こころの散歩道(心理学総合案内)/犯罪/青酸カレー事件/フライデー
8.28に発売された写真週刊誌「フライデー」(9月11日号)が、疑惑の二人として注目されている夫婦の写真を掲載しようし、誤って別人の写真を掲載してしまいました。同誌は、「関係の皆様におわびするとともに、訂正する」として同号の回収を行うことにしました。
問題の8.28発売フライデー9月11日号
雑誌の一番最初のページから3ページにわたってこの記事が掲載されています。「冷血!和歌山毒カレー殺人犯と保険金殺傷疑惑」と、大きな見出しが踊っています。
記事の内容は、疑惑の概要、二人のかつての職業、現在の簡単な様子、二人の弁明(関西弁で表記)、複数の「近所の住人」と「知人」の話、そして「捜査関係者」の話として、「犯人は、〜などで自治会を恨み、ヒ素で騒動を起こしたのではないか〜」というコメントなどです。いずれも、この二人への疑いを濃くするような内容です。記事の最後は、「夏祭りを地獄に変えた4人の尊い命を奪った凶行は絶対に許せない」と結んでいます。
掲載された写真は、1ページ目に、この夫婦の自宅と、自宅前に集まった数十人の報道陣。そして、2ページにわたって問題の写真が掲載されています。自宅の窓から外を見ながら元気そうに電話をするネクタイ姿の中年男性。同じく、自宅の窓から、ちょっと不安げな様子で外を見る女性。どちらも鮮明な写真です。ただし、写真には、目隠しがされています。
フライデーの関係者は、「思い込みがあった」と記者会見で話していました。写真の二人は、全くの別人だったわけですが、記事を読み、写真を見ると、たしかに、いかにもその二人らしい感じがしてしまう写真です。
感想
今回のことは、「フライデー」の完全なミスですから、会見でも低姿勢で誤っていましたね。この写真が当人の問であっても、当然、問題になっていたでしょう。それに加えて、「思い込み」と、おそらく焦りや、いくつかの小さなミスが重なった結果だと思います。
下に示してあるように、この号の表紙には、この記事の内容が出ていません。一般的に、雑誌の表紙の締め切りは、中のページの締め切りよりも早いそうなので、表紙の締め切りの後、中のページの締め切り直前、発売直前になって入ってきた写真だったのでしょうか。そして大きく話題になる写真ですから、先頭のページに持ってきたのでしょうか。
言うまでもなく、今回の件は、ミスを犯したフライデーが非難されるべきことです。ただ、私としては、「プロもこんなミスを犯すことがあるんだな」と感じました。
先日、この二人の実名をテレビで流してしまった番組もそうです。テレビは、いったん放送してしまえば、回収するわけにはいきませんから、なお厄介です。ライブ(生放送)ではなくて、録画の部分なのに、どうしてこんな単純なミスをしてしまったのか、素人の私にはよく分りません。ただ、テレビのスタッフも大変多忙で、録画番組を放送するときも、その全てを番組責任者が見る時間などはとてもないという話を読んだことがあります。
雑誌も、テレビも、とても多忙な中、時間に追われながら、膨大な情報を処理しなくてはなりません。そして、私たち庶民が、もっと新しい情報、もっと刺激的な情報と、貪欲な好奇心(やじ馬根性?)で、迫ります。
「4人の尊い命を奪った凶行は絶対に許せない」というのは、その通りです(犯人を絶対に死刑にしろなどという意味ではありませんが)。しかし、殺人事件が起きてしまった以上、後は、一日の早い犯人逮捕と、そして被害者の死を無駄にしないためにも、私たちがそこから何かを学びとっていくことが大切ではないでしょうか。
事件自体の悲惨さに加え、私たちの中の、心無い人々の言動や、思い込みや急ぎ過ぎのためのミスによって、さらに不幸な人々を生んでしまうことは、何としても避けなければなりません。
時には、ある出来事それ自体よりも、その後の心の動揺が、私たちを不幸にすることも、よくあることなのですから。
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