こころの散歩道(心理学総合案内)/犯罪/青酸カレー事件/犯人推理の心
私たちは、心の中のバランスを求めます。膨大な情報や心の中の思い、感情を、できるだけ矛盾がないようにまとめ上げ、バランスの良い1つのストーリーやイメージをを作り上げようとします。
このおかげで、犯人が分ることもあれば、科学の法則が発見されることもあります。人に対する印象や、ブランドに対するイメージもできあがります。
ただし、いつも正しいとは限りません。私たちは、いったんある考えが湧くと、後は、自分の考えに矛盾しないように情報を選び取り、自分の考えに矛盾しないように情報を解釈します。
誰かが怪しいということになると、次々と「証拠」らしきものがでてきます。「証人」も出てきます。最初は、よく分らない、はっきりしないと言って発言を控える人でも、世間やマスコミが容疑者を作り上げると、そのイメージとストーリーに添った考えが頭に浮かんで、証言してしまうこともあるのです。
さらに、事件に関連した不安が大きいほど、不安に沿ったうわさが流れることもあるでしょうし、不安を解消するために、誰かを犯人とすることもあるでしょう。
マスコミに、ある種の答えを強く期待されているときには、なおさらです。インタビューに答えている人は、決して「ウソ」や「作り話」をしているわけではないのですが、普段の冷静さはどこかへ行ってしまい、喜んでもらえるような話をしてしまいます。このような人々が愚かなのではなく、人とは、そういうものなのです。
さて、その結果、真犯人にたどり着くこともあれば、冤罪(えんざい)が生まれることもあるでしょう。
毒物カレー事件で今(98.8.28)注目されている人が、保険金詐欺疑惑や毒物カレー事件と関連があるのかどうかは分りません。私も、普通の人間なので、個人的には、犯人ではないかなどど素朴に思ってしまいます。
けれども、もちろん冷静な態度が必要なことは言うまでもありません。このページは、犯人探しのためのページではありません。
このように、心の中の矛盾を減らそうとする働きを、心理学では「認知的不協和理論」で説明しています。
人間として持っている、このような「心の癖」(心理的傾向)は、悪いことというわけではありません。そのおかげで、普段の生活をスムーズにしていくことができます。でも、間違いが生まれることもあります。
「心の癖」を完全に直すのは、ほとんど不可能です。しかし、私たち自身が、どのような心の癖を持っているのかを知っておくことは、大切なことではないでしょうか。
こころの散歩道での心理学の学びも、そのために「少しでもお役に立てればないいな」と思っています。