嫁姑問題。嫁姑の心理。癒しのための心理学、心療内科
「心理学 総合案内 こころの散歩道/「心療内科医・涼子」から学ぶ心理学/ 6、嫁姑

嫁 vs 姑 心理戦争
嫁姑の心理、心身症、家族

第6回 97.11.17

「私を認めて」「私も自由になりたかった」

「急ぐことないのよ」「取り返せますよ」


ゲスト・クライエント:羽野晶紀


心の問題
:心身症・嫁、姑

用語解説

ストレス、ストレッサー、ストレス発散、心因性、心身症


あらすじ

 心療内科婦長の直子(萬田久子)のいとこ藤川みなみ(羽野晶紀)が腹痛で、涼子(室井滋)達の病院に運ばれてきた。みなみは、格式高い藤川家のとしての藤川藍子(水野久美)に仕えている。だが、そこでたまったストレスのために十二脂腸潰瘍になってしまったのだ。

 涼子はみなみに入院を勧めるが、嫁である自分を責め、姑であるお義母さんが怒るのは私のせいだといって、入院しようとはしない。だが、藍子が息子の達郎(山口粧 太)に離婚を勧めているのを立ち聞きしたみなみは、吐血して、病院にかつぎこまれる。

 みなみへのカウンセリングが始まった。みなみは、心の奥底にしまい込んでいた姑への怒りと憎しみの感情をぶちまけることができた。壁に向かって力いっぱい粘土を投げつけながら叫ぶ。「バカヤロー!」「鬼ババア!」 みなみは、きちんと姑と向き合う決心をする。

 みなみは、病院を抜け出し、母子二人の誕生会に乗り込み、本音をぶつける。「私、別居したい!」 怒りをあらわにした藍子は、なぜか右手が動かなくなり、激しい頭痛で倒れ、涼子達の病院に救急車で運ばれる。

 藍子は、一過性脳虚血発作だった。嫁と姑は、互いにストレスを与え合い、二人とも病気になってしまったのだ。離婚を決意するみなみ。しかし涼子は、危険を承知で、二人を合わせてのカウンセリングを行うことを決めた。

 涼子に促され、姑の藍子の前で怒りの感情を表すみなみ。そして、姑の藍子も怒りの感情を出し始める。嫁への怒りの感情を。そして、亡くなった自分の姑への怒りの感情を。藍子は、長年、この感情をため込んできたのだ。「私も自由になりたかった!」「あの人を殴ったら自由になれるって、ずっと思ってた。死んだ私の姑を!」 藍子は叫び、泣き崩れるのだった。

 藍子は、しばらく入院し、治療を続けることになった。みなみも離婚のことはゆっくりと考えることにした。みなみは言う。「お義母さんの見えなかったところが少しわかった。」 みなみと姑の藍子は、以前のような冷たい関係ではなく、互いに文句を言いながらも、温かい関係ができ始めたように見えるのだった。


この場面・このセリフ

「がんばって、何でもやるぞって。」

 がんばることはとても大切です。でも、自分を追いつめてしまうようながんばり方は、こころの病につながります。

「根気よく、ちゃんと治療を続けようね。」

 手術で治る病気もありますが、心の病は、そうはいきません。心身症は、身体の治療をしても、心が治らなければすぐに再発します。

姑に言いたいことが言えない嫁

 言いたいことを言えないどころか、他人には、姑のことをほめています。本当の気持ちを押さえ込んでいることが、心の病のもとになります。

 それでも、その方が人間関係は上手くいくかというと、そうとは限りません。この場面を見ていて、薬師丸ひろ子主演のフジテレビのドラマ「ミセスシンデレラ」(フジテレビ、97.4〜)を思い出しました。

 このドラマでも、嫁は良い嫁を演じ続けます。心の病にはなりませんでしたが、心は家族から離れ、悩むことになります。そして、ドラマの終わり近くになって、互いに本当の気持ちが出せるようになったとき、二人の関係も改善されていきます。

妻の側に立てない夫

 自分の母と妻の間に問題が生じていると気づいているのに何もできず、妻をかばうことができない夫。嫁、姑問題はこうしてこじれていきます。

姑と嫁との戦い

 息子を愛しているなら、どうしてその大切な息子のお嫁さんを大切にできないのか。姑嫁の争いは、深層心理学的には、一人の男をめぐる二人の女の争いなのです。それに加えて母子の病的な癒着とか、マザーコンプレックスとか、日本的なイエ制度がからんできます。

 (ところで、娘が彼を連れてくると、たいていの父親はその男を嫌いますね。上の問題は女だけの問題ではありません。欧米では舅と婿の争いが目立つようです。)

「もっと温かい目で見てあげてもいいんじゃないんですか。」

 看護婦長が姑の藍子に言うセリフ。でも、藍子は不機嫌になるだけです。こんなふうに、正面から批判されても、人間はなかなか自分の行動を改められません。

義務的愛情

 お義母さん(姑)を愛そうと嫁が努力することは間違っていないと思います。しかし、義務として、愛さなければならないと自分を責めても、愛することはできません。それどころか、自分の心が病んでしまいます。

「向き合うための訓練よ」

 きちんと自己主張したり、自分の思いを適切に表現できることが、心の健康とより良い人間関係づくりのために必要です。

「チーム内で考えましょう」

 担当の医者が治療を行い、他の人はただの手助けだというのは、古い考えです。医療スタッフみんなが一つの医療チームとして、治療を行います。

「結論を急ぐことはないでしょ。」

 みなさんにも、ぜひともおすすめします。心が弱っているとき、冷静ではないときには、大切な決断(離婚とか退職などの決断)は避けましょう。あとでゆっくり考えても間に合います。

ウサギの少女 ちえこ

 涼子にとってのこの少女の存在が、だんだん小さくなってきました。ドラマの後半で、この少女の話題が出るでしょうか。その時、また考えましょう。

「私も自由になりたかった!」

 嫁いびりをしていた藍子自信が、実は亡くなった自分の姑に苦しめられていました。嫁として姑にいじめられてきた、その苦しみと怒りと憎しみの感情を、何十年ものあいだ心の底にしまい込んできたのです。それが、彼女の頭痛や右手のしびれの原因となり、嫁いびりの原因ともなっていたのです。

被害者と加害者

 心の問題では、被害者と加害者が入り組んでいることがあります。ドラマの最初では、姑の藍子が、悪役の加害者でした。しかし、実は藍子自身が、同じ嫁姑問題の被害者であり、心を病み、治療と援助を必要としていた人だったのです。

 一見、強そうな加害者側の人間の心に問題があることはよくあります。もちろん、まず、第一の被害者を守らねばなりません。しかし、その次には、加害者の心のいやしも必要なのです。

繰り返される心の病と不適切な行動

 藍子は、自分と姑との関係を、そっくりそのまま自分と嫁との間に再現しました。これも良くあることです。酒乱の父親の子供が、同じように酒を飲み家族に乱暴する。親に自由を奪われてきた人が、今度は自分の子供の自由を奪う。親に虐待されてきた人が、子供を虐待する。それを望んでいないのに、そうしてしまうのです。

 今回のドラマのように、解決されていな怒りや憎しみが子供や嫁に向かうこともあるでしょう。あるいは、良い親のモデルがいなかったために、子供にどう接したらよいのかわからないときもあります。また、自分だけはあんな親には絶対になっては行けないと自分を追いつめすぎたために、その緊張の糸が切れたときに、暴力を振るってしまうこともあります。

「わたし、お義母さんの見えなかったところが、少しわかった」

 その人が体験してきた辛い出来事、その人の悲しみや苦しみ、その人の心がわかると、その人を受け入れ、援助し、協力し合おうと思えます。そう思えれば、人間関係が改善されます。そのためには、豊かなコミュニケーションが必要です。人の心の理解には、こうして心理学を学ぶのも、ほんの少しは役立つはずです。

「どう行動するかは、あなた自身で決めてね」

 カウンセリングは人生相談や占いではありません。誰と結婚したらよいか、離婚した方がよいか、どちらの方向へ行ったらよいか。それは自分自身で決めなくてはなりません。カウンセラーは、あなたが自律した生き方ができるように援助するのです。

「とりかえせますよ」

 もっと早くすれば良かった。もっと早く気づいていれば良かった。遅すぎた。私も、こんなセリフは良くききます。でも、大丈夫。あなたの人生はとりかえせます。私はいつもこんなふうに言います。

「それが良いことなら、遅すぎることはありません。今、気づいたこと、今、行動しようとしていること、それが良いことなら、少し遅かったとしても、やっぱり良いことなのです。遅すぎるなんてことはありません。」


ドラマにちょっと一言

 いやあ、今日のドラマはおもしろかった。第一話以来のいいできです。楽しめました。ゲストのしっかりした演技力のせいか、脚本のせいか、レギュラー陣の息がぴったりと合ってきたせいか、よくわかりませんが、これからのドラマの展開が楽しみです。


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DVD:『心療内科医・涼子』DVD 1〜4(全話収録)
MUSIC:『心療内科医・涼子』の曲 (主題歌など)

   

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