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下関駅通り魔事件の犯罪心理


99.9.30. 16:00
加筆しました9.30 20:30



 99.9.29、JR下関駅構内でに車が突っ込んで通行をはね、さらに車から降りた男が包丁で人々に次々と切り付けた。男女3人が死亡、1人が意識不明の重体、11人が重軽傷を負った。容疑者の男性は、その場で現行犯逮捕された。

 asahi.comのホームページで、初めて事件を知ったとき、「ああ、またか!?」と、とても暗い気持ちになりました。

 今回の事件も、池袋の事件と同様に、特定の人への恨みではなく、社会全体に対する怒りと悲しみが原因のようです。

 容疑者は、「社会に不満があったから、誰でもいいから殺してやろうと思った」と語っています。

 もちろん、こんな理由で殺されてはたまりません。池袋と同様、今回の被害者、ご遺族のみなさんの無念、悲しみは、どんなに大きいことでしょう。

 しかし、それでも、私たちは、犯人を憎み攻撃するだけではいけないと思うのです。事件の直接の被害者のみなさんを守ると同時に、事件から何かを学びとらなければならないと感じています。


マスコミ報道から

産経新聞

 池袋通り魔との共通点として、
「社会に不満」「誰でもいい」という犯行の「衝動性」と「無差別性」をあげています。

 私は、両事件とも繁華街で起きた点も同様だと思います。(通り魔大量殺人事件はたいてい人込みをねらいますが。)

 池袋の容疑者は、昼間から遊び歩いている人たちへの憎しみがあったと語っています。

 孤独感や疎外感を持っている人たちにとって、にぎやかな場所、にぎやかな時期に、一層、その思いを強めるのです。また、楽しそうな人、成功している人、社会に適応してまじめにやっている人たちに攻撃心が向くこともあります。

 先日アメリカで、キリスト教会の青年集会中に、銃の乱射事件がありました。これも、その一例でしょう。

朝日新聞

 識者の見方として、

こういった犯罪が増加する背景には、社会からの孤立感、疎外感を感じている人が潜在的に増えている事情もあるのではないか。

と言う意見を紹介しています。私も、そんな気がします。

 また、被害者の心理に詳しい小西先生が、被害者への様々な援助の重要性を強調しています。私も同感です。


匿名報道

 事件直後、各マスコミは、容疑者を匿名で報道していました。事件当日のテレビ朝日「ニュースステーション」では、容疑者は精神科に通院中と述べていました。

 そして、犯行現場からの報告の後、キャスターらは、互いにおしゃべりをするような雰囲気の中で、被害者は実名報道されるのに、加害者が匿名なのは納得できないと言った趣旨の発言をしていました。

 (軽い気持ちのおしゃべりのようにも見えましたが、計算された発言かもしれません。私たちは、以外と正式な発言や統計資料などよりも、こういった自然な雰囲気の発言に左右されてしまうものです。番組では、匿名報道の問題は、なんどか取り上げているそうです。)

 たしかに、通院中というだけで匿名にするのは、問題があると思います。被害者の人権が守られないのは、大問題です。

 しかし私たちは、誰かを法的に罰するのは、出来事の責任が当人にあるときだけという大原則を作ってきたのではないでしょうか。このテーマは、また別の機会に話したいと思っています。

 (ところで、被害者の実名を出すのが悪ければ、その番組では出さなければよいのではないでしょうか。だめですか?)

 TBSのニュース23では、精神科に通院中ということには触れずに、匿名で扱っていました。

 今朝(9.30)の新聞各紙は、実名で報道していました。通院中ということを伝えている新聞と触れていない新聞があったようです。

 朝日新聞では、精神科に通院中で犯行の前日も診察を受け、クスリを処方されたと伝えつつ、実名報道をしています。

(朝日新聞は、他紙に比べて必要以上に被害者、加害者の顔写真を出さないなどの配慮を以前から行っています。)

 各紙そろって、実名報道ですから、現時点で責任能力ありと判断したのでしょう。

 夜のニュースの後、朝刊までの間にどのようなことがあったのかはわかりません。どなたかご存知の方があれば、お教えください。

(犯罪者の中には、たしかに心の病気の人たちがいますが、一般的な精神科の患者さんは、もちろん危険なことなどありません。)

 西日本新聞では、9.30夕方現在、「運送業の男(35)」として匿名報道を続けているようです。

 また、「捜査本部は、殺人と殺人未遂容疑で山口地検下関支部に送検する十月一日以降、男の精神鑑定を行う方針で、刑事責任能力を問えるかどうか慎重に調べを進める。」と伝えています。

ホームページから本ができました。
2008年9月緊急発行
碓井真史著『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』
誰でもいいから殺したかった! 追い詰められた青少年の心理』


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