新潟青陵大学大学院(碓井真史) /心理学 総合案内 こころの散歩道 (心理学講座) /犯罪心理学/元厚生次官宅連続襲撃事件の犯罪心理学2:地裁死刑判決: 妄想性障害
妄想性障害(パラノイア)とは、妄想性人格障害の妄想よりは重いが妄想性精神病の妄想よりは軽い妄想をもつ障害で、精神病性障害の一つです。
妄想とは、まったく現実的でない信念のことです。変わった考えを持つ人はたくさんいますが、普通は自分の考えは少数派の考えだと自覚しています。一般的にはそう考えないのだとわかっています。いろいろ話せば、自分の考えは違うのかなと感じることもあるでしょう。
しかし、「妄想」は、もっと頑固です。たとえば、精神病である統合失調症における妄想で、自分の天皇の子どもだと思い込んでいる人は、他の人にどんなに違うと説明されても納得しません。自分は天皇の子どもだと信じて疑わないわけです。これが、妄想です。
妄想には、次のような種類があります。
自分は狙われているという妄想。
関係のない偶然の出来事を、自分と関係のあること、自分に向けたことだと思い込む妄想。
自分が高貴な人間だとか、大金持ち、特別な才能を持っている人だなどと思い込む妄想。
自分に何かがとりつき、操られているという妄想。
同じ「妄想」でも、統合失調症の妄想は、普通の人の常識を超えています。たとえば、普通の人は、自分が天皇の子どもの様な気がすることはないでしょう。
自分が電波に操られているとか、宇宙人に操られていると感じることもないでしょう。
一方、妄想性障害の妄想は、比較的現実的です。妄想性障害者は、何の根拠もないのですが、妻や恋人が浮気をしているのではないという思いこんだり、職場で自分だけのけものにされているのではないかと思いこんだりします。
下関駅通り魔事件の裁判長は、被告を「妄想性障害で、犯行当時、心神耗弱の状態だった」とする福島章上智大教授の精神鑑定書を証拠として採用しました。つまり、責任能力はある(罰することはできる)が、責任能力が弱っていた(責任能力が完全にあるときと比べて減刑する)と判断しています。
大阪児童殺傷事件の犯人は、「妄想性人格障害」とされましたが、心身喪失、心神耗弱状態にはなかったと結論づけられています。
元厚生次官宅連続襲撃事件では、弁護側は妄想性障害だと主張していますが、一審では認められませんでした(20103.30)。
妄想性障害は、精神病性障害の一つ。妄想性人格障害は、人格障害の一つです。
妄想性障害は、脳内の神経伝達物資の異状による脳の病気、妄想性人格障害は、個性の限度を超えたパーソナリティの大きなゆがみと言えるでしょう。
妄想性人格障害の妄想よりも、妄想性障害の妄想のほうが、重く長く続きます。精神鑑定で人格障害(パーソナリティ障害)とされても、一般的には完全な責任能力があったとされます。
妄想性障害の人々や、妄想性人格障害の人々は、一般に人の好意を信じることができません。疑い深い人たちです。彼らは警戒心が強く、攻撃されたり、侮辱されたりすることに敏感です。そのため、周囲の人々への敵意を持ちやすい人々と言えるでしょう。
妄想性人格障害の親の中には、冷たい親も多いようです。親にさえ愛されなかった自分を愛し親切にしてくれる人などいないと、彼らは思い込むようです。
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