自己啓発セミナーの問題点についてマインドコントロールの心理から考える
心理学総合案内「こころの散歩道」マインドコントロール研究所/自己啓発セミナー

3. 自己啓発セミナーと
マインドコントロール


99.4.13

 元X-JAPANのTOSHIが自己啓発セミナー(レムリアアイランドレコード))に入った話題が、しばらく前にマスコミを騒がせましたね。

 TOSHIが「洗脳」されてしまったと嘆く人々、洗脳集団、霊感商法、広告塔という批判。実兄の陰謀だとの反論。TOSHIはセミナーの言いなりで、すべてセミナーの命じるままに兄を悪者しているという再反論。

 フライデー99.4.16号によると、TOSHIがショッピングビルの地下広場で寂しくドサ回りなんて記事が出ていますが、ネット上の情報を見ますと、中野サンプラザなどで、春のコンサートツアーを行っているようです。


自己啓発セミナー

 数日間のセミナーを通して、自己の再発見、自己成長を目指します。もちろん、自己啓発セミナーのすべてが悪いわけではないでしょうが、悪質なところもあるようです。数十万円から、数百万円のお金がかかることもあります。

 破壊的宗教カルトのように、全財産を奪われるようなことはないでしょうし、たいていの場合は、自己啓発セミナーでの「感動体験」も、セミナーが終わると次第に冷めてしまうようです。

 しかし時には、マインドコントロールされ、借金を重ねてお金を払い、友人を無理に勧誘することで友情を失い、さらに学校や会社を辞めて自己啓発セミナーにのめり込んでいく人もいるようです。

 長く精神的ダメージから立ち直れない人や、自殺の問題なども指摘されています。


自己啓発セミナーの進め方

 一般的に、窓もカーテンで覆われた密室の中で、効果的な音楽などを流しながら行われます。まず、自分の欠点を指摘され自尊心を傷つけます(化け物アゴ男とか)。

 次に親にしてもらったことなどを思い出させ、感動させます。自分の恥ずかしい部分などをさらけ出し、カタルシス(心の浄化)を経験させます。みんなで安らかな雰囲気の中に包み込みます。

 こうしてマインドコントロールを行い、セミナーの進めるままに、ボランティアとしてセミナーを支え、新たな会員の勧誘に励みます。


まともな自己啓発セミナー、心理学との違い

 ネット上などで公開されている自己啓発セミナーの情報を見ると、他のマインドコントロール問題と同様に、個人を大切にしていないと感じます。

 自己啓発セミナーは、心理学の手法も一部取り入れています。心理学にも、合宿形式で行う「エンカウンターグループ」などもあります。

 ただし、まともな心理学的なセミナーは、きちんと訓練されたスタッフが行います。参加者の一人ひとりのことを十分に考慮して進められます。

 私自身、授業などで個人の心にかかわるデモンストレーションを行うときには、とても気を使います。そもそも、取り乱す可能性があるようなことはしませんし、簡単な心理テストを行うときでさえ、常にフォローアップの準備を欠かしません。

 自己啓発セミナーで、自己の再発見をする人もいるでしょうが、中には激しく傷つく人もいるようです。悪質なセミナーの場合、そのような個人個人を大切にしているとは思えません。


悪質な自己啓発セミナー、悪質なマインドコントロールなのかどうか

 レムリアアイランドがどんな団体なのか、よくわかりません。ただし、霊感商法被害者救済弁護士連絡会に苦情が寄せられている団体ではあるようです。

 様々な教育や思想や宗教に触れて、人生が変わる人はいるでしょう。それは、悪いことではありません。その考えが正しいかどうかは、別として、まともな団体の影響で良い方向に変わったのであれば、周囲の人も最初は戸惑うことがあっても、いずれはその変化を好意的に見てくれるでしょう。

 マザーテレサは、安楽な生活を捨て、スラムに入っていきました。当初は反対もあったようですが、次第に理解を得られるようになりました。

 マスコミで、元ヤクザの牧師が紹介されていました。彼も、生活は一変しましたが、周囲は好意的に見ています。

 このような人々は、考えや行動が大きく変わっても、本来のその人らしさや、自由な主体性や、批判精神は、決して衰えていません。むしろ、成長しているほどです。

 マインドコントロールは、その人らしさを奪い、その人の人生や人間関係を破壊するものです。正しいセミナーや心理学や宗教は、その人自身の良さが発揮され、人生や人間関係を豊かにするものでしょう。

(セミナーを行っている団体の中には、もちろん良心的なものもあるのは、言うまでもありません)


誤解

 TOSHIの件では、相変わらず「マインドコントロール」と「洗脳」が区別されずに使われています。(まあ、別にいつも厳密に使い分けなければならないわけではありませんが。洗脳の方が、字数が少ないし、インパクトがあるかな?)

 この話題で、彼がワイドショーに出ていたときです。あるワイドショーのディレクターから私のところに電話がありました。

 数時間後に本番(生番組)なのだが、彼も出席している場で、セミナー主催者の発言ビデを流す。それを見て、彼が何か狂乱状態の様になることはないだろうかというご質問でした。

 すでに、彼がよく知っている内容のビデをを見ても、そんなことにはなりません。

 別の番組で、彼の友人が、彼の話す内容は変わったが、様子が特別おかしいとは思えない(だから洗脳されているとは思えない)と言っていました。

 マインドコントロールされた状態とは、特殊な催眠状態でもありませんし、発狂しているわけでもありません。もっと日常的に、静かに心の中に入り込んでくるのが、マインドコントロールの怖さです。

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