心理学総合案内・こころの散歩道/犯罪心理学/神戸小学生殺害事件/「神戸小学生殺害事件:事件の背景とこれからの教育を考える」月刊「児童心理」(金子書房)1997年11月号別冊
要約
・統計的に見て、日本の若者の凶悪犯罪は減少している。30年前と比較し、20歳代の殺人者率は7分の1、10歳代では6分の1になっている。暴行、傷害、強姦なども同様に減少している。
・攻撃性が弱者に向かっている。攻撃の対象が、親や教師などから、弱い同級生など、弱者へと変化している。
・少年の病的サディズムや動物虐待には、注目すべき。(ただし、動物虐待自体は、幼少期には良くあること)
・少年は、「透明な存在」と表現したが、現代の若者犯罪の特徴は、物欲からの犯罪ではなく、「空虚な自己」を満たすことが動機になっている点である。
コメント
少年の凶悪犯罪の減少は、犯罪白書にも表れていますし、多くの研究者が指摘しているところです。ところが、減少したとはいえ、その攻撃性が弱者に向かっている点は、不気味な点です。
かつて、若者たちが、学校に反発し、国家に反発したのは、過激なところはありましたけれども、今から思えば心理的には健康だったかもしれません。
人間、特に若者の攻撃性自体は、悪いことではないと思います。それが、どう表現され、どこに向かうのかが問題なのだと思います。筆者も、「青少年の攻撃性の昇華の方法が緊急の課題となっている」と述べています。
昇華とは、心の思いを、社会で認められる価値の高いものへと向けることです。たとえば、ケンカ好きの子が立派なボクサーになったり、怒りを社会の諸問題へ向けて、立派な市民運動家や政治家になるようなものです。
筆者は、今回の事件以前から、若者を理解するキーワードとして「空虚な自己」という用語を使用してきたそうです。「透明な存在」の説明として、大変わかりやすく、説得力のあるものだと思いました。「空虚な自己」の時代 (NHKブックス)
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