〜 「心の戦争」に負けないために 〜 その2
(このページがYAHOOのニューストピックスで紹介されました)
その3.アメリカ炭疽菌問題の犯罪心理10.15
アメリカでは、開戦への準備が着々と進んでいるようです。アメリカは、この心の戦いに勝つことができるのでしょうか。心の戦いに勝つとは、テロリストを裁き、鎮圧することだけではなく、自らの心の中の、不安と恐怖と、そして過剰な復讐心に勝つことです。その結果、自国の安全と、アラブも含めた世界の平和のために貢献できることです。9.18
テロに対して、弱腰な態度は取るべきではないと思います。このような民衆への無差別大量殺戮を許してよいはずがありません。にこにこ笑いながら、話し合いで解決しよう、テロリスト達と交渉しようなどという態度は、テロの再発を招くでしょう。恐怖と不安に負けてはいけません。
恐怖と不安は、相手に対してだけの問題ではありません。自分達の社会の中の問題もあるでしょう。アメリカの株価は確かに大きく下がりましたが、予想された範囲内であり、世界を経済不安に巻き込むほどの下がり方ではありませんでした。
私たちの社会は、テロによって一時的に混乱はしても、社会全体が協力し合い、決して土台が揺るぐようなことはありません。(と宣言し、恐怖と不安に打ち勝っていこう)
こんなひどい目にあえば、だれだって報復を考えるでしょう。しかし、テロの中には、そのような「報復」を計算に入れたものまであります。
たとえば、あるテロリストが、軍事基地に対するひどいテロを行う。その後、すばやく村人達の中に紛れ込む。基地では大きな被害がでて、彼らは恐怖と不安と過剰な復讐のために興奮し、我を忘れた報復に出ようとする。村に入り、犯人を探そうとするが、誰が犯人かはわからない。屈強な男性が犯人とは限らない。テロリストは、服装も年齢も性別もわからないのだ。そして、兵士達は村人達を皆殺しにする。
こんなことが、ベトナムでは起こりました。戦時下の兵士の攻撃とはいえ、民間人へのこんなひどい無差別殺戮はゆるされません。国際世論は離れていき、自国内の反戦運動も盛り上がるでしょう。こうなれば、テロリストの作戦は大成功です。
国際関係にも軍事問題にも疎い私には、最善の方法が何なのかはよくわかりません。ここまで来てしまえば、ある程度の犠牲はやむを得ないのでしょうか。もしそうだとしたら、せめて最小限の犠牲で済むように祈るばかりです。最小限の犠牲で、そしてテロの再発防止という点では最大の効果があがるように、そんな方法はないのでしょうか。
核の使用やじゅうたん爆撃のような無差別大量殺戮は、もちろん論外です。
「その1」で、「弱者としてのテロリスト」という話をしました。客観的にはおそろしい犯罪加害者でも、彼らにしてみれば、自分達こそ被害者です。世界の中で、自分達だけがのけ者にされ、繁栄から落ちこぼれ、搾取されつづけている。追い詰められた者の心理です。
イスラム圏の人々は、イスラエルとのパレスチナ問題でも、湾岸戦争でも、被害者との意識をもっているでしょう。それ以前からの問題として、かつてはもっとも大きな力とすぐれた文化を持っていたイスラムが、いつのまにか西欧社会に追い抜かれ、経済的にも、国際的な地位においても、屈辱的な立場に甘んじていると思っている人々は少なくないようです。(だからといって、過激な考え方をする人たちは、きわめて少数の例外的な人々ですが)
彼らにとって見れば、アメリカに対する戦いは正義の戦いです。テロリスト達は、しぶしぶ徴兵されてやってきた兵士とは訳が違います。非常に高い士気をもつ集団なのです。
今回の攻撃を日本軍による真珠湾攻撃にたとえる人たちが大勢います。確かに、似ていますね。
アラブのなかには、今回のテロのニュースを聞いて、満面の笑みでVサインを出して喜んでいる人たちがいます。その様子は、テレビを通して世界中に流れました。大人も子どもも大喜びでした。その様子を見て、憤慨する人もいれば、嘆く人もいました。
しかし、真珠湾攻撃の後、当時のアメリカはおそらく現在のアメリカと同じように、宣戦布告もない卑怯な不意打ちに怒り、国内の結束が高まっていったことでしょう。そして、私たち日本人は、真珠湾奇襲攻撃の大成功の報を聞き、国をあげて喜んでいたはずです。
もちろん、テロか正規軍の攻撃課の違いはありますし、民間施設を狙ったか、軍事基地を狙ったかの違いはありますけれども。
*
アメリカ人の有力者の中には、パールハーバーの時と同じ目にあわせてやれ、という物騒なことを言う人もいます。それは、じゅうたん爆撃をおこない、核爆弾を落とせということでしょう。
アメリカ人の中には、パールハーバーのときと同じ過ちを犯さないようにと発言している人もいます。そのときの誤りとは、日系アメリカ人への差別的な扱いと、核の使用です。
アメリカが、真に歴史から学んでいてくれることを願います。
今回のテロは犯罪を超え、戦争行為だとアメリカは考えています。この戦いは、善と悪との戦いだといいます。
日本人のジャーナリストが、今回の事件前に、アフガニスタンのタリバン政権のムラワケル外務大臣に質問しています。(遠藤盛章『世界の危険地帯を行く』双葉者2001.7)
Q「国際社会がタリバンを認めないのは、国際テロリストを保護しているからでは?」
A「一切のテロリズムは額されるべきです。しかし同時にテロリズムと聖戦(ジハード)は、区別されなければなりません」
彼らにとっては、おそらく今回の事件もテロではなく、聖戦なのでしょう。そしてアメリカは、善と悪との戦いだといいます。戦争には、大義名分はつきものですが、聖戦 対 善と悪の戦い。 考えるだけで暗澹(あんたん)たる気分になってしまいます。
ベトナム戦争には、これまでにない大量のマスコミが取材のために入り込みました。彼らが伝えたのは、ベトナムの悲惨さでした。正義のはずのアメリカ軍が犯した犯罪的行為でした。その結果、アメリカはベトナムから撤退することになります。
そのため、湾岸戦争では、きびしい報道管制がしかれました。私たちが目にしたものは、「ピンポイント攻撃」というテレビゲームのような画面ばかりでした。
しかし、後になって、ピンポイント攻撃はそれほど上手くいったわけではないことがわかりました。グリーンピースの試算によれば、湾岸戦争で犠牲になった民間人の数は、1万5千人ともいわれています。
中近東のどっかの国のことなんか、名前をしっているだけ。文化も歴史も、どんな人が住んでいるかも知らないよ(私も普通の日本人なので、今まではそんなもんです)。砂漠と石油とラクダぐらいしか、思い浮かばないよ。 もし、そうなら、そんな国にミサイルを打ち込むのに、たいした抵抗を感じないかもしれません。
ニューヨークの惨劇にあれほど感情移入できたのは、そこが私たちにとって馴染み深いところだからでしょう。
中近東の国々にも、人々が住み、子ども達がいます。アフガニスタンには、かつて日本のODAでたてられた病院もあり、親日家の医師も多いそうです。その病院も今は内戦によって破壊されました。
新しい病院は建てられましたが、設備はきわめて不十分です。20年にわたる内戦で、人々は疲れきっています。そこに、さらに爆弾が降り注ぐのでしょうか。
タリバン政権の中にも、強硬派と穏健派はいるそうです。
アフガニスタンを取材した遠藤盛章氏は語ります。
「私は25年前に出会ったアフガン人たちのやさしい目つきを思い出そうとする」
「その1」で、大統領演説をほめました。それは、その演説どおり、心の戦いに打ち勝ち、平和のための努力をして欲しいと願ってのことでした。
その演説で、大統領は「悲しんでいる者のために祈って欲しい」と語っていました。悲しんでいるものとはだれでしょう。アメリカ人のことでしょうか。
もちろん、アメリカ人のために祈りたいと思います。そして、アラブ人のためにも、イスラエル人のためにも。すべての悲しんでいるものたちのために。
湾岸戦争のときの日本は、莫大な資金援助をしたにもかかわらず、そのタイミングが悪かったせいか、「おそすぎる、すくなすぎる」と批判され、正当な評価を受けることができませんでした。そのときの反省から、今回は憲法の範囲内(?)で、自衛隊を海外派遣し、後方支援を行わせようという意見もあります。
もっとも、たとえそうしても、最前線に兵を送っている国から見れば、もしかしたらたいした貢献はしていないと見られてしまうかもしれません。
本当は、世界に誇る平和憲法を持ち、アメリカともアラブともイスラエルとも有効な関係を持つ日本だからこそ、できることがあるはずです。それは、「平和ボケ」し、ニヤニヤと愛想笑いをしながらごまかすのではなく、日本ならではの「平和」による世界貢献です。銃を持ち、最前線に行くわけではないけれど、世界の国々と同じように、問題から逃げず、正面から立ち向かう日本の姿です。
それだけのことを本気ですれば、国としても国民としても痛みを感じることがあるでしょう。しかし、アメリカに全面的に協力すると総理が言っているのならば、その総理を私たちが高い支持率で支えているのならば、痛みも受け取りましょう。
「21世紀の新しい戦争」は、武器対武器ではなく、対話と外交によって解決したという新しい歴史を、私たちの手で作れないのでしょうか。
(これは単なる理想論でしょうか。そうかもしれません。実を言えば、私はそれほど極端な理想家ではなく、今回もある程度も軍事力の行使は仕方がないのかもしれないとも思っています。しかし、それでも理想を忘れてはいけないと思います。理想を振り回すだけではいけませんが、理想を忘れるのはもっといけないことだと思います。
「平和ボケ」とか「理想論」といった批判をおそれず、理想を語りたいと思います。侵略戦争をしかけた日本人として。じゅうたん爆撃と核爆弾の恐ろしさを体験している日本人として。平和憲法を持っている日本人として。)
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悲しみに泣いているすべての人々のために祈ります。
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「こころの散歩道(心理学総合案内)」
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