こころの散歩道/犯罪/毒物事件/攻撃手がかり


薬品棚の中で
「アジ化ナトリウム」がキラッと光って見えたとき

攻撃心理の「欲求不満・手がかり仮説」


新潟、三重に続き、今度は愛知で
アジ化ナトリウムを使った犯罪が起きました。10.28

* * *

 欲求不満が高まると攻撃行動が起きやすくなります。ストレスのたまった子どもが、いじめをしたり、不景気になると暴力犯罪が増えたりします。

 しかし、欲求不満だけでは攻撃は起りにくいものです。攻撃のきっかけ、手がかりとなるようなものが必要です。ドラマなどによくありますが、欲求不満が高まり、怒りに燃えた人物の目に、ふと、包丁や花瓶が目にとまります。彼は思わず、包丁や花瓶を手に取り、目の前の人間を殺してしまいます。

 以前、金属バットで両親を殺害する事件がありましたが、もし、金属バットがなかったら、その日、事件は起こらなかったかもしれません。アメリカの家庭に、もしも銃がなかったら、殺人事件はもっとずっと少ないかもしれません。

 ある心理相談施設で聞いた話です。面接室のテーブルには、普通、灰皿や一輪挿しの花瓶などがおいてあります。ところが、乱暴で怒りっぽい人が来るときには、テーブルの上のものを全部かたずけるそうです。興奮した人が、灰皿や花瓶を投げ付けることがあるからです。

 素手で殴りかかるようなことはしない人でも、怒りに我を忘れたとき、目の前のものをつかんで投げ付けることはあるのです。怒りや欲求不満と凶器になりうる物の存在が合わさって、攻撃行動が出やすくなるわけです。

 さて、アジ化ナトリウムは、本来は「毒物」ではないのでしょう。でも、一連の毒物事件と膨大な報道のおかげで、すかっり毒物として見られるようになってしまいました。

 今回の三重の大学や岡崎の研究所の事件も、犯人にとっては、アジ化ナトリウムが「凶器」としてキラリと光って見えてしまったのかもしれません。

 もちろん、犯罪は、アジ化ナトリウムのせいではありませんし、マスコミ報道だけの責任でもありません。しかし、いくつかの不幸な偶然が重なってしまったとき、犯罪は起こるのかもしれません。その原因の一つでも、もしも取り除くことができていたら、その犯罪は防止できていたかもしれないのです。


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林真須実容疑者逮捕後の報道(マスコミと模倣犯)

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