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新潟青陵大学:碓井真史-心理学総合案内こころの散歩道/ニュース/成人式2002
昨年に引き続き、今年2002年の成人式も、あまり楽しくないニュースが流されています。爆破予告による会場の変更、沖縄での大暴れと逮捕者。「成人式なんかもう止めたほうがいい」といった意見もあちらこちらで聞かれます。
でも、一部の乱暴者が暴れる。みんなが腹を立て、イベントは中止。それでよいのでしょうか。
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大暴れの心理
昨年の「新成人大暴れ !? の 心理(2001)」でも書きましたが、彼らの動機は「目立ちたい」です。もう少し、深層心理的な言い方をすれば、「愛されたい」でしょう。
非行少年たちの心理と同じです。 注目されたい、認められたい、かまってほしい、しかし正当な方法で目立つだけの力はない、そんなときに、彼らは手っ取り早く悪いことをして目立とうとします。ヒーローにはなれないけれど、「アンチヒーロー」にはなれるのです。暴れたいのなら、町の繁華街で暴れても良いのですが、それよりも成人式会場の周りで暴れた方が目立ちます。普通の大人の犯罪者は、人目があれば悪いことはしません。しかし、彼らは逆です。人目があり、マスコミのカメラがあれば、なおさら張り切るでしょう。
今回は事前に機動隊配置の報道がありましたが、この報道はさらに彼らの心にエネルギーを与えてしまったでしょう。
目立ちたい、愛されたいという心。なんだかちょっと淋しい心です。(彼らの行動自体は、危険な犯罪行為ですが。)
会場内の沖縄の成人式自体は、とてもスムーズに行われました。でも、その外側の大騒ぎ。ニュース映像を見ながら、私も最初はこの無法者達への怒りを感じましたが、だんだん悲しくなってきました。
ある中学の先生から聞いた話しです。その中学の体育館で教職員の歓送迎会のイベントが行われました。「不良少年」たちは、校則違反のかっこうでは中には入れないと言われていました。イベント当日。彼らはいつも以上のすごい格好でやってきました。
当然、会場へは入れません。だったら学校をサボって遊びに行ってもいいのですが、かれらはそうはしませんでした。体育館の周りをうろうろし、そして、体育館の壁をガンガンと蹴飛ばし始めたというのです。
素直に言うことなんか聞けない、でもイベントを無視することもできない。自分のイライラした感情を自分自身の心の中だけでは処理できない。そして乱暴に壁を蹴飛ばす不良少年達。沖縄の成人式騒動のニュースを見て、とても似ているなって思いました。
「大暴れ」される側の心理
・ニュースを面白おかしく感じる心。
いつもの日常とは違う風景は、面白いものです。ニュースバリューがあります。マスコミも、騒動を期待したわけではないでしょうが、騒動を予想して待っていたはずです。昨晩のニュースでも長時間にわたって報道していました。
面白おかしくという表現が不適切でも、多くの人が興味は持つでしょう。 それは当然のことです。でもこの私たちの心が、目立ちたいという彼らの行動を促してしまうのもまた事実でしょう。
・傷つく心
昨年の成人式では、あいさつをしている人たちが、怒って怒鳴りつけるシーンが何回も報道されていました。何であれ、何かを一生懸命しているときに、それを無視するようなことをされたら、誰でも傷つきます。
その傷ついた心が、人によっては「怒鳴り声」として表現されたり、「涙」として表現されたりします。社会的地位のある年配の人でも同じです。傷つくからこそ、腹が立ちます。
今回の沖縄での騒ぎにも、関係者のみなさんは傷つき、そして怒ったり、悲しんだりしていることでしょう。・冷静な心
騒動を面白く感じてしまう心、腹が立ったり、悲しくなる心。でも、それだけで終わりたくないと思います。そんなときも、冷静な心がもてるのが、成人です。大人です。騒ぎが起こる。感情的になる。それは誰でもそうだとして、だから、それならばどうしようかと考えられるのが、「大人」のはずです。
沖縄の成人式と報道
会場内の成人式は、様々な工夫をこらし、とても良い式になったようです。行政側も新成人の側も努力したと思います。ただ、残念ながら、その上手くいったほうの報道は少ししかありませんでした。人々の目は会場の外で多さわぎする人々へ向いてしまいました。
この数年、少年法の改正なども含めて、少年達、青年たちへの目が厳しくなっているように思います。たしかに、甘やかすのは良くないと思います。しかし、彼らの良い点にも目を向けましょうよ。彼らの多くは、善良で、やる気があり、能力もあります。21世紀の社会を作っていくのは彼らです。
乱暴者に負けないために
関係者が一生懸命がんばって良い式にしようとした。たしかな成果も見られた。しかし、ごく一部の乱暴者が混乱を招いた。マスコミは「混乱」に注目し、報道するす。番組のコメンテーターや、世間の人たちは、もう成人式なんか止めようと発言する。
これでは、乱暴者達の「勝ち」になってしまいませんか。
乱暴者に負けない、彼らに勝つとは、彼らを力でねじ伏せることだけを意味しません。成人式をしようとする人たち、新成人をお祝いしようとする私たちが、その目的を果たすことです。そのために努力した人々の努力が報われ、ただしく評価されることです。
不当に大騒ぎそして、その結果イベントは中止。大騒ぎした人たちは勝利の喜びや達成感を感じ、まじめに努力した人々が敗北感や無力感を味わう。こんなことになってはいけません。新成人としてのスタートにこんな思いを持たせてはいけません。
そんなことにならないように、私たち大人が彼ら新成人をサポートしましょう。
(できることなら、まじめに努力しようとしている新成人も、暴れてしまったような新成人も、どちらもサポートできればと思います。
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新成人のみなさん。大人の社会へようこそ。
おめでとう。歓迎します。
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○新成人大暴れ !? の 心理(2001年版)
○「心理学入門」の中の こころの発達2(青年期)アイデンティティやモラトリアムの解説をしています。
○「犯罪心理学:心の闇と光」 最新の事件をもとに、犯罪者の心理、被害者の心を考える。
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