こころの散歩道(心理学総合案内)/犯罪心理学/青酸カレー事件/犯罪被害者の心理
今回の和歌山カレー毒物混入事件でも、被害者や地域住民の精神的なケアの必要性が言われています。
朝日新聞によると、次のような被害者の言葉があります。
「食べるのが怖い」
「外に出たくない」
「事件の光景を思い出して、眠れない日が続いている」
「私が毒を盛ったようなもの。一生懸命、何度もスプーンで毒を口に移してしまったんだ……」
* * * * *
犯罪の被害者は、犯罪による直接的な被害だけへはなく、様々な問題を抱えます。身体的な問題もあるでしょうし、経済的な問題もあるでしょう。ここでは、特に心理的な問題について考えてみたいと思います。
警察の捜査が、それが必要なものであっても、心理的な負担になることもあるでしょう。マスコミの取材で傷つくこともあるでしょう。神戸の小学生殺害事件の時も、町にものすごい数のマスコミが殺到し、上空にはワイドショーヘリコプターが何台も飛び交い、異様な雰囲気だったそうです。
世間や近隣の無責任なうわさ話などで、心を痛めることもあるでしょう。もっと露骨に、家族を含む被害者を責める人もいるでしょう。
犯人やその家族が責められるだけではなく、被害者側も責められたり、学校、病院、その地域自体の問題が責められるときもあります。直接の犯罪被害者だけはなく、その周囲の人たちまで、間接的に責められることもあるでしょう。被害者を含め、地域全体が、その犯罪によって苦しめられ、さらにマスコミや世間によって苦しめられることもあるでしょう。
このように、直接的な犯罪の被害に加えて生じる様々な問題を「二次的被害」と呼んでいます。
(もちろん、マスコミや世間がいつも敵になるわけではありません。助けられることもあるでしょう。また、実際に改善すべき点が存在する場合もあるでしょう。しかし、今、犯罪被害者として弱者となっている人々が、さらに二次的被害を受けることは避けなくてはなりません。)
一般的な犯罪被害者の心理
一般的に、大きなショックを受けた犯罪被害者には、様々な心身の問題が生じます。
恐怖感、自責感、不安感、無気力感、孤独感、疎外感、怒り、復讐心、下痢、吐き気、不眠、悪夢、食欲不振、イライラ、感情のまひ、現実感覚の薄れ、記憶力や判断力の低下など。
このような状態は、決して異常ではありません。突然ショックを受けた後では、誰でもがそうなる可能性があります。人間として、とても正常なことです。一見、しっかりしていそうに見える人でも、心の中で様々な問題を抱えている人もいます。
ですから、被害者を責めたり、無理な励ましをすることなく、温かく接することが必要なのです。
(さらに時間が経つとPTSDの心配もあります。)