こころの散歩道(心理学総合案内)/ 犯罪心理学 / 新潟女性監禁事件/甘やかし
甘やかされて
女性を誘拐監禁していた男性は、かなり溺愛され、甘やかされて育ったようです。父親が63才の時の子であり、実質的には一人っ子で、経済的にも恵まれていました。
甘やかされて育つとは、がまんすることを学ばないで育つことです。何かに耐えたい、自制することができなくなってしまいます。
また、自分は何でもできるのだという病的な万能感を持ったまま大きくなってしまいます。子どものころに自分は何でもできると感じることは健康的ですが、普通は大きくなるにしたがって、現実的になってきますし、夢を描くだけではなくて夢を実現するための苦しい努力もできるようになります。しかし、病的な万能感を持っている人は、そのための努力をしたり、下積み生活を我慢したりすることはできないのです。
それでも小さな子どものころは、親が守ってくれますから、わがまま放題をしていても何とかなるのですが、思春期を迎えるころになると、そうはいかなくなります。
家庭内暴力へ
人は誰でも、友人が欲しいし、人から愛されたり、尊敬されたいと思います。しかし、そんなわがままな人間では、良い友人関係などできません。みんなが我慢できることでも、自分はできません。
そうして、人生が上手くいかなくなり初め、そこになにかきっかけとなるような挫折体験などをすると、家庭内暴力が始まります。
上手く生きていくことができない怒りや悲しみを暴力という形で表してしまうのです。本当は、苦しい感情を悩みながら自分の心の中で処理したり、不平不満をきちんと言葉で表したり、少なくとも社会的に認められる形でストレス発散ができると良いのですが、そこまで心が成長していないのです。
苦しい感情を反社会的な暴力という行動に表してしまいます。これを行動化(アクティングアウト)と言います。
一般的な家庭内暴力では、過保護、過干渉は母親、存在感のない父親の家庭で発生します。子ども自身が、小さいころに親からの体罰を受けていたことも少なくありません。思春期までは優等生だった子どもが、突然荒れる例もあります。
家庭内暴力は家の中の弱者を標的にします。犠牲者はたいてい母親です。彼らは、母親を殴りながら、「みんなお前が悪いんだあ!」「謝れ!謝れ!」などど叫ぶことがあります。こんなダメな自分にしてしまった親を責めているのです。もちろん、だからと言って親を殴るのは理屈に合いませんが、彼らの心の叫びとしての親への暴力です。
彼らは親を殴りながら、さらに自分の心を傷つけていきます。すると、ますます感情的に不安定になり、家庭内暴力が悪化するという悪循環になります。
家庭内暴力は、直接親への暴力だけではなく、家財道具を壊すこともありますし、また親に命令して自分の召使のように使ってしまう場合もあります。今回の男性も、何もかも母親にやらせていたようです。
ただし、この男性の暴力がこのような心理による家庭内暴力なのかどうかは、現時点では良くわかりません。普通の家庭内暴力は、10代から長く続いても30代前後までですから、30代後半になっても母親に激しい暴力を振るうとすれば、別の心の病などがあるのかもしれません。
家庭内暴力の対策
家庭内暴力の対策は簡単ではありません。同じ家庭内暴力と言っても、様々な原因があります。その原因や暴力の進行具合によって、子どもを受容することが重視されたり、逆に毅然とした態度が重視されたりします。
今回のケースを、家庭内暴力への対応という点から見れば、もっと早い時期に精神科に入院させることも考えられたでしょう。また、親が逃げてしまうというのも一つの方法です。家庭内暴力の結果、殺人にまで発展することすらあります。それぐらいなら、逃げてしまったほうが良いのです。子どもには居場所を教えず、子どもだけで責任をもって生活させることが、家庭内暴力の改善につながることもあるでしょう。
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