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パラリンピックと福祉

「競技者として認めて」「福祉のお世話」「人類の福祉」

 

競技者として認めて

 パラリンピックを「福祉」ではなく、純粋な競技大会と認めてほしいという声があります。朝日新聞(1998.3.2)は、「見る側になお「福祉」意識」と題して、この問題を取り上げました。

 日本ではまだ一般に、障害者を弱者として扱っています。そのなかで、パラリンピックの関係者は、努力し続けてきたのでしょう。

 今回、多くの報道がなされる中で、この努力は少しずつ報われているように思います。私は、パラリンピックをスポーツ競技として楽しんで観戦しています。

 ところで、パラリンピックの関係者は、「福祉」を決して否定的な意味でとらえているのではないと思いますが、一般的には、まだ「福祉」に関するマイナスのイメージがあることも事実でしょう。

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パラリンピックは、身体に障害のある選手達が「世界最高水準の技術とスピードを競い合う国際競技大会」です。福祉の大会ではなく、スポーツ競技の大会というわけです。一方、一見同じように見える「スペシャルオリンピックス」(知的障害者らによるスポーツ大会)は、参加者みんなにメダルの可能性がでるように工夫されています。


 
福祉

 福祉とは、「人類の福祉の向上」などと使われるときには、「幸福」と同じような意味で使われます。「社会福祉」というと、国や地方公共団体の福祉に関する法律や制度、さまざまな社会福祉活動などを意味するようです。


 
「福祉のお世話」

 人が幸福を求めることは良いことでも、「福祉のお世話」になることは、とても恥ずかしい、悪いことだとするイメージも根深くあるでしょう。福祉の対象は、貧しく、弱く、ダメな人間だと感じてしまうのです。


 
社会サービス

 公立図書館に行って、本を無料で借りたり、わからないことを司書の方にきくことは、恥ずかしいことでしょうか。本も買えない貧乏人、バカだから司書に質問する、そんなふうに考える人はいないでしょう。

 私は、社会福祉も、図書館も、同じ「社会サービス」だと思います。


 
福祉とセルフエスティーム(自尊心)

 福祉サービスを受けることで、自尊心が低下し、やる気と生きがいをなくしてしまうとしたら、いったい何のための社会福祉制度なのか分かりません。

 あるおばあさんは、初めて福祉事務所に行き、自尊心を傷つけられ、「もう二度と死んでも行くものか」と言っていました。

 もちろん、ほとんどの福祉現場職員の方は、利用者のことを思い、温かく接して下さっていると思います。

 本当の福祉(幸福)につながる社会福祉が実現できるように、みんなで一緒に努力していきたいと思っています。

(そのために心理学者がするべき仕事も、たくさんあるでしょう。心理学の目的も、人々の幸福です。)


 
日本・アメリカ・ヨーロッパ

 ヨーロッパでは社会福祉を社会サービスの一環としてとらえている人が多いようです。一方、アメリカでは社会福祉という言葉を弱者を援助するものとして考える人が多いようです。社会サービスという言葉を使えば、そんなことはないようです。アメリカには、ADA(障害を持つアメリカ国民法)というすばらしい法律もありますし。
(日米欧の話は、人から聞いた話なので、実際にそうなのかは未確認)

 さて、日本ではどうでしょう。日本で言う社会福祉は、建前上はヨーロッパ的な意味だと思います。しかし実際は、ごく一般的な人が使うときには、アメリカ的な意味で使っていると思います。

 福祉の関係者には、大変申し訳ないのですが、日本ではやはり「福祉」というと、どうしても否定的なイメージがついてまわるように思います。

 しかし、近年、ボランティア人口が爆発的に増え、大学の福祉学科への入学者もどんどん増えています。近い将来、悪い意味での「福祉のお世話になる」といった言葉が死語になることを、期待し、願っています。

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「スペシャルオリンピックス:知的障害者の社会的自立を目指して」

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