こころの散歩道:心理学総合案内/ 犯罪心理学 / 京都/京都・神戸
このホームページでは、今回の京都の事件と、1997年に起きた神戸の事件との関連について考えてきましたが、最近発行された週刊誌などで、専門家のみなさんがこの話題を取り上げています。(私自身は、別のページにも書いてある通り、犯罪心理学の専門家というわけではありません。心理学の全般的な話をしているつもりです)
神戸の事件の模倣だろうと推測したうえで、「てるくはのる」について、大人たちが見当違いの解釈をするのを楽しむために記号を残したのではないかと述べています。
「(神戸の酒鬼薔薇事件との類似性について)影響は強く受けており、模倣と見て間違いない」と述べています。また、学校へのうらみは口実であり、「(犯行の)目的はあくまでも人を殺して犯行声明を出すことで日本中の注目を集めることにある」とも述べています。
神戸の事件とは「質的にあからかな違いがある」と主張しています。神戸の事件では「(声明文から)残虐性が感じられましたが〜今回の声明文にはやさしさがある」として、ごく最近、強烈に傷つく経験をした少年が「うらみ」を持ち、その怒りと激情が犯行を生んだのではないかと推察しています。
「快楽殺人の「酒鬼薔薇」とは全然違う。何かに苦しんでキレたうえでの犯行でしょう」「無理して字を書いている」と述べています。
犯行声明文について、「酒鬼薔薇の影響を受けているのは間違いない」と述べています。10年前に起きた連続幼女殺害事件の犯人が書いた「ポキポキ折れるような文字」を神戸の少年がまね、それをさらに今回の少年がまねたのではないかと語っています。
さて、それぞれ、数行のコメントしか掲載されておらず、細かいことは分かりませんが、いくつかの点について考えてみましょう。
神戸の事件のポイントは、「快楽殺人」であったことだと思います。日本ではあまりみられない殺人自体に快感(多くの場合は性的快感)を感じる深い病理性を持った快楽殺人であり、さらに犯人が少年であったことが衝撃的でした。
報道では自分を透明な存在とする犯行声明文や「酒鬼薔薇」の文字が有名になってしまいましたが、それはむしろ付随的な問題ではないかと思います。
第二の酒鬼薔薇を防ぐためには、教育改革や家庭の問題よりも、むしろ日本における児童精神医学の充実が必要だと思います。
今回の事件ですが、犯人が逮捕されていない現段階では、わからないことが多いのですが、「快楽殺人」といった解釈は聞かれないようです。その点では、神戸の事件とは、質的に異なるでしょう。
*** 一方、声明文に関しては、神戸の事件を連想しないではいられません。「うらみ」が犯人の本心であれ、口実であれ、声明文が世間の大きな話題になることは、当然予想していたでしょう。
まだ、全く正体不明の犯人についてですが、この調子で、いろいろ考えていけば、いろいろと想像することはできます。ただ、このページでは控えることにしましょう。それは、確かに興味深い話題かもしれませんが、どれほどの意味があるのか疑問です(犯人逮捕のために警察や関係の専門家のみなさんが推論することはもちろん意味がありますが)。
いずれにせよ、このホームページでこれまでに述べてきたような、冷静な報道姿勢と、犯人に対する厳しさと優しさの両面が必要なことは変わらないと考えています。
ところで、たいていの場合、予想は外れるんですよね。外れた時に、専門家に対して手厳しい批評をする人もいますが、でも、人間って言うのは、よくわからないんですよ。
天気予報や地震予知だって当たらないのだから、まして人間のことは良くわかりません。
その人自身が回答した心理テストの結果から、その人のことを考察する場合も、心理テストの結果だけではなく、やっぱりその人自身と面接して、総合的に考えていかないとわからないものなのです。だから心理学は偽科学だなどとは思って欲しくないのですが。
最先端の機械がいっぱいある気象庁の担当者も、やっぱり空を見上げるのでしょうし、先端医療を行う医者も、やっぱり患者と直接会って、問診するのでしょうから。
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補足
多くのマスコミが、今回の事件と神戸の事件との関連性を扱っていながら、模倣犯罪発生についてマスコミが果たしてしまった役割につてほとんど言及していないのは、大きな疑問です。
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