心理学総合案内「こころの散歩道」/マインドコントロール研究所 / オウム / 狂言
松本サリン事件被害者の遺族の女子大生(19)が拉致(らち)されたとする事件は、狂言だとわかりました(10.25)。女子大生は「拉致されたというのはうそだった」と話しています。父親のお詫びのコメントも発表されました。
女子大生は、被害者の妹であり、自分が亡くなった兄と同じ年になり、いろいろと考えていたようです。また、大学の勉強のことでも悩んでいたようでした。
とても残念で、悲しい事件ですね。もちろん、オウム相手でも、こんなウソが許されるはずはありません。女子大生の行った行為と年齢に応じた責任をとってもらう必要があります。オウムは、今回の件に限って言えば、被害者です。
しかし、今回は彼女が違法なことをしたわけですが、オウム事件全体の中で見れば、彼女は新たな被害者とも言えるでしょう。ある事件の被害者や家族が、その怒りや悲しみのあまり、今度は自分が加害者になってしまうことは、ときおりあることです。
日本は法治国家ですから、「復讐するは国家にあり」で、被害者だからといって犯人に直接復讐することは許されません。だからこそ、被害者が納得するような裁きが求められるわけですが、裁判は時間がかかることもありますし、「疑わしきは罰せず」という大原則は崩すことができません。
私は、近代社会のこのような方法は正しいと思います。しかし、そうであるならば、被害者への配慮(ケア)を忘れることはできないでしょう。
被害者の家族も含めて、広い意味での「被害者」の心の傷は、浅いものではありません。オウム事件のように加害者からの謝罪もないままではなおさらのことでしょう。
事件の直後にも、もちろん激しい心の動揺がありますが、その心の傷が、何年もたってから再び痛んでくることは、よくあることです。何か別の理由で心が不安定になったのをきっかけに、事件の傷がよみがえることもあるでしょう。
今回の狂言事件について言えば、もっと彼女の心のケアに社会全体が目を向けていれば、防げていた事件かもしれません。
彼女が、今回の事件に関して、償いや反省をするのが必要なのと同時に、彼女も、その家族も、必要なケアや援助が受けられることを願っています。
(今回の事件に限らず、法を犯したものは、罰を受けるのと同時に、援助もまた必要なのだと思っています。)
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