心理学総合案内「こころの散歩道」/犯罪心理学/青酸カレー事件/模倣犯の犯罪心理学
先日、あるマスコミの方からの電話取材で、「どうして模倣犯がでるのでしょうねえ」と質問されました。模倣犯については、「事件について今考えていること98.8.8模倣と観察学習」の中で、心理学の「観察学習」と「模倣」と言う言葉を使って少し書きましたが、もう一度考えてみることにしました。
私たちの心の中には、お金がほしいとか、誰かをやっつけてやりたいといった気持ちがあるでしょう。でも、普段はその気持ちにブレーキがかかっていて、犯罪を実行することはありません。
ところが、たとえば商品に毒を混入するぞと強迫して金を脅し取る犯罪が発生すると、これは良い方法だと思ってまねをする人たちが表れます。また、郵便局強盗などはが発生すると、郵便局強盗は簡単なんだと思ってしまい、犯罪に走る人もいるでしょう。
でも、冷静に考えると、やっぱり犯罪は割に合いません。単純な模倣犯など、ほとんどの場合すぐに逮捕されてしまいます。逮捕されないにしても、罪の意識や不安に一生悩まされることになります。それなのに、どうして模倣犯が出るのでしょう。
ビル火災の時、窓から飛び降りて死んでしまう人がいます。「飛び降りてはダメだあ!」下からどんなに叫んでも、一人が飛び降りると、次々と飛び降りてしまうのです。冷静に考えれば、飛び降りても死ぬだけだと分るはずなのですが。
生き残った人の話です。窓から顔を出し、必死に助けを求めます。そのとき、誰かが飛び降ります。すると、自分も飛び降りたいとという強烈な衝動が湧いてきたそうです。
下を見ると、何だか地面が近く見える。「自分も飛び降りよう」「きっと助かるに違いない」そんなふうに、飛び降りても何とかなるような気がします。でも、その衝動を何とか抑えていたときに、救助隊がやって来ました。
どうしてもお金がほしい。あいつを殺してしまいたい。そんな思いで悶々としているとき、派手な犯罪が起こります。連日のようにマスコミが報道合戦を繰り広げます。目の前で見たわけではありませんが、時にはそれ以上に生々しく、現実感をもって、膨大な情報が降り注いできます。
その情報のシャワーの中で、犯罪は割に合わないという冷静な気持ちは薄れていき、「自分もやってやろう」「きっと成功するに違いない」と思ってしまうのかもしれません。
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でも、それで実際に飛び降りてしまったり、犯罪を犯したら、あなたの負けです。衝動を抑え、苦しいけれど、ぐっと我慢すれば、きっと解決の道が開かれるはずです。
(新潟の事件が和歌山の事件の模倣かどうかは、まだよく分りませんけれども)