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 質問に答えて

間違ったときの鑑定人の責任は?


メールでいただいた質問

 質問なのですが、以前、何かの本で獄中で心理学を学んだ快楽殺人者が、心理テストを覚えてしまい、自分が常人であるように装ったケースが報告されていました。これにより精神障害をかかえたまま、市民生活に戻り犯罪を重ねていったというような話だったと思います。

 このようなケースに限らず、鑑定の誤謬により刑が重くなったり軽くなったりした場合、さらには犯罪を再発した場合、鑑定した医師には何か罰則があるのでしょうか?あるいは、精神鑑定時に、被験者にある種の情が湧いてしまい、事実とは異なる鑑定を行い、刑を軽くした場合などは、どのように処理されるのでしょうか?


回答

常人であるように装えるか

 本格的な精神鑑定を受けるような場合は、「正常」であれば重罪を受けることになるので、上のような例はちょっと考えられないと思います。

むしろ問題は、異常のふりをして罰を免れようとする人を見抜けるかでしょう。専門家に言わせると、ほとんど不可能ということです。

 一般的な精神障害の患者さんの場合には、正常なふりをして早く退院しようとすることがあるかもしれません。ふつう、医師は患者の言うことを信用しますので、だませるかもしれません。

 そして、もし医師をだませるほどに正常なふりをするだけの社会性があるならば、その人は退院しても大丈夫だと思います。
(実は、私自身が同じ質問を精神科の医師にしたときの回答が、これです。)

 もちろん、犯罪を犯すために退院するのでは困りますが、普通は考えられません。鑑定の場合には、そもそも容疑者の言葉を疑いますので、また事情が違うと思います。

鑑定人の間違いに対する罰則

 福島章氏の著書などを読むと、ある鑑定人が鑑定した後の再鑑定の事例が登場します。そして、前と異なる鑑定結果が出て、その方が裁判所に採用されます。その場合でも、前の鑑定人が罰せられることはありません。

 一般的に、ある専門家が、自分のベストを尽くした結果が失敗であっても、それで罰せられることはないでしょう。医師の手術も、裁判官の判決も、気象庁の天気予報も、同じだと思います。

ただ、重大な過失があったときには、医師も罰せられるわけですが、他の場合には、聞いたことがありません。

 本来的には、専門家は、良心に従って研鑽を積み、最前をす尽くすことになっていますし、規則や罰則でしばらない方が、良い研究や判断ができると思います。しかし、あまりひどい手抜きの場合には、何かの罰則があっても良いのかもしれません。

 ただし、故意に事実を曲げ、ウソをついたときには、もちろん罪になるでしょう。鑑定は、法廷で宣誓をした上で行っています。(どの程度の罪なのかは分かりません。すいません、法律に明るい方、どなたか教えて下さい。)

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