愛の心理学
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愛すること、愛されることの

心理学とキリスト教

12.26 後半部を加筆

子供と愛情

 以前、アメリカの福祉施設で、乳幼児の発達が遅れ、病気がちであることが問題になりました。そこで、栄養面、衛生面など、あらゆる面からの調査が行われました。その結果、そのような点に関しては、何の問題もないことがわかりました。ただ、足りなかったのは、赤ちゃんへの愛情だったのです。

 心理学的に言えば、抱きしめたり、微笑みかけたり、話しかけたりするような適切な「刺激」が足りなかったのです。それは、普通のことばで言えば、愛情です。

 人間はパンだけでは生きられないというのは、思想の問題だけではなく、心理学的な事実なのです。

(9.21のテレビ「知ってるつもり:マザーテレサ」で、ミルクを受け付けない赤ちゃんを、マザーの指示で一人のシスターが何日も抱きしめ続け、その結果、ミルクを飲むようになった話を紹介していました。)

 愛情の足りない施設などでおこる発達の遅れを「ホスピタリズム」と呼んでいます。ただし、現在の福祉施設では、きちんと配慮されているので、そのようなことは起こりません。

 むしろ、一般の中流家庭で、愛情不足のために子供に問題が生じる場合があり、これを「ネオ・ホスピタリズム」と呼んでいます。また、虐待を受けた子供が、その体の傷だけではなく、精神的な原因で、発達の遅れる「被虐退児症候群」も報告されています。


愛を受けて、そして自分を愛する

 私たちが健康に生きていくためには、自分を大切に思い、自分を愛することが必要です。自分を愛するためには、自分にとって大切な人から愛されているという実感が必要です。普通は、親がその役を果たします。(キリスト教的には、「神」です。)

 人は親から愛され、大切にされることを通して、自分自身が愛すべき価値ある人間だと思えるようになれます。自分で自分のことが好きになり、自分の人生を大切にすることができます。


自分を愛し、そして人を愛する

 赤ちゃんは、言葉が話せないので、大きな声で泣いて親を呼びます。すると、親がすぐに飛んできて、ミルクをくれたり、オムツを替えたりしてくれます。

 このような体験を通して、人は「基本的信頼感」を身につけます。自分は愛され、守られている。人を信頼してもよい。人生はまんざら捨てたものじゃない。こんなふうに思えるようになるのです。この基本的信頼感がないと、人を信頼して、愛することが難しくなります。

(基本的信頼感については、このホームページ「こころの散歩道」 の 「心理学入門:子ネコの道」 の 「こころの発達1」もご参照下さい。)

 人は自分が愛されて初めて、他者を愛することができるのです。人に冷たくする人々を責める前に、その人自身が愛を受けてきたかどうかを考えることができれば、どんなに良いかと思います。


人に愛され、自分を愛し、人を愛ることによる幸福

 愛されている実感を持っている人は、こころの安定、安心感を持つことができます。そして、だからこそ、人生にチャレンジすることもできます。

 私が、仮に落第しても、破産しても、それでも私は愛され続けるだろうと確信できれば、楽しく勉強や仕事ができますし、思い切った勉強や仕事もできるのです。このような気持ちで高い目標を目指すことは、もちろん意義があり、充実感を得ることができます。

 しかし、勉強しつづけ、仕事をし続け、「良い子」を演じ続けなければ愛されないと感じているとしたら、何をしても本当の満足感は得られません。

 愛されていないと感じる人は、愛へのゆがんだ欲望を持ちます。人から愛されるために、身体を提供する女性もいます。死ぬまで働き続ける人もいます。命を懸けた暴走運転をこともあります。自分の全てを犠牲にして、人気取りに夢中になる人もいます。名誉やお金のために必死になる人々がいます。

 愛されていない不安を打ち消すために、着飾り、虚勢を張り、人を攻撃する人もいます。

 自分を愛せず、自己卑下する人は、自分と一緒に、周囲の人も落ち込ませます。自分は美人じゃないからダメだ。学歴がないからダメだ。金持ちじゃないからダメだ。そんなふうに考えることは、世の中のそういう人々をみんなダメ人間だと決めつけることになります。

 自分を愛せず、自己破壊的な行動をとり、犯罪を犯す人々もいます。愛されていると感じている人は、自分を愛することができ、多少ぐれたとしても、最期の一線で踏みとどまることができます。(このホームページの中の「非行少年の心理」も参照して下さい。)

 自分を愛せる人は、人を愛せます。自分を肯定的に受け入れられる人は、他者も肯定的に受け入れることができます。

 自分を愛し、人を愛することは、人間関係を良くする一番の基本です。あなたに親切にしてくれる人を愛すれば、ますます人間関係が良くなるのは当然です。

 さらに、あなたを攻撃したり、困らせたりする人々とうまくやっていくための心理学的なコツも、じつは、その人を理解し、愛することなのです。

・次の本が参考になります。

神経症者とつきあうには―家庭・学校・職場における論理療法』川島書店

「困った人たち」とのつきあい方 』河出書房新社 

2冊の本の主張を一言で言うと、「愛しなさい。しかしカモになるな。」(相手の思うままになっては行けない。しかし、相手を憎み、攻撃しても、問題は改善されない。)

この本の紹介もいずれページ上のどこかのコーナーで行いたいと思っています。

*愛されているという土台にたって、自分を愛し、人を愛するこことが、こころの健康と、幸福の基本です。


聖書とマザーテレサからのメッセージ

「西欧で、今日最も重い病気は、人々が互いに求めあわず、愛しあわず、互いに心配しないという病です。この病を治すことができるのは、ただ一つ、愛だけです。」

「神がいかにあなたを愛しているかを知ったとき、あなたははじめて、愛を周りに放つことがことができます。」

「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ.」マタイ22-39

「神は愛である」第一ヨハネ4-8

「わたし(神)の目には,あなたは高価で尊い.わたしはあなたを愛している.」イザヤ43-4


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(私の子どもが大好きだった楽しい本です。愛とユーモアを感じて、大人も楽しめます。)

     


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