心理学 総合案内 [こころの散歩道]/ 犯罪心理学 /少年犯罪の心理 /長崎小6女児殺害事件 (新潟青陵大学・碓井真史)
長崎小6女児殺害事件の犯罪心理(2)
ネット書き込みトラブルの心理 6.2
2004.6.1第一報を聞いて
6月1日午後、長崎県佐世保の小学校で、小6の女子がカッターナイフで切られ、死亡。同級生の別の女児が加害者と見られ、身柄が確保された。被害者の父は、毎日新聞長崎支局長。
びっくりするような事件が起こると、みなさんは、なぜ? と考えます。なぜ、こんな事件が。いったい犯人はどんな人間か。悪いのは、親か、教育か、社会か、それともこの犯人は心の病か、などなど。
人は不安になうると、原因を探りたくなります。それなりの理由が欲しくなります。マスコミ報道も、なにかのストーリーを作ろうとします。たとえば、いじめ自殺とか、お受験殺人といったぐあいです。
犯人がわからないときには、もちろん犯人探しが始まります。みんなが、シャーロックホームズや、FBIの心理分析官になったようです。
心理学者がよばれることもよくあります。
でも実は、真相は単純にはわかりません。簡単にストーリーを作りあげてしまうことが、かえって真実をゆがめてしまうこともあるでしょう。
☆☆☆
悲しい事件の発生です。
少年事件はいつも悲しい。
私にも、小5の娘がいます。
娘を突然殺された親の気持ちは、茫然自失か。
全身が引き裂かれそうな、悲しみと怒りの、感情のあらしが吹き荒れているか。
父親は毎日新聞佐世保支局長。
自分の心に鞭打ち、
仕事をしなければと思っているのだろうか……。
加害者の少女は何を思っているのか。
加害者の親は今何を思っているのか。
小学校の教職員、子ども達、保護者、地域の人々。
戸惑っている先生達の様子や
ニュースを聞いて泣き出す保護者の様子が、
ニュースで伝わってくる。
子ども達の様子は……。
なぜこんな犯罪が起きたのか。
加害者はどんな子どもなのか。
悪いのは誰だ。親か。教師か。学校か。社会か。
そういう議論もいけれど、
もし、私がこの学校のスクールカウンセラーだったら、
その死を悼み、ご遺族を守ることは言うまでもない。
そして今は、子ども達を守りたい。
子どもを守るために、先生と学校を守りたい。
子どもを守るために、親達を守りたい。
どれほどの混乱と、悲しみが、彼らを襲っていることか。
きっと今ごろ、
ワイドショーのヘリコプターが、
耳の割れるような大きな音をだして、町の上を飛んでいる。
全国のマスコミが集まってくる。
カメラが、 マイクが、集まってくる。
事件については、まだ何もわかりっていいない。
☆☆☆
被害者も、加害者も、小学6年生の女の子。同級生。凶器はカッターナイフ。傷跡は多数。すぐに救急車が来たが、すでに死亡していた。
今わかっていることは、このぐらいです。
さて、近頃の子どもは恐ろしい、でしょうか。小学生を刑事罰には問えない現在の少年法を、もっと厳しくしなくてはならないでしょうか。
動機も何もわかりませんが、加害者は、逃げる気はなかったようです。すぐに身柄を確保されています。少年法で守られているとわかっていての犯行でしょうか。その知識の有無はともかく、そんなことを計算できるほどの冷静さがあれば、人殺しなどするわけがありません。
今回の事件を別にして、一般論で言えば、少年全体の犯罪が増え、凶悪化しているということはありません。
しかし、その一方、子ども達に「命の実感」がないと思えるような考察や報道は、しばしば見られます。また、こどもの奇妙な残酷さを示す事例も、多く報告されています。
もちろん昔から、子どもは乱暴で、残酷なものですが、ガキ大将のおおらかな乱暴や、大人に食って掛かるような乱暴さとは違う、もっと内にこもり、弱者に向かう、乱暴さ、残酷さです。
子どもの描く絵がかわってしまったと語るカウンセラーもいます。(「殺意をえがく子ども達」学陽書房)
凶悪犯罪自体は減っても、優等生のいきなり型犯罪が、現代の特徴です。
こういうお話をするのは、子ども達を責めるためではありません。子ども達は傷ついています。(上で紹介した本の著者三沢直子さんも、本を書いた理由を子ども達の代弁者になるためにと述べています。)
こどもは怖い、恐ろしいと、またこの事件をきっかけに考えてしまうことは、子どもにとっても、社会全体にとっても、逆効果にしかなりません。
子どもを守って育てれば、子どもは成長し、社会を守る人間になるでしょう。
この事件に関して言えば、大切なのは、まず被害者(ご遺族)の保護、そして同じ小学校の子ども達の保護です。そのための、学校への支援、地域社会への支援です。
*
学区の大人のみなさん。
今、どれほどの混乱が起きているでしょうか。でも、こんなときこそ、大人の強さと優しさが求められています。子ども達を、どうぞ愛で包んでください。
怒り、混乱、不安で、子ども達の心をかき乱すのではなく、子どもの心が落ち着き、優しい気持ちになれるように。
何もわからないといい、行き過ぎた報道を危惧することを言いながら、なぜウェブマスターは語るのか。疑問をいただくこともあります。
今、何もわからないまま、それでも膨大な報道がなされようとしています。私が黙っているスペースに、誰かが入り込んで、不用意に子どもを責めたり、関係者を責める人々がいることでしょう。大声で怒鳴る人がいることでしょう。
もしかしたら、責任追及が必要な部分もあるかもしれません。しかし、今大切なことは何なのか、よくわからないなりに、それでも語る必要はあると、私は感じています。
明日、6月2日(水)の朝、フジテレビの「とくダネ!」にコメンテーターとして出演予定です。
以前この番組には、長崎の中学生による幼児殺人事件発生のときに出演しました。このとき感じましたが、司会の小倉さんのコメントは、他のもっと堅い番組も含めて、私が聞いた中で、最も良識のあるコメントでした。(表現はやわかですが)
収録後に、番組スタッフの方とお話しましたが、番組開始当初から「脱ワイドショー」ということを目指してきたそうです。
起きてしまった事件を通して、私たちはこれから何を学ぼうとしているのでしょうか。
2004.6.1
少年犯罪や非行の心理につては、当サイト内の少年犯罪の心理、犯罪全般については犯罪心理学:心の闇と光をお読みいただければ、幸いです。このサイト全体「こころの散歩道」は、人の心の問題を広く扱っています。
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