心理学総合案内「こころの散歩道」心のニュースセンターソルトレークオリンピック/清水宏保


清水宏保選手の銀メダルで学ぶ
心理学

「あきらめずに、自分を保つ」


2002.2.14
清水宏保選手、スピードスケート500メートルで銀メダル!

金メダル後

 前回は金、今回は銀。でも、今回の銀メダルを通して、清水選手のすごさをなおさら感じた。ライバル堀井も「あらためて彼のすごさを実感した」と言う。
長野の金メダル獲得直後に、彼は語っている。
「金メダルを取っても自分を極めたとは思えなかった。僕の目的は、人間の未知の能力を探り当てることだと気づいたんです」

自信喪失

しかし、彼は腰を痛める。1月上旬のW杯のころには最悪の状態で、、かがんで靴下を履くこともできなかったという。
鍛え上げられた最高の体。最高の技術。まれに見る精神力。しかし、どんなスーパーマンも傷を負う。体も、そして心も。
「体への絶対的な自信をなくしていた」

「この3カ月間は精神的に追い詰められていた」
どんな強者も、心が弱くなることはある。

復活

それでも彼は敗北者にはならない。
「もうダメかって思ってました。だけどここでやめたら、4年間が無駄になりますから」
どんな人も、ケガをする。失敗する。失望することもある。しかし、絶望してはいけない。

「こういう状態で金メダルを取れてこそ本当の実力者」
どんな状態でも、ベストをつくす。そして完璧な状態でなくても、メダルが取れるように、心も体も鍛えてきたという。
本来なら、レースができるような状態ではなかったはずだ。
オリンピック直前でも、「50%」のできだったという。劇薬でもある弛緩ブロック剤を注射、痛み止めを飲んでのレースだった。
その結果は、金メダルにわずか0.03秒届かなかった銀メダル。
銀メダルが決まって、顔を下げてた清水選手に、コーチは言った。「お前はすごい男だよ」。

ベストをつくす

金メダルをとる力があり、金を目指してきた男にとって、銀という結果はたしかに残念だったことだろう。
「レースの内容は納得いくものじゃなく、やはり悔しい。」
体をベストの状態にできなかったことの無念さはある。
しかし、
「出来る範囲内で今季のベストを尽くせた。満足です。」
今の自分にとって最高の力を出すことができた。
「結果」は、いろいろなことに影響を受ける。たしかに、結果は大切だ。しかし、人間にとって、今の自分の状態の中で最高の力を発揮することしかできないし、それが大切なはずだ。

 もう事が始まろうというのに、今の自分の状態を恨んだり、悔やんだり、心を乱してもしょうがない。そんなことをしていては、その状態の中でベストを発揮することができなくなってしまう。

次へ

清水は、次のオリンピックも目指すという。
 「これからの4年? どんどん世界記録を縮めていきたい」
「鍛えれば鍛えるほど体は進化し、追い込めば追い込むほど人間の潜在能力は上がる」

心の力

長野オリンピックのときにも、清水選手の精神力の強さには、舌を巻いた。
清水選手の金メダルで学ぶ心理学(緊張、リラックス、プラス思考)
彼の、緊張感との付き合い方と「プラス思考」には、学ぶことが多い。今回の腰痛も、彼は「プラス」だという。この困難を乗り越えたことが自分の財産だというのだ。
 私たちは、人生の中で様々なことを体験する。だが、同じ体験をしても、その後の人生は大きく変わる。その体験を、心でどう受け止めるかが重要だ。
ソルトレークの銀メダルの価値は何かと質問され、清水選手は答えている。
 「競技者はケガすることが一番、大変。精神的にも不安定になる。でも、『あきらめずに、いかに自分を保つか』。スポーツ選手に役立つ、良い方向性が見いだせればいいなと思う」


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