心理学総合案内「こころの散歩道」/心理学入門/学習2

学習の心理学2
正しいほめ方、報酬の与え方

道具的条件づけ

 ネズミさんに箱の中に入ってもらいます。箱の中には、小さなレバーがついています。レバーを押せば、エサが出てきます。

 閉じ込められたネズミさんは、あっちこっちと大暴れ。何かの拍子にレバーに触れます。するとおいしいエサ。また偶然レバーを押すと、エサが出てくる。そのうちにネズミは覚えます。エサが欲しいときには、このレバーを押せばいいのだと。

 レバーを押すということが、エサという「報酬」によって「強化」され、レバーを押す行動を学習することができました。条件付けの成立です。(スキナーの実験)


人間の場合

 人間の行動も、基本的には、この報酬と強化によって説明できます。私が、ホームページを書く。何の反応もない。これではやる気も起こりませんが、カウンターの数字が上がる、応援のメールが来る、マスコミの取材も来る、そんなふうに報酬が与えられれば、私はますますホームページ作成に精を出すことになるでしょう。

 暴力を振るえば、自分の思い通りになると学習(経験)してきた人は、暴力的になります。涙を流せば問題が解決してきた人は、泣き虫になるでしょう。学校で、発言することを高く評価されれば、発言は増えるでしょう。

 職場の会議で、どんな提案をしても聞いてもらえない、発言などすると後でかえって叱られる、そんな体験を続けていれば会議では沈黙するようになるでしょう。


報酬の与え方とギャンブル

 レバーを押すたびにエサが出ないで、何回かに一回出るだけでも、ネズミはレバーを押すことを学習できます。それだけではなくて、もう全然エサが出なくなったとき、あきらめないでレバーを押し続けるのは、時々しかエサをもらっていなかった場合なのです(ムズカシクいうと、「部分強化の方が消去抵抗が大きい」となります)

 ギャンブルは、ああもうやめようかなあと思っていると、当たるんですよね。毎回もうかるわけではないけれど、たまにもうかる。そると、しばらく損ばかりしていても、競馬場やパチンコ屋に通い続けることになるわけです。


一歩、一歩

 ライオンに火の輪くぐりをさせたいと思う。では、ライオンが火の輪をくぐってくれるまで待つ。やってくれたら、お肉をあげよう。待つ。待ちます。いつまでも。いつまでも。いつまでも。

 いつまで待っても、そんなことやるわけないでしょ!

では、どうしたら良いか。

 すぐにできない、難しいことは、少しずつさせればよいのです。まず、火のついていない輪を用意して、そっちの方にちょっと顔を向けたらすぐにエサ(小さな肉など)。一歩近づいたら、またすぐに報酬。もう一歩近づいたら、また報酬をあげる。

 輪まで来て、輪にちょっとでも触れたらまた報酬。というふうに、一歩ずつ進めることが必要です。

 子どもに1時間勉強させたいとする。でも、すぐにはできない。たった5分で、秋始めた子どもをしかりつけます。そうかと思うと、勉強を始めた子どもの後ろに回り、やれ姿勢が悪いの、エンピツが丸まっているのだの、小言を言い始めます。

 これでは、だれだってやる気を失います。せっかく輪に一歩近づいたライオンに、報酬をあげるどころか、けとばしているようなものです。

 だれだって、すぐにはできませんよ。一歩ずつ、目標に近づけばよいのです。一歩でも近づいたことを、認めてあげましょうよ。


何が報酬になるか・非行少年の心理

 どんな親だって、教師だって、良い子にしたいと思って、良い行動には報酬を与えているはず。なのに、なぜ悪い子立ちができあがるのでしょうか。

 動物の場合、報酬はエサなどですが、人間の場合は、視線をやさしくむけたり、微笑んだりするだけでも、報酬になります。いろいろなものが報酬になるのです。

 だれでも、がんばって良いことをすれば報酬が与えられる世の中なら、きっともっと悪い人は減るはずです。でも、世の中そううまくは動いていません。

 勉強ができたり、スポーツができる人はいいですよう。良い成績や賞賛という報酬が与えられるでしょう。でも、劣等生ではそうはいかない。それに、その他のフツーの子達はどうでしょう。

 彼らだって頑張っているんですよ。毎日遅刻しないで登校し、宿題をし、きちんと授業に参加する。でも、こういう普通の子は、特別な賞賛も注目も与えられません。

 特別な報酬の与えられていない子たちが、もっと注目して欲しい、かまって欲しいと思ったときはどうでしょう。勉強やスポーツでは簡単には注目されません。

 注目される簡単な方法の一つが、非行なのです。

 人間にとって無視されることほど辛いことはありません。叱られてでもいいから、目を向けて欲しいと思うのです。それに、不良仲間からは賞賛も与えられるでしょう。

 悪いことをしたときに初めて注目されるのではなく、普通に頑張っているときに、きちんと見てくれて、その子なりの努力が認められればよいのですが。

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