Sさんからのメール 「刺激的?な市民より」(気楽な学者様へ2)
うすい様
あなたからのメールを頂きあらためて私の理解が正しかった事を確認しました。
社会秩序維持の為には教育や道徳観の徹底も肝要な事は議論するまでもない
ですが、それ以上に法や治安の整備が重要だとゆう事実認識が全くないよう
ですね。
人類はそれこそ長い長い時間をかけて先達から学び試行錯誤しながらそれぞ
れの国において「モラル」と「罪と応分の罰」のバランス社会をつくりあげ
てきたのです。決して教育や道徳だけが万引きを防いだのではないのです。
朝の埼京線(東京)が痴漢の多発電車として有名で長年当局も手をこまねい
ていましたが電車に大勢の私服刑事が乗りこみ、いっせいに摘発した事が報
道された途端に被害は激減しました。
つまらん例ですが、罪に応じた罰が犯罪を大きく減らした現実がここにあり
ます。
愉快犯やその場の快楽だけの為に多くの人をあやめた加害者に対しては、加
害者の年齢にかかわらず最も重い刑罰が与えられるべきです。
犯行時未成年だった永山某に最近死刑が執行されましたが、無垢の人を4人
も殺したのだからそれも当然です。
永山は獄中で自由に著作も結婚もしており、あなたの大好きな加害者の権利
も十分に行使しました。そして法に基づいた死刑の義務を果たしました。
15才の男も小6の男の子と小2の女の子をかつてない残虐な方法で殺害し
たのだから同じ様に死をもって罪を償うべきです。
現行の法ではそれはできない事をつくづく残念に思います。
もちろん我が国は法治国家ですから法を無視するなんて私には考えも及びま
せん。
ところで研究に真摯なあなたの主張する「加害者への教育的人道的な配慮が
犯罪を抑止する」理論?の根拠を客観的な数字で示してくれませんか?。
気楽な学者ではないそうですから当然、主張を裏付けるデータをきちんと調
査し数字で把握したうえで主張していますよね。
15才の男に関しても気楽ではないあなたは現地に足を運び、可能な限り事
実関係を調査した上で意見発表されていますよね。何日位神戸に滞在し調査
したのかも教えてくれませんか?。
私は歴史と客観的な事実、特にデータに弱いものですから・・・・。
今度自民党から少年法の罰則強化への改正に取り組む方針が出されましたが、
一日も早い改正がされる事を期待しております。
あなたとは違って私は声を出して発言する場がないので、政治の力で法律が
改正され社会から少しでも犯罪が減少する事を願っております。
死刑存続を支持する世論が65%以上もありますから、この方向でまとまっ
て欲しいものです。
これからも犯罪増加、社会不安定化に一層ご尽力ください。
刺激的な一市民より
筆者からの返信
S 様
メールありがとうございます。
返信が遅れまして失礼しました。
At 2:23 AM -0700 97.9.5, s wrote:
> 社会秩序維持の為には教育や道徳観の徹底も肝要な事は議論するまでもない
> ですが、それ以上に法や治安の整備が重要だとゆう事実認識が全くないよう
> ですね。
> 決して教育や道徳だけが万引きを防いだのではないのです。
社会秩序維持のためには、法律や刑罰と、そして教育や道徳観の両方が
必要だと考える点で、二人の意見は一致していると思います。
どちらがどの程度重要かということになると、議論になるのでしょうが。
たしかに、「決して教育や道徳だけが万引きを防いだのではない」と思います。
同感です。
そして同時に、「決して法や刑罰だけが万引きを防いだのではない」とも思います。
> 朝の埼京線(東京)が痴漢の多発電車として有名で長年当局も手をこまねい
> ていましたが電車に大勢の私服刑事が乗りこみ、いっせいに摘発した事が報
> 道された途端に被害は激減しました。
> つまらん例ですが、罪に応じた罰が犯罪を大きく減らした現実がここにあり
> ます。
つまらない例ではなくて、とても重要な例だと思います。
法や刑罰の存在とともに、
犯罪的行為は、断固として赦さないという態度を示すことが、
犯罪を抑止する大きな力になると思います。
摘発されたときの刑罰が何も変わらなくても、
実際に刑事が乗り込んだり、このようなキャンペーンをしたり、
その結果、マスコミや世論が盛り上がるなど、
様々な要因で、犯罪は減るのでしょう
(いったい、どの要因がどれだけ効果的であったかを
科学的に実証するのは、ほとんど不可能なほど困難です。)
> 愉快犯やその場の快楽だけの為に多くの人をあやめた加害者に対しては、加
> 害者の年齢にかかわらず最も重い刑罰が与えられるべきです。
上の話は、どのようにすれば犯罪の防止ができるかということでしたが、
ここでは、「〜すべき」という思想(考え方)の問題ですね。
あなたは、そう思う。 わたしは、そう思わない。
また、ご存じのように、日本の裁判所の考えでは、
一人を殺してもなかなか極刑にはしません。
年齢に関しては、どこで線を引くかは国によって違うでしょうが、
「年齢にかかわらず」極刑を与える先進国はないと思います。
> 犯行時未成年だった永山某に最近死刑が執行されましたが、無垢の人を4人
> も殺したのだからそれも当然です。
> 永山は獄中で自由に著作も結婚もしており、あなたの大好きな加害者の権利
> も十分に行使しました。そして法に基づいた死刑の義務を果たしました。
>
> 15才の男も小6の男の子と小2の女の子をかつてない残虐な方法で殺害し
> たのだから同じ様に死をもって罪を償うべきです。
> 現行の法ではそれはできない事をつくづく残念に思います。
> もちろん我が国は法治国家ですから法を無視するなんて私には考えも及びま
> せん。
永山元死刑囚が死んだことは、とても残念に思います。
しかし、現行法上問題はありませんし、
私としては特別に抗議行動もとっていません。
(私は別に活動家ではないので、これに限らず、特別な行動なんて、
ほとんどしたことはありません。
それではいけないと反省はしているのですが。
死刑に関しても、質問されれば、反対と答えますが、
死刑廃止論者として活動しているわけではありません。
軟弱な男ですいません。)
>
> ところで研究に真摯なあなたの主張する「加害者への教育的人道的な配慮が
> 犯罪を抑止する」理論?の根拠を客観的な数字で示してくれませんか?。
> 気楽な学者ではないそうですから当然、主張を裏付けるデータをきちんと調
> 査し数字で把握したうえで主張していますよね。
話が少し戻ります。痴漢の話です。
先日、夜中のテレビ番組(出演する女の子がみんなビキニを着ている番組)で
高校生の痴漢が増えているという話題を取り上げていました。
数が増えているだけではなくて、全く罪意識がない、遊び感覚だというのです。
(一体どんなデータに基づいているのわかりませんが、
まあ、そんな話や噂があるのでしょう。)
刑罰を重くしたり、刑罰を意識させたりすることで、
減少する犯罪もあるでしょう。
ただ、少年犯罪や快楽殺人は広い意味での心の病なので、
それでは防ぎにくいというのが、私の考えであり、
心理学の一般的な考え方だと思います。
「「罰」の効果は一時的なものであり、それは「無報酬」の効果と大差ない。
さらに「罰」には、様々な副作用がある。
だから、人々の行動を良い方向に変えるためには、「罰」を使うよりも、
「報酬」を使った方がいい。」
これは、スキナーを代表とする学習心理学的な考え方です。
法律や刑罰が無用だというわけではありませんし、
罰が全く無意味だということでもありませんが、
「罰」よりも「報酬」が効果的なのは、
多くの実験によって支えられている考え方です。
(そのデータをここに示してもあまり意味がないと思います。
必要ならば、参考文献のリストを作成しますが......。)
私は、スキナリアン(スキナー支持者)ではありません。
人間は「罰」から何かを学んだり、
そこに「愛」を感じることもあると思います。
私の研究テーマは、賞罰によらない「内発的動機づけ」です。
スキナーとは違い、人間の自己決定や自律性を尊重する立場です。
道徳行動に関する研究では、
賞罰によって行動パターンが作られることを
全面的に反対する人はいないでしょうが、
同時に、賞罰に左右されない自律的道徳観が必要だとされています。
もちろん、実験データーもあります。
実は、同じ心理学者でも、考え方はずいぶん違うのですが、
いずれにせよ、一般的な心理学の本で、
どんどん罰を使いましょうと主張している本はほとんどないと思います。
* * * *
私は、家庭や社会での広い意味の教育が、
法の存在とともに、犯罪を抑止していると思いますが、
そうではなくて、死刑などの刑罰こそが犯罪を抑止している
という考えもあるでしょう。
関連サイトを見つけました。
「〜獄中の死刑囚に面接調査した結果、自分が死刑の宣告を受けるだろうと考え
て犯罪を実行した者は一人もいなかった(精神科医小木貞孝)。国際連合で
は、数多くの高度な研究の結果でも死刑制度の犯罪抑止効果についての決定
的な証拠が得られなかったとし、ヨーロッパ会議司法閣僚会議でも死刑廃止
国において刑事政策上否定的な結果を生んだという事例は報告されていない
という内容の決議をしている。〜」
「昨年中国では6100人が死刑判決を受け、そのうち4367人の処
刑が確認されている。しかし、この数字はおそらく氷山の一
角にすぎない。」
「だが、中国の法律の専門家の中には、「見せしめ」キャンペ
ーンや死刑の執行が、どれだけ犯罪防止に役立っている か、
疑問視する向きも増えている。ある研究者は、法律改革
に関する著書の中で、「死刑が与える恐怖を利用して犯罪を
防止し、根絶しようというのは考え違いもはなはだしい。・・・
中国は死刑判決の数では世界1だが、犯罪発生率は増加
るばかりではないか」と書いている。〜」
* * * *
「死刑存廃の重要論点」を読んで、日本では
「実際に発生した殺人事件のうち犯人が死刑に処せられるケースは
0.1%程度に過ぎない」ということを知りました。
のこりの99・9パーセントの殺人者の多くは、何年かで出所するのですね。
無期懲役刑でも、10年たつと、仮出獄 が可能だそうです。
それでも、日本の殺人件数は、諸外国と比べて少ないのですから、
犯罪防止の面から見れば、日本はやっぱり良い国ですね。
もっとも、社会の複雑な出来事について、
誰の目にも明らかな科学的データーで、何かを示すのは、
とても難しいのです。もし、それが可能なら、
経済問題も、教育問題もすぐに解消するでしょうから。
研究者は、不十分ながら、
基礎的な実験室実験や、現場での社会調査や、事例研究に基づいて、
様々な推測を行い、少しでも社会に貢献できるようにと努力しているのです。
もし、「推測」ではダメだということになれば、ほとんどの研究者は、
研究者としては何の発言もできなくなってしまうでしょう。
> 15才の男に関しても気楽ではないあなたは現地に足を運び、可能な限り事
> 実関係を調査した上で意見発表されていますよね。何日位神戸に滞在し調査
> したのかも教えてくれませんか?。
いいえ、そのようなことは、何もしていません。
私が主催している「こころの散歩道」は、
その中の「心のニュースセンター」、さらにその中の「犯罪心理学」も含めて、
ページ上に書いてあるように、心理学を学ぶためのページです。
「心のニュースセンター」では、
様々な具体的出来事を通して、心理学を学ぼうとしています。
入門書などでは、よくあるスタイルですよね。
入門書や概論書の著者は、自分の専門分野はもちろんありますが、
その本の項目一つ一つを自分で実証的に研究しているわけではありません。
それらの項目に関する専門研究者の文献を読んで、
わかりやすくまとめています。
私も同じようにホームページを作成しています。
このような態度は、
悪い意味での「気楽な態度」だとは思わないのですが、違うでしょうか。
入門書を書くときも同じですが、ホームページ上での発言は、
全ての心理学者を代表しているわけではなくても、
心理学的には、オーソドックスな内容だと考えています。
本とのちがいは、速報性があることと、
このように読者の方と気軽に意見の交換ができる点です。
読者の方々からの反応によって、サイトはますます充実します。
(あと、個人的に言うと、本との違いは、いくらやっても
お金にも業績にもならない点です。だからこそ、自由にできるという
すばらしさもありますが。)
そして、心理学を学ぶとはいっても、単に知識を伝えるだけでなく、
何か、その人にとって少しでもプラスになることを願っています。
授業の時も、本を書くときも、ホームページを作るときも。
> あなたとは違って私は声を出して発言する場がないので、
わたしも、一市民で、特別に発言する場はありません。
このホームページぐらいです。
たまたま、たくさんの方に来ていただけて、
とてもうれしく思っています。
「読者の広場」では、みなさんからの投稿をお持ちしています。
どんどん声を出して発言して下さい。
>政治の力で法律が改正され
> 社会から少しでも犯罪が減少する事を願っております。
政治も、法律も、警察も、学校も、研究者も、家庭も、地域社会も、
インターネットも、たとえ各人の意見は違っても、
みんなで協力して、犯罪が減少し、
そしてみんなが幸せになれることを、私も、心から願っています。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
新潟青陵女子短期大学 福祉心理学科
碓井真史 うすいまふみ usui@n-seiryo.ac.jp
「こころの散歩道」
http://www2.n-seiryo.ac.jp/TEACHER/usui/index.html
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