ロンドン同時多発テロ。心の戦争に負けないために。
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犯罪心理学:心の闇と光

ロンドン同時多発テロの犯罪心理
(テロの心理)

〜 「心の戦争」に負けないために 〜
2005.7.8

被害者のみなさまに哀悼の意を表します。

 

 また、恐ろしいテロ犯罪が起きてしまいました。世界中で膨大な報道がなされています。テロ(テロリズム)は、心理的恐怖心を引き起こすことにより、政治的主張や理想を達成する目的で行われます。
 暴力的行為、破壊的行為がなされますが、強盗のように直接物を取ることを目的にているわけではありません。戦争のように、相手の基地や都市そのものを破壊し、敵国を屈服させようとするものでもありません。
 佐渡龍己氏は、著書『テロリズムとは何か 』(文春新書)の中で、テロリズムとは、人々に恐怖と不安を与えるために行われる「心の戦争」だと述べています。

 テロリズムが、身体や建物に対する武力行為というだけではなく、私たちの心を狙った心理戦争だとするなら、テロリズムと断固戦うためにも、私たちの心の問題も考えたいと思います。

弱者としてのテロリスト心理


 「弱者としての」というのは、テロリストにも同情すべきだという意味ではありません。しかし、テロリズムは、弱者から強者への攻撃です。イギリスやアメリカに対して軍事力や経済力で優位にたつ者がのテロを行うことはありません。
 アルカイダがどんなに巨大なテロ組織だとしても、アメリカやイギリスと真っ向から向かい合い、戦争するような力はありません。

 経済や軍事の力を使ってアメリカを屈服させることなど到底できない者です。

 そのような弱者の方法がテロです。彼らの方法は、物を壊し、人を殺すことで相手をを征服するのではなく、相手を心理的に追い詰めようとしているのです。

テロの恐怖と不安そして怒り

 戦争の場合は、基本的には、自国の軍服を着て、自国の旗を掲げ戦闘を行います。しかし、テロは、誰がいつ起こすのかまったくわかりません。誰がいつ被害を受けるのか、予想は困難です。
 これは、場合によっては戦争以上の、恐怖と不安を引き起こします。そして、戦争被害以上の、激しい怒りが引き起こされることもあるでしょう。

 テロは場所を選ばず、対象を選ばず、終わりもありません。その恐怖と不安は人々の心を締め付けます。その結果、時にはテロリスト達の要求をのむことにもなってしまします。
そうなれば、テロリスト達の勝ちです。
 一方、テロの被害を受けた人々が、怒りに我を忘れてしまうこともあります。世界の指示が十分いえられないまま、巨大な軍事力や経済力を駆使して、戦争行為を始めることもあります。
 そんなことになれば、国際世論が離れます。被害を受けた国が、世界から孤立します。
そうなっても、テロリストの勝ちです。
彼らは、ことさら相手を怒らせる行為をします。相手国の反撃でこちら側の国民に被害が出たとしても、それでも、相手国が世界から激しい非難を受け、世界の中で影響力が弱くなっていくとしたら、それでよいのです。
 あるいは、テロにおびえ、怒り、テロリスト達と同じ民族、宗教の人々への差別を激しくするかもしれません。
そんなことをする国を世界は非難するかもしれません。あるいは、もともとはテロ行為など支持していなかった同民族、同宗教の人々が、テロリスト側に荷担するようになってしまうかもしれません。

テロに勝つ。心の戦争に勝つ

 ですから、、テロに勝つとは、犯人側に報復したり、逮捕したりすることだけではなく(逮捕はもちろん大切なのですが)、恐怖と不安と行き過ぎた復讐心に勝つことなのです。
 アメリカ同時多発テロが発生したとき、世界はもちろんテロリストを非難し、アメリカに同情し、応援しました。しかし、アメリカの怒りが激しく燃え上がるにしたがい、世界からは、アメリカにも悪い部分があったのではないかという声も聞こえ始めました。
 軍事的にも経済的にも、一人勝ちのアメリカ。グローバル化の名のもとにアメリカ流を押し付けようとしちえるアメリカ。絶対的強者アメリカ。アメリカだって、世界の国々に悪いことをしてきたぞ!という批判です。
もちろんこの批判にも一理あるわけですが、人は周囲からの共感が得られないとき、ますます悲しみと怒りが燃え上がり、孤立化し、過激な行動に走りがちです。
 もちろん、国家の動きは高度に政治的に計算された動きをするのですが、同時に、一般国民の支持がなければ、政策を実行できません。
 今から思えば、世界はもっとアメリカ国民に同情しても良かったのではないかと思えます。
当事国の国民が、恐怖に負けないように、怒りに負けないように、世界の人々が支えていくことが、私達のテロへの戦いになるでしょう。
 さらに、本当の意味で、テロに勝つとは、テロリスト側の被害者意識をなだめ、彼らの心を癒すことではないでしょうか。
 アラブの人々は、大金持ちでお城のような家に住み欧米で高い教育を受けているような人々の中にも、希望を持ちにくい人々がいるといいます。
 世界は、気局私達を尊敬していないのではないか、石油がなくなれば自分達は見捨てられるのではないか、自分達のイスラム文化を受け入れてはくれないのではないか。彼らは不安をもち、あせり、j悲しみと怒りをもっています。
 今、サミットでイギリスに集まっている先進国の首脳たちは言います。自分達は、世界のために集まっている。世界の環境を守り、世界の平和を守り、世界中の貧困を解決するために集まっていると。
 国と民族と宗教を越え、本当に世界のために活動できること、その成果が上がり、その思いが世界に届くこと、これこそが、世界がテロリズムに打ち勝つことなのだと思います。
 世界の複雑な問題も、その底には、素朴な心の問題があるでしょう。

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『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』主婦の友社
『なぜ、少年は犯罪に走ったのか』(KKベストセラーズ)
『少女はなぜ逃げなかったか:続出する特異犯罪の心理学
(小学館文庫)


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