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成人年齢引き下げを心理学的に考える2

青年期の心理学的特徴から

2009.7.30

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青年期とは(青年期の時期)

 青年期の始まりは、第二次性徴が出現する時期で、だいたい12?13歳のころです。青年期の中でも年齢による違いは大きいので、12?15歳前後を青年前期、16?18歳前後を青年中期、そして19歳?22歳、あるいは25歳程度までを青年後期としている研究者が多いでしょう。

青年期の終わりは青年期の始まり以上に個人差が大きく、研究者によっても考え方は様々です。中には、30歳ごろまでを後期青年期と考える人もいますが、心理学的には、22歳から25歳程度を青年期の終わり、成人期(大人)の始まりと考えてよいでしょう。。

長くなった青年期(なかなか始まらない成人期)

 現代社会の青年は、発達加速現象によって青年期の開始は早まったものの、心理、社会的な自立は遅くなっています。

上級学校への進学率が高まり、結婚年齢も高くなり、親の経済的な庇護のもとに長くいる青年が増えています。

このように、大人になるのが以前よりも遅くなっている現状での、成人年齢引き下げには、とまどいを感じる人も多いようです。2008年4月に読売新聞が行った調査によれば、成人年齢に引き下げに反対の者が59パーセント、賛成が36パーセントでした。

青年期とは:モラトリアム

 発達心理学者のエリクソンは、青年期をモラトリアムの時代としています。モラトリアムとは、身体的には大人であっても、大人としての社会的責任を負うことを猶予されている時期という意味です。社会が発達するにつれて長い青年期を持つようになっています。

 現在では、「モラトリアム人間」などと言うとあまり良い意味で使われませんが、エリクソンはモラトリアムの時期を肯定的に見ています。

青年たちは、結婚、出産、育児、仕事といった大人の責務を与えられず、自由に様々な経験を積むことによって成長していいます。豊かな社会ほど、長い青年期を与えられると言えるでしょう。より良いモラトリアム時代を過ごすことは、より確かなアイデンティティの確立に結びつくでしょう。


青年期の情緒的特徴

青年期の情緒、感情の特徴としては、感受性の高さ、不安定性、持続的な表出性をあげることができます。

青年は、感受性が高いためにわずかなことに対しても敏感に反応してしまいます。青年は感受性の高さゆえに、感動し成長することが出来きますが、その一方、感受性が高すぎるために、感情に振り回され、時に激しく思い込み、過激な行動に走ることもあります。

 青年の感情は不安定です。感情が極端から極端に揺れ動きます。対人評価も、理想化と絶望の間で激しく動きます。

それらの感情を、若者は表現し続けます。その激しい感情表現が、豊かな若者文化を創り上げることもありますが、人間関係のトラブルや違法な行動へと向かってしまうこともあるでしょう。

 広い社会へと出て行こうとしている青年たちは、挫折を体験することも多いでしょう。精神的に安定している青年であれば、挫折をもバネにしてさらに成長していくことが出来ます。しかし、過保護あるいは厳しすぎるしつけのために自発性が損なわれていた場合などは、挫折体験に耐えることが出来ず、思春期挫折症候群と呼ばれる不適応状態に陥ることもあります。

 青年たちは、抑うつ状態となり、不登校、非行に走ることもあります。あるいは刹那的な行動や自己中心的な言動、家庭内暴力、年齢不相応な甘えなど退行現象が見られることもあります。このような一過性の精神変調や行動異常を、思春期危機または青年期危機と言います。

日米の子ども、青年、子育て:日本のおける自立の遅れ

日本の若者たちの青年期の終わりは、先延ばしされているといえるでしょう。。

 子どもの自立を遅らせているのは、日本社会全体の問題ともいえます。。たとえば、アメリカでは大学生が自分の学費を用意するのは当然だとされていますが、日本では親が用意するのが一般的です。

これは、子育ての方針の問題とも言えますが、学生個人や親のせいだけではなく、日米の奨学金制度の充実度の違いなども影響しているでしょう。

日本は、子どもをとてもかわいがる文化があります。かわいがることはとても良いことですが、その副作用として、時として子どもの自立を阻むこともあるかもしれません。


 アメリカでは、子どもであっても自立性が強調されます。それは、経済的な面でもそうです。アメリカでは、子どもが、レモネードを作って売ったり、若者たちがベビーシッターや洗車で小遣いを稼いだりすることは、ほめられることでしょう。日本であれば、子どもが金銭を稼ぐようなことをすれば、怒られてしまうでしょう。

 日本では、未成年への政治教育もあまり行われていないと思います。政治教育とは、特定の政治思想を教育することではなく、実際の政治に関心を持ち、政治参加への行動へとつなげる教育です。

日本では、公民科で政治に関する知識は教えても、政治に関する活動からはむしろ遠ざけていると言えるのではないでしょうか。

 青年に自立を促すのは大切なことです。選挙権を若い世代に広げることも良いことだと思います。

しかし、社会全体で青年の自立を促進しないままで、成人年齢を引き下げることには、慎重さが必要ではないでしょうか。

特に、少年法に関しては問題が多いように思えます。
  

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