こころの散歩道(心理学総合案内)/ 犯罪心理学 / バスジャック/優等生
劣等生の不良少年が暴力事件などを起こしても、世間もマスコミもそれほど騒ぎませんが、「優等生」が起こした犯罪は大きな関心を持たれます。「あんなに優秀な子がなぜ?」と、疑問に感じるからです。
でも、もしも彼がもっと普通の成績の生徒であれば、今回の事件は起きなかったかもしれません。
精神科医の町沢静夫は、今回の事件に関する産経新聞の記事の中で、「むしろ優等生ゆえ孤立してしまい、最悪の結果を招いてしまったのではないか」と語っています。
人は、だんだんと成長していく中で、時には様々な心の問題を抱えます。この心の問題がすぐに外に表れて、みんなが心配してくれれば、早い時期に問題を解決することもできるかもしれません。
ところが、成績が良いために、心の問題がかえって隠されてしまうこともあるでしょう。
学校の勉強だって、もちろん大切です。でも、心の健康な成長はもっと大切なはずなのですが。
彼は進学校に入学したとはいえ、第一希望の高校ではありませんでした。優等生タイプが挫折したときには、大きな心の傷を負ってしまうことがあります。
人生って、なかなか第一希望通りには行きませんよね。みんな、いろいろな場面で第2希望、第3希望の道へ行きます。そのとき、健康で強い心をもっていれば、すこしは落ち込んでも、でもその場所で新しい歩みが始められるはずです。
ところが、挫折経験の乏しい優等生が挫折してしまうと、すっかりやる気を失って自暴自棄になってしまうことがあります。不登校、家庭内暴力、犯罪へとエスカレートすることもあるでしょう。
この少年は、中学時代にいじめられていたとか、そんなことはなかったとか、はっきりしません。高校の入学試験直前の大けがも、いじめの結果なのかどうかはよくわかりません。
たしかに、全くいじめられてなどいないのに、本人やその親だけが騒いでいるケースもあるでしょう。
しかし、それでもやはりいじめとか、差別とか、セクハラと言った問題は、被害を受けた本人の主観を尊重すべきだと思います。
今回の場合はどうだったのでしょうか。
同級生にも、教師にもいじめという認識はなかったようです。しかし、同級生達は、マスコミの取材にこんなふうに応じています。
「「暗い」「とろい」という印象がついていた。仲良くすると、かえって自分の立場が悪くなる、っていう感じがあった」
「いじめていたわけじゃない。普通にからかっていただけ」
いじめは、そのときに殴られたり、お金を取られる被害だけ出はなく、被害者の心に傷を負わせ、その後の対人関係全般に悪影響を与えてしまうことがあります。
不登校、ひきこもり、家庭内暴力といったパターンは珍しいものではありません。そのほとんどは家庭外では、犯罪など犯さないのですが。
ひきこもりと家庭内暴力は、ただの本人のわがままのようにも思えるでしょうが、本当は自分から好んでそんなことをしているわけではありません。そうせざるを得ない心の状態だったのでしょう。
学校にも行かず、仕事もせず、社会から孤立し、親に乱暴をする。そんな生活を決して楽しんでいたわけではなく、ますます挫折感を深めっていったことでしょう。
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