ニュース23 スタッフのみなさまへ
新潟青陵女子短期大学 福祉心理学科 碓井真史
■特集「神戸事件あす精神鑑定期限」 少年「こころ」の変遷(10.1)を、
今、拝見しました。
少年の心の変遷につきましては、たいへんわかりやすくまとめて下さったと
思います。気を引きたいと思って行った行動の結果、かえって友人達が離れ、
ますます孤独感を深めていったとする図式も理解しやすかったと思います。
ただ、少年の深い病理性によって、殺人自体を目的として行われたとする
今回の事件の構造を、どこまで説明できるのかと考えると、不十分だとも思えます。
たしかに、「孤独」は、大きなキーポイントだと思います。
しかし、「病理性」の部分がよくわからなければ、
今回の事件を理解することはできませんし、また将来の「快楽殺人」を防ぐ、
有効な方法も出てこないでしょう。
私たちは、心の病について理解していませんし、ましてや、人格障害とか
行為障害といわれても良くわかりません。
もちろん、DSM4の診断基準を紹介することも必要でしょうが、
もっと基本的な部分からの理解を深める必要を感じます。
そうしないと、行為障害なんていっても、ただのいたずら小僧ではないかとか、
人格障害に対する差別感や恐れが高まるなど、今回の事件を通して、かえって
心の病への誤解や偏見が強まってしまう可能性があります。
それは、人権問題だけではなく、犯罪防止の面から考えても、マイナスだと思います。
羽田沖の事故も、精神障害への理解がもっとあれば、
防げた事故だと思います。また、機長の病気が心身症であるといった
誤った情報によって、心身症の患者さん達が傷つくこともなかったでしょう。
私のホームページにも、犯人の年齢や精神状態などにかかわらず、
殺人者は死刑だといったメールが来ています。
心理学や精神医学が全てではありませんが、
心の病についての一般の理解が深まっていくことを願っています。
今後の番組に期待しております。
補足:番組の中で、ロールシャッハテストの図版が出ていました。
考え方はいろいろあるとは思いますが、
あの図版の実物は不用意に公開しない方が良いというのが、
多くの関係者の意見かと思います。
(それとも、あの程度の短時間ならば問題はないでしょうか。
私は臨床心理が専門ではないので、良くわかりませんが。)
お忙しいところ、長いメールにて失礼いたしました。