心理学総合案内・こころの散歩道/犯罪心理学/少年犯罪/17歳 新宿ビデオ店爆破事件(新潟青陵大学・碓井真史)・『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』 主婦の友社
2000.12.5
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犯罪心理学全般「心の闇と光」
2000.12.4.午後8時20分ごろ、新宿歌舞伎町のビデオ店で、高校2年生17歳の少年が仕掛けた爆発物が爆発した。、壁や天井がはがれ落ちたが、けが人はなかった。少年は散弾銃も持っており、撃つつもりだったと供述している。
少年は犯行後すぐに交番に出頭し、「わたしがやりました」と述べる。少年は興奮した様子だった。
調べによると、少年の家庭は、祖父母、両親、弟と少年の6人家族。少年は非行歴もなくまじめな優等生でした。学校の テストではいつも100点に近い点数を取っていました。中学のころから、「三国志」など難しい本も読んでいたといいます。しかし、最近のテストでは少年としてはやや低い点数しか取れませんでした。
持っていた散弾銃は祖父のものを持ちだしたものでした。友人らによると、少年はガンマニアで、武器や軍事に関する関心も高かったようです。小学生のころの将来の夢は「テロリスト」であったと、一部のマスコミは報道しています。
少年は、危険物取扱者の資格も持っており、爆発物に関する専門的な知識も持っていました。2年前の中学生の時に、爆発物でいたずらをしているところを見つかり、怒られています。このときは、反省している様子だったそうです。
しかし、少年の爆発物に関する興味は消えませんでした。資格を取った後も、さらに専門書やインターネットを通して、爆発物の知識を身に付けていきました。
少年が今回作成した爆発物は、マグカップに火薬を詰めたものですが、殺傷能力を高めるために、なかにカッターナイフの刃、クギ、ボルトなどが埋め込まれていました。警察によると、この爆発物の高い殺傷能力を持っているものでした。
現在のところ、反省の言葉は聞かれないようです。それどころか、本当は銃も撃ちたかったと供述しています。「人をバラバラに壊して骨や内臓を見たかった」「誰でもよかった」と供述しています。2年ほど前から、こんな考えを持ち始めたようです。少年は、「人間は裏ではとんでもないことを考えている」と人間不信を表す供述もしています。自分の行為が法に触れることは知っているが、その法自体が疑わしいとも言っています。
優等生がささいな挫折に負けてしまい、自暴自棄となって犯罪を犯したとも考えられますが、殺人の思いを2年前から持っていたとすると、問題の根はもっと深いかもしれません。
一般の傷害や殺人は、金目当てとか、うらみを晴らすためといった目的がありますが、今回の事件はいまのところそのような動機は語られていません。以前なら、動機なき犯罪と言われるものです。少年にとっては、犯罪自体が目的です。爆弾を爆発させ、銃を撃ち、物を壊して、人を傷つけること自体が目的だったわけです。
快楽殺人(人を殺すことに快感を感じる殺人)を思わせる供述もありますが、爆弾を爆発させたことである程度の満足を得て交番に出頭しているところから、快楽殺人者のタイプとは考えにくいでしょう。
「人を壊す」といった表現にあるような、人間をまるで物のように見る考えは、最近の少年犯罪者に良く見られます。極端に共感性の低いことの表れでしょう。普通は、何かの理由で人を傷つける場合、やはり良心の呵責や後味の悪さを感じるものです。凶悪殺人犯でも、人を殺した後は、犠牲者の幽霊がまくら元に表れると感じるほどです。
このような共感性、同情心の低さは、人格障害のような何らかの心の歪み(病)の表れであり、単にしつけや教育の問題だけでは語ることのできないことでしょう。家庭裁判所や、少年更生施設では、少年を罰するだけではなく、自分がどんなに悪いことをしたか、被害者がどれほど傷ついたかをわからせるように、懸命の努力がなされているのです。
武器は、人を殺し、物を壊す道具ですが、少年にとってはおそらく「強さの象徴」だったのでしょう。今回も、銃で実際に人を撃ってはいません。しかし、銃を持ち、爆弾をしかけた彼は、歪んだ優越感、歪んだ自信を持つことができたのでしょう。
犯罪者の多くは、劣等感の強い人たちです。劣等感をカバーしようとして、強くなりたいと思います。劣等感が強いほど、強力な武器を持ちたがります。今回の少年が、どのような心だったのかはまだわかりませんが、爆弾と猟銃を持たなければならないほど強い劣等感に支配されていたのでしょうか。
少年は、爆発物を愛していました。彼にとって爆弾は、単なる道具ではなく、自分を慰め、強くしてくれる「友だち」のようなものだったのかもしれません。
私たちの現代社会は、劣等生が劣等感を持つだけではなく、優等生まで劣等感を持つ社会になってしまいました。もしかしたら、優等生の劣等感の方が根が深いかもしれません。心に大きな問題を抱え、多少の問題行動が表れたとしても、成績が良いと大人たちが問題に振り向かないときがあります。それが、将来の大事件を生む可能性があるのに。
攻撃心に関する心理学の考え方で、「欲求不満手がかり仮説」と呼ばれるものがあります。物事が上手く行かず、欲求不満が高まると、攻撃心がわいてくる。その時、たまたま近くに武器になるようなものがあると、それが攻撃をうむきっかけ(手がかり)になるという考えです。
カッとなった少年が、もし何も道具がなければ怒鳴るだけですんでいたのが、たまたま近くに金属バットがあったために傷害事件を起こしてしまうような場合です。
今回の事件でも、少年にとっては爆発物も銃も身近にありました。これがなければ、こんな大事件は起きなかったかもしれません。
今回の事件は、もし改正少年法が施行された後(2000.4.1以降)だったら起きなかったでしょうか。たぶん、そんなことはなかったでしょう。無差別に人を傷つけようとする少年は、自分の利益のために犯罪を犯すわけではありません。この少年もすぐに捕まっています。
人がどうなっても良いのと同様に、自分もどうなっても良いと思ってしまうのです。そんな人にとって、自分が少年院に入るか刑務所に入るか、2年入るか、3年入るかなど、関係ないでしょう。
少年たちは、現行少年法を逆手にとって犯罪を犯しているという人もいますが、そうだとしたら改正少年法が施行される前には、今のうちにというわけで少年犯罪が増えるでしょうか。ちなみに、こんなに報道された少年法問題ですが、私の身近にいる中学生達は、少年法改正問題をほとんど理解していませんでした。
さて、凶悪犯罪を犯す人が、もし脳や心の病を持っていたとしたら、犯行前に治療できていたら犯罪は防げるでしょう。
脳や心に問題を抱えていても、ストレスの少ない生活をしていれば、大きな問題を起こさず、大人になるにしたがって、しだいに行動も落ち着いてきたかもしれません。
何であれ、自分を愛し、自分の人生を大事にすることができていれば、こんなばかな犯罪を起こさずにもすんだはずなのです。
少年犯罪者は、ほんの一瞬の快楽のために、人生を台無しにするような重罪を犯してしまいます。
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ね、少年のみなさん。あなたの人生はそれほど安っぽいものではないはずです。あなたの人生には、もっともっと素晴らしいものが待っているはずなのですから。
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