心理学総合案内・こころの散歩道/ニュース/犯罪心理「心の闇と光」/神戸小学生殺害事件
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民事裁判の判決を聞いて:責任はだれに......
前の投稿を書き終わった後で、3.11.民事の判決が出たニュースをみました。お金によってご遺族の心がいやされることはないでしょうが、「〜この結果を子どもの墓前に報告することができることに安どしていますし、また私たち家族にとってもひとつの区切りになると思います。」とおっしゃっています。
情報の開示
訴えられた方が、事実を全部認めてしまうと、情報は公開されないのですね。少年の両親は、事実関係を素直に認め、いさぎよい態度をとったと言えるでしょうか。それとも、情報が公開されるために、事実関係を認めず争ったほうが良かったのでしょうか。
同じ情報が、刑事だと出ず、民事だと出るというのも、素人には良くわからない理屈です。出すべきではないのなら、いずれの場合も出すべきではないでしょうし、出しても良いのなら、いずれの場合もきちんと出してほしいと思います。公開できなくても、被害者側に知らせても良い情報はあるはずです。
少年事件に関わっている弁護士さんが言っていましたが、現在の少年法でも、被害者が裁判に立ち会うことは可能だそうです。犯罪少年の更生のためにも、それを願い出ることがあるそうですが、裁判官が認めてくれないそうです。
責任
一億円の賠償だそうですね。殺人を犯した少年は、深い病理性を持っていたとはいえ善悪の区別がついていたのですから、もちろん、少年にも少年なりの責任があるでしょう。親にも親なりの責任があるでしょう。では、私たちの社会には? どうなのでしょう。
少年法には、教育と制裁の二つの面があります。少年法は、少年自身の責任を問う形で少年に制裁を加え、また、私たちの社会の責任を問う形で、少年の更生に力を注ぐようにできているそうです。
少年の両親は、少年を専門家にもみせています。福島章に言わせると、この特異な少年に、学校はもっと特別な対応をとっても良かったのではないかと述べています。また少年に接したカウンセラーや精神科医に、もっと児童精神医学の知識があれば、今回の事件は防げたのではないかと述べています。
アメリカでこのようなミスによって殺人事件が起きた場合には、専門家は業務上過失致死罪として刑事裁判にかけられる危険があり、また注意義務違反によって生じた損害に対しては賠償金や慰謝料など民事上の請求をされることもあり、アメリカではその時に備えた保険が普及しているそうです(「児童心理」1997.11別冊)。
今回の事件は、いったい誰の責任なのか。もちろん、第一には、加害者である少年です。だからこそ、いま制裁を受けています。けれども、私たちの社会に責任がないとも思えません。第2、第3の、酒鬼薔薇を防ぐためには、専門家らの間にもっと児童精神医学の正しい知識が広まる必要があるでしょう。
そして私たちも、ある個人の責任を責め立てるだけではなく、「少年」に関心を持ち、「少年法」に関心を持ち、「精神病理」への理解と関心を持っていきたいと思います。
被害者保護の努力と、少年犯罪防止のための努力をし続けたいと思います。
長文にお付き合いいただきありがとうございました。
碓井真史