「心理学総合案内こころの散歩道」/心のニュースセンター/自殺の心理/2

　この人たちの共通点は、カッコイイことです。新井将敬さんは、マスコミにも度々登場し、世の中の不正を激しく正す発言をしていました。芸能人のみなさんがカッコイイのは言うまでもありません。

　監督の伊丹十三さんは、以前ヤクザに襲われたときがあります。その時も、とても落ち着いてしっかりとした態度をみせていました。後に聞いた話では、すぐに救急車を呼ぼうとしていた家人を止めて、鏡の前で自分の姿を映し、狼狽していないかどうか、確認していたそうです。

　強く、カッコイイことは、普段であればとても良いことです。けれども、時には、そのカッコイイことや強いことが裏目に出ることがあります。
（hideさんの場合は、心理的な問題のほかに、泥酔状態だったことが自殺のきっかけだったようです。）

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カッコ悪くなること、弱い自分をみせることに耐えられなくなることです。

特に日本の文化では、潔い死が美徳に考えられることもあります。

西洋キリスト教社会では、自殺は罪です。

人間という生物として、死を迎えるその時まで、生きる意欲を持ち続けたいと思います。

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　沖田浩之さん（36歳）の自殺の動機としては、借金苦があげられていますが、そのようなカッコ悪いことに耐えられなかったのかもしれません。

　精神科医の町澤静夫（夕刊フジ99年3.29)は、「中年クライシス」という言葉を使って説明しています。自由な青年から中年の大人になろうとしている時期に、どのような大人（中年）になったらよいかに迷い、精神的に不安定になっていたのではないかということです。

　尾崎豊さんも、若いときに、一般社会の偽善性を批判しながら、自分自身が妻子を持ち、その一般社会に入っていったとき、迷いが生まれたのではないかと述べています。

　色々な意味で生き方や生活が変わるときには、迷いが生じます。カッコ悪いと感じたり、ミジメに感じることもあるかもしれません。けれども、人は変わるものです。その変化を自然に受け入れていくことができれば良いのですが。

　以前の価値観からすればカッコ悪い、みじめだと感じるような変化でも、本当はそうではないこともあります。

その新しい生活は、前とは違うけれど、やっぱり輝いていることはできると思うのです。

　お金がなくなることも、仕事がなくなることも、有名でなくなることも、美しくなくなることも。

　でも、そのかわりに何かもっと素晴らしいものを手に入れる可能性があるのではないでしょうか。

私たちはみんな、
その人なりの素晴らしい人生を歩むことができるのですから。

ＢＯＯＫＳ

ウェブマスターによる新刊（2010年5月27日発行）
『あなたが死んだら私は悲しい：心理学者からのいのちのメッセージ』
自殺といのちについて考える全てのひとのために

○伊丹十三さんの本
○伊丹十三監督の映画（DVD)
『中年クライシス (朝日文芸文庫)河合 隼雄』
『中高年自殺―その実態と予防のために (ちくま新書)』
『代議士の自決―新井将敬の真実』
『最後の恋文 天国のあなたへ』新井 真理子　著
『誰が新井将敬を殺したか』

補足江藤淳さん自殺：形骸を断ずるより

＊　映画監督の伊丹十三さんが自殺したとき、伊丹映画に出演していた俳優のキンゾーさんが、インタビューに答えて、泣きながら次のように言っていました。

「監督には、本当にお世話になった。素晴らしい人だった。けれども、自殺という死に方は、カッコ悪いですよ。」

とても見識のある言葉だと私は思います。

　伊丹十三さんは、映画監督としてすばらしい人です。人間的にも尊敬できる人です。キンゾーさんは、そのことをとてもよくわかっています。彼は、監督に深い恩義を感じ、また監督の死を心から悲しみ、泣きながら答えているのです。

そのキンゾーさんが言う「カッコ悪い」という言葉は、決して監督を侮辱する言葉などではありません。死んでほしくなかった､残念でならないと言う心の叫びでしょう。

　監督のことが大好きで、尊敬をしていた彼は、監督にもっと生きていて欲しかったことでしょう。（そして、たとえ善意であっても、自殺を美化しかねない不用意な言葉をテレビカメラの前で言ってしまうことの危険性を、もしかしたら感じていたのかもしれません。）

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