心理学総合案内「こころの散歩道」/マインドコントロール研究所/北朝鮮拉致事件と洗脳2(うすいまふみ)
北朝鮮日本人拉致事件の洗脳とマインドコントロール2
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拉致被害者のみんさんが日本に帰ってきました。とてもうれしく思います。ご家族に会い、ふるさとの景色を見、笑顔を見せ、喜びと感動の涙を流しています。けれども、その涙と笑顔と感動の向こう側にある、洗脳とマインドコントロールの存在を忘れてはいけません。
帰国したみなさんの笑顔や涙を見て、安心された方も多いでしょう。洗脳やマインドコントロールされていなくて良かったと。でも、笑顔と涙だけでは、判断できないのです。
洗脳やマインドコントロールされた人は、ロボットのように人間らしさを無くしてしまうと誤解している人がいますが、そうではありません。
悪質な破壊的カルト宗教にマインドコントロールされた人々も、知り合いとお茶を飲み、笑顔で会話することができます。テレビに出て冷静に話したり、ユーモアたっぷりに愛想をふりまくこともできます。帰国した拉致被害者のみなさんが見せている笑顔や涙は、ウソではないでしょう。しかし、彼らの心はまだコントロールされたままだと思うのです。
拉致被害者の皆さんが、北朝鮮でどのような体験をしてきたのかは、はっきりしていません。ですから、洗脳やマインドコントロールされているとはいえないでしょうか。
しかし、状況から考えて、洗脳、マインドコントロールされていないとは、考えられません。
北朝鮮は、洗脳、マインドコントロールのプロ中のプロです。被害者のみなさんは、その北朝鮮に暴力的に拉致され、24年間暮らしてきました。ただ牢屋に入れられていたのではなく、北朝鮮社会で適応して、生きてきました。おそらく、北朝鮮政府に協力的なことも行ってきたでしょう。
北朝鮮は、人を思うように行動させるために、拷問のような稚拙な方法は使わないでしょう。ムチを使い、兵士が監視しつづけるようなことはしないでしょう。それでは能率が上がりません。
彼らは、もっとずっと進んだ方法で巧みに拉致被害者を操り、自発的に北朝鮮社会で生き、仕事をしてきたはずです。
そして被害者のみなさんは、現段階では永住帰国を望まず、2週間後には北朝鮮に帰ると言っているのです。
マスコミに出ている精神科医の中には、仮に北朝鮮によってコントロールされてきたとしても、すぐに直るだろうと語っている人もいました。
人は、無理やり強制されたときには、強く反発し、強制がなくなったとたんに、もとの自分に戻るというのです。
そのとおりだと思います。ただし、それは本人たちが自覚できるような強制が行われているならばです。
拉致被害者の方々の中には、拉致されても死の恐怖を感じるようなことはなかった、怖くはなかったと語る人もいます。
前のページ(北朝鮮日本人拉致事件の 洗脳とマインドコントロール)でもご説明したように、北朝鮮は、ムチではなく笑顔によって、拉致被害者をコントロールしてきたのです。
洗練されたマインドコントロールの恐ろしさは、本人たちに強制されているという自覚を持たせないことです。無理やり言うことを聞かせられていると感じることができません。だから、その影響力から逃れるのは、とても難しいのです。
笑顔による統制のほうが、ムチによる強制よりも、ときにはずっと強力で、長期間影響が出てしまうのです。
帰国した拉致被害者の胸には、いつも北朝鮮国民党の赤いバッチが光っています。北朝鮮では、外出時にはいつもみんなが身分を示すバッチをつけているそうです。
拉致被害者の皆さんは、なぜ日本でのそのバッチをつけているのでしょう。
北朝鮮に脅され、無理やりつけられているのかもしれません。あるいは、マインドコントロールの結果、自発的につけているのかもしれません。
24年間の習慣によって、帰国した後もただなんとなくつけているのでしょうか。本人たちがそのように抵抗なくバッチをつけているとしたら、それこそマインドコントロールの結果です。
自分を暴力的に拉致し、24年間にもわたって家族からも友人からも引き離した、そんな組織のバッチを普通につけられるものでしょうか。
本来なら、もぎ取り、たたきつけ、踏み潰したくなるのではないでしょうか。でも、彼らはそうはしません。
拉致被害者のみなさんは、家族を人質にとられ、仕方なく指示に従っている部分もあるかもしれません。同時に、自発的に行動してしまっている部分もあるかもしれません。
残念ながら、帰国した拉致被害者のみなさんの心には、おそらく北朝鮮への信頼と依頼心があると思います。
拉致された後、おそらく日本の悪い部分、北朝鮮のすばらし意部分を徹底的に教え込まれたことでしょう。
拉致され、見知らぬ外国に連行され、拉致被害者の心は強い不安と激しい緊張でいっぱいになったことでしょう。しかし、そこで彼らは笑顔でやさしく迎え入れられたと思います。そして、徹底的に教育されます。そんな状況では、日常では考えられないほどスムーズに、新しい考えが頭の中に入ってしまうのです。
そして、拉致被害者の皆さんには、良い生活が与えられます。そのような体験を通して、本来は憎むべき加害者であるはずの北朝鮮に感謝の気持ちさえ持つようになります。北朝鮮を信頼し、感謝します。北朝鮮政府を頼って生きていきます。それしか、生きるすべはないのですから。
ストックホルム症候群といわれますが、人質事件の被害者が犯人と友情で結ばれてしまうことは、めずらしくありません。わずか数日の体験でもそうなのです。今回の被害者は、24年間の長期間に渡って、この生活を強いられてきたのです。
客観的にはもちろん間違っているのですが、拉致被害者の皆さんが北朝鮮への愛着、信頼、依頼心を持ったとしても、無理のないことなのです。
つい先日まで緊張感の会った北朝鮮日本人拉致事件のニュースが、今日(02.10.17)は、涙と感動のあたたかでソフトなニュースになってしまいました。
もちろん、24年ぶりの親子の対面は感動的です。
しかし、それだけではいけないの思うのです。洗脳、マインドコントロールといった側面を忘れてはいけません。
帰国した拉致被害者の皆さんの笑顔に胸をなでおろし、涙に感動しているだけでは、今後、彼らが北朝鮮に好意的な言動を取ったときに、それを理解することができなくなってしまいます。
また、帰国者の言動をみていると、少なくとも結果的には、まるで日朝国交回復を推進ずる親善大使のような役割を果たしてしまっています。おそらく、北朝鮮は大満足でしょう。
マスコミが、涙と感動を伝えるだけでは不十分だと思うのです。
ご本人やご家族、関係者の皆さんが、喜び、感動しているときには、洗脳やマインドコントロールの話をするのは、心を傷つけることになるかもしれません。喜びに水を差すことになるかもしれません。
しかし、コントロールされていると指摘するのは、本人を責めるためではありません。むしろ逆です。
一見、まったく問題がないように見えても、彼らの心はまだ北朝鮮の強い影響下にあります。それを良くわきまえた上で、彼らの言動を理解し、特別な配慮と援助を与えることが必要なのです。
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