心理学総合案内・こころの散歩道/犯罪心理学/少年犯罪/非行少年の心理
調査によると、非行少年たちは、劣等感を持ち、情緒が不安的で自己統制ができず、外向的で活動的な特性を持っている。さらに、彼らは、自己中心的で他罰的な傾向があり、協調性や客観性に乏しく、攻撃性や衝動性が高い。
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ただし、非行少年が全てこのような特徴を持っているわけではありません。これらの調査結果が非行少年への偏見と差別を高めるために使われてはなりません。ドラえもんに登場するジャイアンは、乱暴でわがままで、上に書いたパーソナリティに近いと思いますが、同時に彼は、結構いいやつですよね。物語のなかでは、ジャイアンは将来経営者として成功しています。
精神分析理論では、人の心は本能的欲望であるイド、エゴ(自我)、スーパーエゴ(超自我:欲望を抑えるもの)からできていると考えています。
非行少年は、道徳心が低く、良心とも言うべき「超自我」が弱いのでしょうか。しかし、多くの場合、道徳的説教をしても非行少年は改心しません。中には、肥大しすぎた超自我によって押しつぶされた非行少年もいます。
女の子と話もできなかった少年が突然性犯罪を犯すようなケースです。あるいは、ケンカもしない、悪口も言わないような人が、突然殺人を犯すようなケースです。本能的欲求を押さえすぎてしまって、爆発的に犯罪を犯してしまうわけです。
それでは、本能衝動(イドの力)が強すぎるのでしょうか。しかし、本能的欲望は人間活動のエネルギーであり、それ自体が悪ではありません。
非行少年は、「自我機能が未成熟」だと考えることができます。彼らは、自我による衝動のコントロールが困難なのでです。自分の感情や欲望を、社会に受け入れられるような形で表すことが大切です。
外見上は問題のない家庭でも、親の養育態度が厳しすぎると、子どもは自分の欲求や感情などの自分の思いを強く抑圧してしまいます。彼らは表面上は「良い子」ですが、心の中では強い葛藤や緊張を持っています。
そのために小さな非行を繰り返すこともあります。また非行歴のない少年が、突然重大事件を引き起こすこともあります。優等生の凶悪犯罪、優等生いきなり型犯罪として世間の注目を集めるタイプです。
問題の多い家庭の中で、親に拒否、放任、虐待されて育つと、欲求不満の高い子どもになります。彼らは、攻撃的で不信感が強く、温かな人間関係を持つことができません。さまざまな非行を繰り返す伝統的なツッパリ型の非行少年です。
また、不良グループの中では人間関係を作ることができる「社会化された非行型」もあります。彼らは集団で非行に走ります。
乳幼児期に母性的な世話(愛情)を受けることは非常に重要です。人は愛情や承認という土台がなければ、みずからの衝動をコントロールすることができません。
非行少年は、親からの愛を充分に受けなかったために、何才になっても、親の愛を求めてやまないのです。でも、表面的には求めていないふりをします。
非行少年は、猛烈に愛を求めていながら、どうしようもなく愛を求めるのが不器用な少年達です。
しかし、このような母親を単純に責めることははできません。母親自身に、乳幼児期の依存欲求が満たされていない(愛されていない)という葛藤があります。そのために、子供を愛することができず、また適切な制限を加えることができないのです。
溺愛され、がまんするという自己規制の訓練を受けずに成長した少年は、思春期になって悩み始めます。幼いときとは違って親も規制や処罰を加えようとすると、子どもは反発します。親はさらに圧力を強めます。こうして親子関係が悪くなり、非行化することもあります。
父性的しつけを受けないと、強い自我が育ちません。また本気で叱られないことに不満を感じる場合もあります。愛されていないと感じるのです。子どもは無意識に叱られることを求めて、非行に走ることもあります。
非行少年達は、衝動や心の葛藤を言葉で表現することが苦手で、行動で表してしまいます。これを行動化(アクティング・アウト)といいます。非行は、少年たちが心に抱えた問題を外に表現した「SOS信号」と見ることもできる。
もと家裁調査官の黒川昭登さんは、「非行は良いこと」とまで表現します。これは、犯罪を認めているわけではありませんが、非行は、心の葛藤や家庭内の問題から生じた症状だと考え、問題解決のために有益だとみることもできるのです。
非行は、SOSを訴える激しい心の叫びです。違法な行動に制裁を加えることは必要ですけれども、行動だけに目を奪われず、彼らの心の叫びに耳を傾けて欲しいのです。
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BOOKS 少年非行に関する本
『非行をどのように治すか』
『いいんだよ』水谷 修
『少年犯罪の深層―家裁調査官の視点から (ちくま新書)』当サイト内の関連ページ
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少年犯罪の心理