2011.7.20
☆日本女子サッカーW杯初優勝おめでとう☆
NHKテレビ「ことばおじさんの気になることば」(2011.7.20)によると、日本女子サッカー代表の愛称『なでしこジャパン』はアテネ五輪出場の際に一般公募の中から純粋さ、ひたむきさ、しんの強さをイメージさせるという理由で選ばれたそうです。
花ことばは、「純愛」「純粋な愛」「大胆」「勇敢」「思慕」「無邪気」。これも、なでしこジャパンにふさわしいですね。
純粋な気持ちとは、邪念や私欲のないことです。なでしこジャパンのメンバーは、他の男性プロスポーツ選手のように、何億もかせぐ人たちではありません。
日本を出発する時も、わずか10名のマスコミしか集まらず、サポーターは一人も来てくれなかったほどです。
一般の仕事をしながら、ずいぶん苦労してサッカーを続けている人もいます。
お金のためではなく、名誉のためでもなく、純粋にサッカーを愛している人々なのでしょう。このような気持ちを、やる気に関する心理学では内発的動機づけと呼んでいます。
帰国後にインタビューを受けた選手たちが答えていました。「ワールドカップは楽しかった」。この楽しさも、内発的動機づけの特徴です。
楽しいといっても、決して遊び半分という意味ではなく、まるで子どもが遊びに夢中になるように、純粋に取り組んだということです。
この純粋さが、私たちに感動を与えたのでしょう。
ひたむきとは、一つの物事だけに心を向けているさま。忍耐強く、いちずに打ち込むさまです(大字泉)。
なでしこジャパンの選手たちは、ひたむきにサッカーに打ち込んできました。
特に今回のワールドカップでMVPをとった澤 穂希(さわ ほまれ)選手(1978生まれ)は、15歳で日本代表入りを果たし、必ずしも人気スポーツではない日本女子サッカー界の中で、現在までひたむきに忍耐強くプレーしてきた選手の一人でしょう。
ひたむきに努力している選手を見るとき、私たちは感動します。
今回のなでしこジャパンは、FIFAワールドカップという国際的大舞台での優勝という誇らしさを私たちに感じさせてくれた(栄光浴)のと同時に、まるで高校生たちのような純粋さ、ひたむきさを感じたからこそ、これほど全国民的な感動が広がったのでしょう。
人は、多数派に流されます(心理学でいう同調行動)。でも、少数派の人々が、それでもひたむきに、純粋に、行動し発言し続けるとき、ついに少数派が多数派をつごかす時が来るのです(革新行動)。
サッカーは、スポーツの中でもわかりやすいスポーツです。野球と比べれば、ルールはずっと簡単です。だから、だれでもすぐに理解してファンになれます。普段サッカーを全く見ない人でも、周りの関心の高まりとともに、すぐににわかファンになれるわけです。
また、サッカーは観客にとって、全体が見渡しやすいスポーツです。少しサッカーを理解するようになれば、上から見て、誰にパスを渡すべきか、どこが空いているかが、すぐわかります。だから、サッカーの観衆は興奮するのでしょう。
女性たちの中には、有能さを示すことを恐れる人たちがいます。心理学では「成功不安」と呼んでいます。
スポーツでも、勉強でも、有能さを示しすぎると、かわいいと思われないのではないか、女性として愛されないのではないかと不安を感じ、有能さを隠してしまう女性たちがいます。
ほんの何十年か前の日本では、それが普通だったかもしれません。
でも、いまやすっかり変りました。東大に通う女性たちもおしゃれですし、アイドルのような女性スポーツ選手もいます。
有能さと女性の魅力が両立できる社会に、日本もなりつつあると言えるでしょう。
(PKの最後に勝負を決めた熊谷紗希選手。シュート直前の汗とほこりにまみれた勝負師の顔は、でも同時に、とてもりりしく、美しく感じました。)
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それでも、有能な女性を避ける男性がいますが、大丈夫です。有能な男性は有能な女性を選びますから。
(ここで言う有能とは、もちろん有名大学とか収入とか、そういったものだけではなく、人としての素晴らしさのことです。)
それに対して、男たちは迷っています。昔ながらの男らしさはあまり好まれず、だからといって、エステに行ったり化粧したりすると公言する男はやはり敬遠されるでしょう。強さと優しさを兼ね備えた現代的魅力あふれる男性になるのは、なかなか難しそうです。
どの国でも、女性よりも男性の方が、自殺しています。男性よりも女性の方が長生きです。
どうも、男性は強そうに見えて、ぽっきり折れてしまうところがあるようです。また、男性の方が、伝統とかこれまでのやり方にこだわる人も多いように感じます。
それに比べて、女性はしなやかです。しなやかで、だからこそ実はしんが強いのが、日本の女性たちでしょうか。
なでしこジャパンの勝利も、しなやかさとしんの強さの勝利かもしれません。
PK戦:アメリカと日本の違い
ほとんどの人が予想しなかった日本チーム、なでしこジャパンの決勝進出。王者アメリカと堂々と戦い、リードされては追い付くなでしこジャパン。延長でも勝負は決まらず、とうとうPK戦へ。
さあ、このときの日米の心理の違いです。アメリカは、当初から優勝を期待されていました。日本なんかに負けられません。
一方、日本のなでしこジャパンは、もしもPKで負けて銀メダルをもって帰国していたらどうだったでしょうか。これほどの盛り上がりはなかったかもしれませんが、銀メダルを持ちかえったなでしこジャパンを責める人はいなかったでしょう。
さて、すでに高度な技術を持った人が、大舞台で必要なことは、邪念を捨て、プレーに集中することです。
ところが、人は大舞台になるほど邪念が湧いてきます。その一つは、失敗への恐れです。それも、ゴールをはずすというスポーツ事態の失敗ではなく、その結果どれほどみんなに責められるかという社会的な失敗、自尊心が傷つくことを恐れます。→あなたは何を恐れているの?、失敗と人からの評価
そんな余計なことを考えてしまえば、パフォーマンスは下がります。受験で緊張してしまうのも同じです。→受験心理学:緊張と不安に負けない方法
悲壮感漂うアメリカに対し、PK戦の前、円陣を組んだなでしこジャパンのメンバー達には、笑顔がありました。
産経新聞の取材に答え、2011.7.20に紙面とネットに掲載されました。
「碓井真史・新潟青陵大大学院教授(社会心理学)は近年の女性の活躍を「女性は成功により『女らしさ』を失うと恐れ、能力をセーブする傾向にあったが、最近は活躍することでこそ、りりしく、美しくなれるという考えから力を発揮しているのでは」と分析。」
「なでしこは重圧のかかる決勝のPK戦で笑顔をみせた。碓井教授は「歯を食いしばるのではなく、しなやかに逆境を乗り切った。“究極の女子力”といえ、(東日本大震災の)被災地に単純な『頑張れ』のエールではなく、『なんとか切り抜けていけば明るい道がある』という希望を与えた」と話した。」
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