与えないまま、監禁しつづけます。そうすると、非常に不安が高まり、時には相手がヒントさえつかんでいないことまで、何もかも白状してしまうことがあります。

・自白、告白

 まだ心が洗脳され知恵ないときに、ともかく表面だけでも、言葉だけでも、相手の求めることを話します。これを繰り返すうちに、しだいに心も変わってしまいます


厚待遇という洗脳方法

北朝鮮も、恐ろしい拷問という洗脳方法を使ったこともあるようです。しかし、朝鮮戦争のとき、洗脳されたと思われたアメリカ軍人たちは、むしろとても大事にされていました。

 捕虜の前には、やさしそうな人が現れ、「私はあなたの味方です」とつげます。実際、暴力も受けず、ひどい監禁も去れず、おいしい食事が与えられます。

 ひどいことや、自分の価値観に真っ向から反するようなことを暴力的に強制されることもありません。

 もちろん、本当の自由が与えられているわけではありません。表面上は親切そうでも、実際は、やんわりと、少しずつ、考え方が得られていきます。

 今の一応は平和な生活を続けるために、本人がこれくらいならばいいかなと思える程度の、ディスカッションへの参加や、相手のいくらかの協力が求められます。

 その一つ一つは、さほど大きくなくても、しだいに洗脳されてしまいます。しかも、開放された後でも昔の暴力的な方法よりも、洗脳が解けにくいのです。


今回の日本人拉致事件の場合

真実はまだ闇の中ですが……。
 拉致被害者の皆さんは、ある日突然拉致されます。どれほどの恐怖と不安だったことでしょうか。
 誘拐され、北朝鮮につれてこられるまでは、とても暴力的で乱暴だったようです。彼らは、何の情報も与えられないまま、監禁されたことでしょう。
 北朝鮮到着直後、かれらは死の恐怖の中、もしかしたら意外なほどやさしく取り扱われたかもしれません。洗脳テクニックのスタートです。
 その後の伝えられる生活では、「招待所」とよばれる施設で、他の庶民と比べれば恵まれた生活をしていたようです。ただし、もちろん、北朝鮮側の指示に従っていればですが。
 男女で拉致された3組は、最初は別々に生活していたようです。自分自身も孤独で不安ですし、相手のことを心配し、どれだけ心を痛めたことでしょう。その後、二人の生活が許されます。これも、不安の後でごほうびを与える洗脳テクニックの一つだと考えられます。
 こうして、ゆっくりと時間をかけ、洗脳が行われたことでしょう。彼らは次第に考えが変わり、北朝鮮に協力的になっていったのかもしれません。
 それは、彼らが弱かったからではありません。特別な訓練を受けた屈強な軍人でさえ、高度な洗脳テクニックの前では無力なのですから。むしろ、日本人被害者の方々は、困難な環境の中、本当にがんばってこられたと思います。
 しかしそれでも、現在の言動は家族にとっては受け入れがたいものになっています。

洗脳とマインドコントロール

 どちらも、相手の人権を無視して、むりやり操作する方法です。洗脳は、拉致、監禁、暴力などの方法を使います。マインドコントロールは、そのようなあからさまな違法行為は行わないもっとソフトな方法による操作です。

洗脳、マインドコントロールから救い出す方法

 日本人拉致被害者の心を救い出さなくてはなりません。それは、簡単なことではないでしょう。高度な洗脳テクニックを何十年にもわたって受けてきたのです。心を開放するにも、時間はかかるでしょう。でも、きっとできると、私は信じています。
・非難しない
 拉致被害者が、仮に間違ったことを言っても、非難してはいけません。彼らの言動は、洗脳の結果です。彼ら自身が悪いのではありません。非難、攻撃、説教は、逆効果にすらなってしまいます。
・温かな人間関係
 必要なのは、むしろ温かな人間関係です。たとえどんなことがあっても、家族も友人も、日本全体が、あなたを待っているという温かな人間関係を壊してはいけません。
・離す
 おそらく、北朝鮮にいたままでは、心が戻り始めても、すぐに再教育されてしまうでしょう。日本で、時間をかけて、アプローチできればよいのですが。
・質問し、考えさせる
 頭ごなしに何かを言っても、きっと聞いてくれないでしょう。そうではなくて、そっと近づきます。昔の思い出話もいいでしょう。日本にいたころ、何を夢見ていたかを話し合うのもいいでしょう。
 彼らの現在の考えが間違っていると、彼ら自身が気づかなくてはなりません。そのためには、疑問を沸き起こすような、適切な質問が大切です。
 温かな愛で包み、安心感を与え、ゆっくり、じっくりと、考えてもらうのです。時間はかかるかもしれません。でもきっと、もとのあの人に戻れるはずです。

(私の職場、新潟青陵大学は横田めぐみさんが被害にあった場所のすぐ目の前にあります。北朝鮮日本人拉致事件は、私にとって本当に身近に思える事件です。一日も早い解決を、心から祈っています。)

ホームページから本ができました。ふつうの家庭から生まれる犯罪者主婦の友社
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笑顔と涙の向こう側に
2002.10.18

マインドコントロール研究所
洗脳、マインドコントロールの基礎知識、救出法など



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